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「あれ」


 気づけば僕は駅のホームにいた


 いつもの悪夢のあのホーム

 ただいつもと違うのは、あのでかい影も呻き声も聞こえず、最初から自由に体が動かせること


「なんで...」


 暫く歩く


 自動改札を飛び越えて

 駅の中に入った


「結構広いな...」


 今まであのホームしか見たことがなかったから新鮮だな


 色々な店っぽいものもたくさん入っている

 もちろん人気などない


「それにしても暗いな...」


 少し気になって近くの大型家電売り場に行く

 そこで懐中電灯を見つけて持っていく


 万引きなんじゃないかとも考えたが、この世界は明らかにおかしい

 とゆうより僕の夢の中なので多分大丈夫だと思う


「お、ちゃんと光るんだ」


 最初はハリボテの様なものかと思っていたが、ここにあるものは全部本物らしい


 いや、本物ではないか


 懐中電灯の光を頼りにして薄暗いホームを進む

 時折、よく街中で見かけるファストフード店があったり、映画のポスターが貼ってあったり

 まるでどこかの駅をそのまま持ってきた様な光景だった


「どこかにこの駅があるのかな...」


 そうだ、ここが駅なら標識とかがあるんじゃないか


 一度ホームの方まで戻る

 今までは目線くらいしか動かせなかったから分からなかったけど

 駅名くらいはどこかに書いてあるはず


 探しているとLEDライトで少し光っている看板を見つけた


「多分これか、えーっと...『如月駅』?」


 おかしいな

 確かに僕が住んでいるところは如月市だ

 けれど如月駅は何故か存在しない


 理由は僕には分からないが...一体なんでここが如月駅なんだ?


 暫く駅の探索を続ける

 だが


「ヴ ヴ ヴ あ゛」


 突然駅の中に響いた呻き声で探索は終わりを迎えた


「まさか...」


 視線を向ける

 そこには


 薄暗い駅の中、真っ赤に光る双眼があった


「ア゛ア゛ア゛ア゛ァァッ‼︎」


 まるで猿の様な巨体がこちらに向かって迫ってくる


「うぁぁぁぁぁ⁉︎」


 逃げる暇も避ける暇も無く


 目の前の巨体は僕に飛び掛かって来た







「.........ん...!」


 僕の眼前に真っ白な壁が写る


「ちょっと...待って......」


 自分に言い聞かせる様に呟く


 一番新しい記憶は、あのメリーと名乗る関節人形に茅音ちゃんともう関わらない様に脅された

 その後...僕は...


「記憶ないな...」


 さっぱり覚えてない


 一度辺りを見回す


 右側に窓と点滴、左側はカーテンで仕切られている

 僕はといえば恐らく患者着であろうものを着て問題の右腕は...包帯でぐるぐる巻きだ


 十中八九、病院だろうな


 少し感覚が麻痺しているとはいえ身体が正常に動くことを確認して

 ベッドから腰を下ろす


「あ、やばい。照美と雫になんて言われるだろうな...」


 ここに運ばれてるってことは多分誰かが僕を発見してくれたんだろう

 そうすると多分僕が愚羅に襲われたってのも唯一の肉親である雫には筒抜けだろう

 そして、雫にバレたってことは照美にも情報がいく


「なるべく怒んないでくれたら嬉しいけど...」


 とりあえず看護師さんでも見つけて今の状態とかのことを聞かないとな


 そうして僕が歩き出し、扉を開けようと手を前に出すと


 グラっ


 あれ


 ああ、急に動いたからバランスがおかしくなってるのか

 そのまま倒れそうになっていた所を


「おっと、大丈夫かい少年」


 誰かが受け止めた


「あ、はい、すみません」


 顔を上げるとそこにはモデル体系のイケメンがいた


(あ、住む世界が違う人だ)


 僕の知り合いにこんな人はいないし、だとしたら隣の部屋と間違えたのかな?


「ありがとうございます。それじゃあ僕はこれで」


「あぁ、待ちたまえ少年」


 イケメンに止められる

 あれ、なにこれどんな状況


「用があるのは君だ」








 一度ベッドまで戻されて、さっきのイケメンは来客用の椅子に腰掛け対面に座っている


「それで、用ってなんですか」


「用っていうのは大したことじゃないんだ。君のその右腕、確か【愚羅】にやられたんだってね」


「あ、はい。そうですが」


 そりゃあ本来腕が綺麗に切断されることなんてないから一目で愚羅の仕業だとは分かる

 だけどこの人はなんでピンポイントで僕のところに来たんだ?


「それでね、僕らは条件付きで君のその右腕を復元したいと思っている」


「‼︎ そんなこと出来るんですか⁉︎」


 この右腕を復元...

 右手が使えないだけで今まで出来ていたことのほとんどが出来なくなるだろうからそれは凄くありがたい


「それで、その条件というのは」


 変な条件じゃなければいいんだけれど...


「条件は簡単、私たちの協力者になって欲しいんだ」


「協力者?」


「そう、協力者。私たち、対怪異専門組織『ミューテライン』のね」


 ミューテライン?

 なんだその胡散臭い組織......


「協力者とは言いつつ、普通に入ってもらうんだけどね。近頃じゃ葬儀屋とか言われてるんだ」


「葬儀屋?」


「そう、私たちの組織のことを指す隠語だ。別に私たちが言ったわけじゃないんだけどね」


「はぁ...」


「それで、どうする? 組織に入ったなら愚羅との戦いは避けられない。だけど安心してくれ、君なら愚羅と戦える『力』がある」


「...僕にそんな力があるとは思えないんですが......」


 現実味が無いな...

 正直右手は治して欲しい

 けどこの人の言葉通り、本当に愚羅と戦うならこれ以上の欠損や命を落とすことだって普通にあり得る

 正直僕はあんまり関わりたく無いかな...


「いや? そんなことは無いさ、君、身の回りで恐ろしい体験をしたことは無いかい?」


「恐ろしいことって...」


「例えば...うーん、口が裂けている女に会ったとか、人形に電話をかけられたとか、別に恐ろしいことじゃなくてもいい、そうだな...予知夢とか」


「......」


「お、何か心当たりがあるらしいね」


 心当たりがあるどころではない


 僕が夢に見る人たちは、必ず世界のどこかに存在していて

 夢を見た次の日は必ず、ほとんど同じ状態になって死ぬ


 それに気付いたのは確か、ものすごく無残な状態になった人が次の日のニュースに怪死体として取り上げられていた時だった

 それに、昨日のあの女性も最後は僕の夢と同じ様に肉塊になった

 夢と現実ではまるで感触が違う

 もう慣れたつもりだったけど...いや、あそこでショックは受けても気分が悪くなることはなかったから、実際慣れてきているのか


「それはね、君が受けている呪い、怪異に目染められた証だ。その怪異を味方に出来れば、愚羅をも凌ぐ強大な力となる」


 あの悪夢が...呪いで、強大な力


「やっぱり現実味が無いですよ。もしそれが本当だとしても、もう少し考えさせてください」


「そうか、時間はたっぷりある。よく悩み、選んで行動するがいいさ...」


 その後暫くの沈黙


「そろそろ僕は行くよ、まだまだ治りかけなんだから、安静にね」


「分かってますよ、別にあなたに言われることでも無いと思いますが」


「いやいや、大事な構成員候補なんだ。ちゃんと回復してもらわないと」


「はぁ...」


 そのままイケメンは病室を出て行った


 なんか...すごい人だったな...


 あ、名前聞いてなかった









「そんで? 彼、どうだったんすか」


 病院の廊下


 零次の病室から出てきた男は、暫く歩くと壁に寄り掛かっていた少し若い男と合流した


「あぁ、相当な呪いだったよ。私でも鳥肌が立つほどね」


「へぇ、アンタもビビることがあるんっすねぇ」


「私だって人間さ、例えどんなことでも知ってるとしても、恐怖や喜びの感情くらい残っているよ」


 病院を出る

 とある路地裏を通り、薄暗い抜け道を抜けた


 その先にあったのは一軒の小さな建物だった


「多分、彼についている怪異は......」


 建物に入った男は並べられているファイルの中から一冊を取り出し、パラパラとページをめくった


「これだね」


 やがて一枚の資料をファイルから取り出し、隣の男に見せた


「...『猿夢』...ですか」


「あぁ、始まりはネット掲示板の投稿から、恐ろしい夢を見たってゆう話だね、最初はただの悪夢かとも考えたけどその夢を次の日も見たというのだから、これはおかしいと私たちがコンタクトを測った件だ」


「その後、アンタが解決策を提案、結局その日は生き残れたって話だな」


「あぁ、だけれどその後何年か後に再発したと聞いている」


「結局、その人はどうなったんすか」


「二回目も回避した。それからは特に目立った怪異との遭遇も無く、平穏に暮らしている」


「それが今回、彼に移ったと考えるべきっすか......」


「その通り」


 だが、と男は続ける


「猿夢とは、所謂単一の呪いだ。その力は害にはなっても力にはなり得ない」


「力にはならないって、でも確かに彼には力があるんっすよね」


「...そこが問題でね」


 男はまた別のファイルを取り出し、資料を抜き取った


「この事例を見てくれ」


「ん? これは......同じ人に複数の怪異が関わったって件ですね。......まさか」


「あぁ、彼は恐らく複数の呪いと怪異を身に宿している」


 男は更に資料を取り出す


「私が見たところ、彼に宿っている怪異は」


 先ほどの猿夢の資料と他一枚の資料、そして一番奥に並べてあったファイルから一枚の資料を取り出した




「『猿夢』、『如月駅』そして...『正体不明』だ」




少しでも「面白い」「続きが見たい」と思ってくれたら広告下の評価ボタンを押してくれるとありがたいです

感想なども気軽にどうぞ


どうか、モチベーションupの為にどうか...!


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