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4 遭遇

「わっ⁉︎」


 愚羅が攻撃してくるタイミングをほとんど感で避ける


 今も左に飛びださなかったら心臓を抉り出されていた所だ


「まだっ!」


 すぐに立ち上がって走り出す

 後ろで木に思いっきり何かがぶつかる様な音がしたが、気にせずに走る

 なるべく茅音ちゃんが走った方向とは別方向に


「れdIこvあぉでゔぉjw」


 よく分からない言葉を口走る? 愚羅

 本当にあの音はどこから出ているんだ


「おっと⁉︎」


 危ない、また木の根っこに引っかかる所だった

 集中が途切れてきてる...でも、なんとかして生き残らないと...

 茅音ちゃんと約束もしたし...!


「あ゛あ゛っ」


 自分でもどこから出てるのか分からない声を出して気合を入れ直し、愚羅に向き合う


「来いっ!」


 愚羅も、非力な僕が愚かにも自分に向き合っていることを感じたのか、嘲笑うかの様に叫び、こちらに向かってくる


「vvvgrrrrrgggv」


 考える暇もなく左に飛ぶ


「vゔぁxあ」


 愚羅が、笑った様な気がした


 何が起こったか分からないうちに


 右腕に激痛が走る


「ッッッ...⁉︎」


 余りの痛さに右手を見ると


 肘から先が

 無くなっていた


「ウっ うワァァァァッ⁉︎」


 ニタァと愚羅が黒い顔に更に黒い三日月を作る


「なんだ...口、あるじゃないか...」


 少し現実逃避っぽい反応が出た


「クソっ...アイツ、僕が左に避けた時に右手を伸ばしてたな...そんなこともできるのか...ッ!?」


 右手が激しく痛み、一瞬意識が遠のく


 愚羅にはそれで十分だったのだろう

 絶叫しながら、物凄いスピードで飛んでくる




 ......ああ、茅音ちゃんと約束したのにな...




「間に合った」




 死を待つだけだった僕だったが


 どれだけ待とうが愚羅の凶刃は僕の身体を抉らない



 女の子の声が聞こえたけど...


 幻聴でも聞いたのかな




「ほら、起きなさい」


 ビリッ


(いっった)⁉︎」


 右腕に走った激痛に目を覚ます


 ...あれ、死んでない


「せっかく助けてあげたんだから、茅音に感謝しなさいな」


「え...茅音ちゃん...⁉︎」


 顔を上げるとありえない光景が目に入った


 まず一つ目、目の前で踏ん反り返っている女の子

 その子は関節が球体になっており、近くでよく見ないと分からないけど、服から見える肌は恐らく人工的な素材。その子は茅音ちゃんと同じフリルがついたドレスと、綺麗な金髪、幼さを残した可愛らしい顔を持っている

 遠目から見たら恐らく人間だと思うだろう、だが近くでじっくり見ると分かる

 この子は、人間に限りなく近い見た目の、球体関節人形だ


 そして二つ目、その子が座っている黒いもの


 それは


 さっきまで僕に牙を剥いて襲いかかってきていた【愚羅】の残骸だった


「はぁ、はぁ、お兄ちゃん!」


「...! 茅音ちゃん!」


 少し息を切らせた様子の茅音ちゃんがこちらにかけて来た


「お兄ちゃん、その右手...」


「あ、あぁ、ちょっとやられちゃってね。茅音ちゃんは大丈夫だった?」


「私のことはいい! 早くその右手を治さないと...! そうだ、メリー!」


「ダメよ、茅音」


「なんで⁉︎」


「さすがにあなたのお気に入りでも、あの館までは連れて行けないわ」


「でもこのままじゃ!」


 二人の言い合いを聞いていると、遠くから大勢の足音が聞こえてきた


「ほら、もうじきこの子は見つかるわ。早く行きましょう」


「でも、普通のお医者さんじゃ けっそんぶい を治すことはできないって!」


「それでいいのよ、一般人に無闇に怪異の力を使うのは御法度よ、いくら茅音でもご飯を抜きにされて一週間地下牢生活よ」


「うっ...ちかろう はいやだ...暗いし、こわい」


「分かったなら行くわよ」


「うん、でもちょっと待って」


 茅音ちゃんがこちらにてとてと歩いてきた


「お兄ちゃん、また会おうね。これ持ってて」


 渡してきたのは、一枚の切れ端だった


「これは? 」


「私のでんわばんごう」


「え、もう携帯持ってるの?」


「うん、私が持ってるとすぐになくすからいっつもメリーが持ってるけど」


「まったく。世話が焼けるわ」


 紙切れを残った左手に握らせると茅音ちゃんはいつのまにか移動していた関節人形の場所まで走って行った


「じゃあね、お兄ちゃん!」


左手に握っている紙切れをズボンのポッケに入れた後、茅音ちゃんが手を振っているのを左手で手を振り返して見送った






しばらくして、右のポッケから急に着信音らしき音が聞こえた



ボーッとしていた僕はケータイを無くしていたことを忘れており、無意識にその電話をとってしまった








『今、貴方の後ろにいるの』


 突如、背後にあの関節人形が現れた

 確かに茅音ちゃんと一緒に向こうに行ったはずなのに...

 背中に冷や汗が伝う


「茅音がいる時には言えませんでしたが、貴方はもうこちらには関わらないでくださいませんか?」


 酷く冷めた声で背後から囁いて来る


「どうゆう、事ですか」


「どうもこうも、貴方と私たちは住む場所が違います。今回は私のミスで茅音と交流を持つ人間を作ってしまいましたが、本来なら茅音と関係を持った人物は消さなければならないんですよ?」


 背後の関節人形は僕の首にナイフを突き立てる


「今回は茅音のお気に入りだから逃しますが、これからは故意的にこちらと干渉しようとした場合」


 ナイフを移動させ、僕の心臓前まで持って来る


「消させて頂きますので、ご注意くださいませ」


 それからぱっと僕から離れて、左手に握っているケータイを取る


 そのケータイを顔の近くで可愛げに振ると、さっき茅音ちゃんが歩いて行った方へ立ち去った



 そしてその去り際


「そういえば、名乗っていませんでしたね」


 

 彼女が言ったその言葉が、耳に残って離れない


 彼女は、名乗った



 自らを、かの怪異の名で












     『私、メリーさんって言うの』









ここから本格的に 成瀬 零次 の物語が始まっていきます



少しでも「面白い」「続きが見たい」と思ってくれたら広告下の評価ボタンを押してくれるとありがたいです

感想なども気軽にどうぞ


どうか、モチベーションupの為にどうか...!

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