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1 悪夢

 また、あの夢だ


『ヴヴッッヴァァッ』


 呻き声......この夢を見る度にどんどん近づいてるんじゃ無いだろうか.........


『ア゛ヴッヴヴァア゛ア゛』


 駅......電車......

 もう何年も何年も同じ夢を見ている

 もう諦めたんだけれど


「早く終わんないかな」


 相も変わらず心臓に悪い


『グチャ グチャ ガリッ ボキッ』

『イヤっ止めて......来ないで!!」


 見るな、聞くな


『いや......助けて、嫌だ! 助けて!! 誰かぁぁぁあ゛あ゛あ゛っ あ あ」


『グチャッ バキッ ボキッ ジャリッ』


 もうすぐ目が覚める


『ヴヴヴァッ ア゛ヴヴァァア゛』


 居なくなったかな

 そっと目を開ける


「今日は......挽肉...か......」


 声が聞こえていた方を見渡す

 砕け、折れた骨は少しばかり残った真っ赤な肉と共にそこら中に広がっている

 さっきまで助けてを求めて泣き叫んでいた女性は今や挽肉のような悲惨な肉塊と化していた


 静かに手を合わせる


「ごめんなさい...ごめんなさい、ごめんなさい」


 毎日、毎日

 人が死ぬとこ見せられて、泣いて

 手を合わせて、弔うフリして

 いつまで続くんだろう









「あ......あう......今...何時...?」


「7時です」


 ボヤけてた意識をはっきりさせる

 うん、7時ね


「雫、今日土曜日だよね?」


「残念ですけどお兄様、今日は金曜日ですよ」


「は?」

「?」


 嘘だって言ってくれないかな......


「うわぁぁぁぁ!?」


 急いで制服に着替えて自転車を出す


 僕の家は最寄りの駅が少し遠い

 しかも学校がある駅までも遠いから、通学に1時間半くらいかかる

 自転車で駅に行くにしても6時半くらいには出ないといけないくらいの距離だから引っ越すことも考えたけど

 一高校生の僕と今年中三の雫だけじゃどんなに頑張ってもそんなお金が出る訳ない


 とにかく急ごう

 必死に自転車を漕ぐこと15分

 普段は30分くらいかかるけどなんとか駅まで辿り着く

 走ってホームまで行き、電車に飛び乗った


「ギリギリ間に合った......」


 僕が息を整えてると隣から明るい雰囲気の声が聞こえた


「お、零次今日はギリギリだねぇ」


「ちょっと寝坊しちゃってね...照美は今日は朝練なし?」


「うん! 朝練ない日はいっつもギリギリに行くんだぁ」


 僕に話しかけてきたのは新崎照美

 所謂幼なじみだ、成績は少しアレだが陸上部期待の新人で、常に笑顔で誰にでも接する性格も相まって学校中で人気がある

 因みに顔もスタイルも良い。ファンクラブが存在する程である


 勿論、男子生徒から告白されたこともあるらしい

 けどいっつも照美は僕を理由にしてそれを断るとゆうのだ

 『私は零次が好きだから、後は興味ないんだー』って

 恥ずかしいからやめて欲しい

 あと別に僕と照美は付き合ってる訳じゃないから、色んな男子が僕に対してよく突っかかってくるけど完全にとばっちりなんだよね


「ねーねー零次、乗り換えの駅着いたよ」


「あぁ、ごめん」


 二人で並んで駅を歩く


「ねえ、零次、今日もあの夢見たの?」


「......うん」


「辛かったら何時でも呼んでよ、私が何処でも駆けつけてあげる!」


「あぁ......まあ、本当に辛くなったら考えてみるよ」



 あの夢

 丁度6年前から突然見始めた悪夢

 最初の頃はただの映像を見せられてる様な感覚だったけど、何回も見るにつれて音も光景もリアルになってきた

 今年に入ってからは遂に助けを求める声まではっきりと聞こえるようになった


「あ、そういえば今日は志織さんの命日だったね......放課後雫ちゃん連れてお墓参り行こうか」


「ああ...うん」


 そう、その夢を見始めたのはお母さん......

 成瀬 志織が死んだ日からだった

 その日、お母さんは通り魔に襲われてしまった

 僕の目の前で、お母さんは刺されたのだ

 当時、僕は相当混乱していたらしく、通り魔がどんな格好をしていたのか、どんな顔だったのかはまるで記憶にモヤがかかった様に見えなくなっている

 お父さんは僕が一歳の頃に病気でこの世を去った

 お母さんは女手一つで僕と雫を育ててくれたんだ

 そんな大切な家族が突然この世を去って当時の僕は相当荒れた

 しばらく学校にも行かなくなって、ご飯も一日1回食べるかどうか

 後はずっと部屋にこもっていた


 そんな僕を助け出してくれたのが妹の雫と照美だ

 雫は元々ブラコンな感じはあったと思うけど、お母さんが死んでから

『お兄様と一生一緒にいてあげる。ううん私とお兄様は義兄妹なんだから結婚しても大丈夫、だからお兄様、結婚しよう? 私がお兄様の苦しみ、全部取り除いてあげるから』

 みたいなことを週一ペースで言われた

 さすがにそれは無理だってことを何度も伝えたら最近ようやく収まってきた.........と思う

 けど雫が僕に寄り添ってくれたおかげでお母さんの死から立ち直れたことも事実だから、雫には感謝している

 照美は毎日僕の家に来てご飯を作ってくれたり、家事全般を受け持ってくれた。

 僕も多少家事は出来るけど、引きこもっていた事もあって雫に任せっきりだったから今となっては照美にすごく感謝している

 もう新崎家には足を向けて寝られない


「そうだ照美、僕のスマホ、照美の家になかった?」


「え? 零次スマホ落としたの⁉︎」


「うん、道に落とすことは無いから昨日行った照美の家かなって」


「うーん、じゃあ探してみるよ。あったらお墓参りに行くときに持ってく」


 話している内に学校の最寄駅に着く


 照美と降りて暫く歩くと

 照美に注目する人が増えてきた


 「新崎さんだ」とか「今日も美しい」とか

 途中で「あんな男の何が良いんだか」とか「俺の方が絶対イケメンじゃん」とかも聞こえて来る

 まぁ確かに前髪が長いしメガネかけてるからよくブスな陰キャに間違われるのだが...照美曰くイケメンの枠に入るらしい

 でも多分身内贔屓入ってる


 その言葉を聞き取ったのか照美が急に僕の腕を引き寄せて腕にしがみついて来る

 最初の方はナニとは言わないけど当たるし、周りからの殺気が酷いからやめて欲しかったけど断ったら断ったで殺気が飛んでくるし

 何よりもう慣れたから好きにさせている


「照美、教室に着くまでは離してよ?」


「はーい」


 ちょっと歩きづらくなったがそのまま照美と一緒に学校まで登校した




「おはよー!」


 照美は下駄箱で腕を離してくれたけど

 結局同じクラスだから教室まで一緒に行く


「お、照美、今日も嫁と登校ですか」


「僕を嫁って言わないでくれ......」


「そうだよりーりん、私達はまだ結婚してないよ」


 照美にりーりんと言われた彼女 生川(おいかわ) 梨々(りりか)

 僕たちを見ても殺気を飛ばさない少数派のありがたい人間だ


 照美は女子生徒にも人気があるので

 照美が僕に何か弱みを握られてこうなっているって思われてる

 まぁ、それほど照美が人気あるってことだから、考え方によれば僕にとっても嬉しい事だけど


 生川と話し始めた照美から離れて自分の席へ行く

 カバンを置いてから着席して暫くぼーっとしていたら、前の席の人が体をこちらに向けた


「あの、成瀬くん」


「あ、何? 書季(よみき)さん」


 僕の前の席に座っている彼女は 書季 美琴

 ショートヘアであるが前髪が長く目が隠れており、更に眼鏡もかけているとゆう事で元々の影の薄さとも相まり、素顔を見た人はこの学校では誰もいないとゆう

 

 沢山本を読むらしく、よくおすすめの本を僕に貸してくれる


「あの...今日、呪怨都市シリーズの新作が出るんです...帰りに付き合ってくれませんか...?」


「もうそんな時期か...いいよ。僕も読みたいしね」


 呪怨都市シリーズとは1冊目の呪怨村から始まって5年間もの間続いているアクションホラー小説で、僕と書季さんはその作品のファンでもある

 主人公が行く先々で遭遇する怪奇現象や怪異を持ち前の怪異に関する知識とその身に宿す呪いの力で退けていくとゆう物語だ

 三ヶ月に一度出版されるペースなので6月の丁度今日が新刊の発売日だ


「照美ー、今日は放課後本屋寄るから、先帰っててー」


「わかったよー......あの眼鏡女めぇ...」


「ぷっ、浮気されてるじゃんw」

「wをつけるな!wを!」


 なんか呟いてたけど...元気そうだしいいか


「おーい、ホームルームやるぞー」


 いつのまにか教室に来ていた担任がホームルームを促す

 全員が着席し、今日一日の学園生活が始まった



少しでも「面白い」「続きが見たい」と思ってくれたら広告下の評価ボタンを押してくれるとありがたいです

感想なども気軽にどうぞ


どうか、モチベーションupの為にどうか...!

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