事件の幕開け&司の本当の能力
お久しぶりです、また忙しくなりました・・・すみません・・・
3月になったら本腰を入れて毎日更新をしていくつもりなので宜しくお願いします!
中間テスト明けから数日が経った日の昼休みのこと・・・
「ねえねえ、昨日うちの学校の生徒が例の襲撃事件に遭ったらしいよ!」
「まじ!?それやばくない?」
「なんでも犯人はこの学区近辺を中心に襲撃しているらしくてとうとううちの高校も狙われたみたい」
「うわーこわ」
「しかもね、襲われた生徒、能力レベルが5だったにも関わらず、襲われたって言うんだからもう私たちもいつ襲われるかわかんないね・・・」
「これから帰りは絶対1人で帰っちゃだめだね・・・」
実はここ数週間前からこの清前高校の含まれる第4学区の高校の生徒を襲撃するという事件が起きている。
被害者は今回の襲撃を含めると5人目となる。
しかも全員が高レベル能力者でありながらも襲撃を許してしまっており、しかも生徒に目立った外傷はないが、全員意識不明であり、病院に入院している。
犯人の目的も不明なので、犯人への手がかりは何一つつかめていないという状態である。
その話を聞いていた上平と白坂は
「最近、物騒なことがあるみたいだな」
「そうみたいね、私たちも帰り道気を付けなきゃね」
「ああ、いつものことだが、今日も一緒に帰ろうな」
「もちろん!」
と2人で話していると・・・
「なんかおふたりさん、いい雰囲気ですね」
「うわ!びっくりした!東坂さんか・・・」
「私も焦ったよ・・・」
「まあそれは置いといて、今回の襲撃事件、コールドアイとしても全く犯人の手掛かりを見つけられていないのが、本当に申し訳ないです」
「いいって、東坂がそこまで言うことじゃないよ」
コールドアイも当然この襲撃事件に関わっているのだが、さっきも言った通りでほとんど何もわかっておらず、犯人の大方の能力でさえもいまだ不明なのである。
「こちらからとしては帰り道に注意してくださいとしか言えないのが心苦しいです・・・」
「奏ちゃん!私たちに出来ることならなんでも協力するからね!」
「ありがとうございます・・・」
「(え、それはちょっと面倒くs・・・でも言ったらまずいよね・・・)」
「もちろんいいよね?司?」
「あ、ああ、友達だからな!はっははh」
「そうだよね!断るわけないもんね!もし断ったりでもしたら・・・」
「ないないないないない!そんなことするわけないだろ!」
「良かった!」
白坂は困った人を見つけると放っておけないたちの性格で一度助けると決めると、てこでも動かないのだ。
それを拒もうものなら非常にその後がめんどくさいので司もしぶしぶそれに合わせている。
上平は元来面倒くさがりなのでよっぽどのことが無い限り自分から動くことはほとんどないが、白坂に連れられて何度もしてきたのでまた今回もかと少し憂鬱な気分になっている上平であった。
放課後になり、上平たちはコールドアイとして活動する東坂と別れた。
ちなみに立花は少し前から実は弓道部に所属しており、部活で遅くなっても部活の友達と帰る方向が同じなため、襲われる心配はあまりない。
2人でいつもの帰り道を歩いていると・・・
「それにしても犯人の能力ってなんなんだろうね?」
「んー、考えられるとしたら光学操作とか認識阻害、あるいは遠隔操作系ってとこかなー、これだけでもかなりの数の能力者がいるから絞りきれないんだろうね」
「そっか・・・コールドアイも大変だね」
「でも東坂の窒素装甲なら不意打ちだろうと大丈夫だろうな」
「うん!奏ちゃんならきっと犯人に襲撃されても返り討ちに出来るね!」
しかし、2人が楽しく会話をしているのをぶち壊すように事件が起こる。
2人が大型信号機で赤信号で止まっていると突然轟音が近づいてきた。
「避けろーーーーー!!」
「キャー――――!!」
「かあさーーーーん!」
「なんだ?何が起きてるんだ?」
「あ、あれ!」
白坂が指差した先にあったのは能力都市ではよく液体物の運送として使われる自動運送タンクローリーである。このタンクローリーは名前の通り、運送として使われるもので基本的にAIによる自動制御で動いている。しかし、今はそのタンクローリーも暴走して、すごいスピードでこっちに向かってきており、上平の後ろの人達は我先にと全力で逃げ出していたが、中にはもう無理だとあきらめている人もいるなかで上平たちはただ立ったまま落ち着き払っていた。
この時、白坂はちらっと後ろの方を見て人数と建物を確認し、それを上平に伝える。そして上平は超高速で状況把握を行った。
(約時速150キロで自動運送タンクローリーが接近中、後方には高層ビルが2棟、人数は20人、そして高校生は俺たちのみか・・・しかもこのタンクローリー、危険化学物質を運送する特殊運送版か、もしよけたりしても二次災害を引き起こすから、逃げても意味がない・・・かといって防ごうにも彩の能力だと化学反応による爆風と衝撃波は防げないし、俺の能力でもあの頑丈極まりない特殊運送タンクローリーを抑え込めない・・・どうする!)
この時、彩も状況を理解しており、司の少し後に自分たちのいる状況の危険さを察したのか
「司、私、無力みたいだね・・・だからせめて最後に・・・」
「それ以上言うな・・・俺がなんとか止めてくる」
「・・・・・・わかった、死なないでね」
その時、彩は今にも泣きそうな顔をしており、上平はその顔を直視できなかった。
しかし、走り出しながらも上平はこの状況で全く諦めていなかった、いや諦めたくなかった・・・それは好きな幼馴染が泣くところなんて死んでも見たくないからだ
あと10mと目前に迫っているタンクローリーに対して上平は人生で一番落ち着いていた。
もう死ぬことがわかっているからなのか、上平は無意識に右手を前に突きだしていた。自分でもなぜそうしたのかわからなかった・・・しかし上平と白坂は思いっきり叫んだ
「「止まれ――――――――!!!!」」
その次の瞬間信じられないことが起こった。
ブレーキ音が無いのにもかかわらず、タンクローリーが猛烈な勢いで減速したのだ。
さすがにトラックの速度が速度だけにタンクローリーのキャブの部分はかなりつぶれてしまったが、後ろのタンクローリーの部分はなんとか無事で済んだ。
上平にも今の現象は理解しきれなかった。それは白坂も同じだった。でも無事だと分かった瞬間、
「つかさああああああああ!」
白坂が泣きながら近づいて、上平に抱きついた。
それを上平は抱き返し、頭を撫でて言った
「心配かけたな・・・」
「ほんとうだよおおおおおー、ひぐg死んじゃうかと思ったよぉぉーーー」
「ああ、本当にごめんな・・・」
とりあえず白坂がめちゃめちゃ号泣するので上平は建物の陰にそそくさと隠れて白坂を落ち着かせた
「少し落ち着いたか?」
「うん・・・」
「とりあえず誰も怪我してないみたいだな」
「司のおかげだよ・・・ありがと・・・」
「・・・どういたしまして・・・でいいのかな?・・・」
「うん」
しばらくして白坂が完全に落ち着いたが、このまま帰るのもあれだと思い、2人で家の近くの公園に寄った。
「この公園久し振りに来たな」
「うん、小学校以来?」
「だね」
「・・・・・」
「・・・・・」
2人は少しの間沈黙していたが、白坂がその静寂を破った。
「ねえ司、さっきのことなんだけどさ」
「うん」
「・・・どういうことか、説明してほしいな」
「・・・・・わかった・・・あの時、俺は無意識に右手を出していた。そして止まれっていう思い一心で能力を使用した瞬間、直感的になんだけど止められるって思えたんだ。全然論理的じゃないけど、なんかリミッターが外れたというか、おもりがなくなったというか・・・そしたらなぜかタンクローリーは急停止して俺の目の前で止まった・・・」
「なにそれ・・・司がそんなあやふやなことを言うってことは本当にそうだったんでしょうね・・・」
「全然説明になっていなくてごめん・・・」
「いいよ、私を、みんなを救ってくれたわけだし」
「・・・ありがとう」
「こちらこそ、感謝してもしきれないくらい感謝してる」
「・・・・・」
「じゃあ司の能力は今回の事件で風力操作じゃないってことは証明されたってことだよね・・・」
「ああ、なんなんだろうな、この能力は・・・」
「確かめてみる?」
「どうやって?」
「とりあえず私がものを投げるからさっきみたいに能力を使ってみて」
「わかった」
2人はブランコから立ち上がると、少し広いスペースに向かい合って立ち、白坂はカバンから中身が少し入ったペットボトルを出した。
「いくよ!」
「こい!」
そして運動神経抜群の白坂からいいピッチングフォームで投げだされたペットボトルは真っ直ぐ上平に向かって飛んで行った。
そして上平はすぐに右手を前にだし、能力を発動した。
「「え・・・」」
するとまた驚きの現象が起きた。
ほとんど真っ直ぐ飛んだペットボトルは不自然にその速度を急速に減少させ、そのまま地面へと落下したのだ。この現象をみた白坂は・・・
「なに今の!明らかに物理法則から外れてる動きだった!」
「自分も初めて見たよ・・・なんだこれ」
落ちたペットボトルを拾って確認するが、もちろんなんともなかった。それを白坂に返す。
「もう一回いくよ」
「そうだな」
そしてもう一回行われた実験は先程と同じだった。
それから2人は様々な実験をした。目をつぶったり、右手を出さずに能力を発動したり、背を向けてペットボトル以外のものをを投げてみたり・・・結果は全てはじめと少し差異はあったりしたが、ほとんど同じだった。
「はあ、はあ、全て同じってどういうことよ・・・はあ」
「でも彩と実験したおかげで能力の見当はついたよ」
「さすが司、それでなんだと思うの?」
「まず前提として実験で投げられた物質のの速度をすぐに0にした、ってことはいいよね。物質の速度を不可視の力で減少させることが出来る力と言うと、物理学的に考えて風力じゃないとしたら磁力か引力しかない」
「うん、でもどっちなの?」
「ああ、だからどっちなのかどうか実験中に試してみた」
「そしたら?」
「・・・引力だったよ、しかも物質の速度も減少させられるから引力の向きも自分から5m未満なら相当頑張らないといけないけど一応任意的に変えられるらしい、でも無意識状態だとさっきみたいに体に接触する直前に急速に速度が0になるみたいだな、ただこれがどれくらいの力までなら作用するかはまだ分からないな」
「待って・・・ということは司の本当の能力は引力操作なの?」
「ああ、そうみたいだな・・・」
「そしたら重力も操れるの?・・・」
「試しはしたけど、やっぱり自分を中心に数mしか発動しないから出来なかったな」
「でもいつかできる可能性はありそう?・・・」
「・・・わからない・・・けど、今はとりあえずこのことは秘密しないとな・・・」
引力という言葉は身近な言葉だが、その言葉の意味は実に広い。一般に引力というと重力のことを表す。
しかし、重力はニュートンの唱えた万有引力の法則のうちのひとつである。
万有引力、つまり万物全てには引力が働いており、それは分子や原子、素粒子までもが例外ではないのである。
上平の能力の引力操作の引力という言葉には引力全ての意味を含んでおり、その対象は万物全てなので、重力なども操作出来たら、今度こそ操作出来ないものは実質的にないことになる。
2人はこの事実を高校1年生ながら完璧に理解しているため、引力を操作出来ることについての凄まじさがわかるのである。
「・・・とりあえずそろそろ暗くなってきたし、家に帰ろっか・・・」
「そうね・・・本当に今日はありがとう」
そうして2人は家に着いた。夕食でテレビを付けると先程巻き込まれた事件が大々的に放送されていた為、別の家ながら2人はご飯を吹き出しそうになったが、なんとかばれずに済んだ。そしてお互い寝る前に通話をし、明日立花や東坂に今日の話をしっかり報告することを確認し合った。
時は事件の発生の少し前まで遡る・・・
「よし!よし!実験もいい感じだ!」
「博士、次のサンプルを持ってきました」
「おぉ!これはまた・・・」
「レベル4クラスの能力者のものです」
「我々の夢をかなえられる日も近いかもしれんな」
「そうですね!ところで今回のターゲットはいかがいたしましょう」
「そうだな・・・レベル5クラスの能力者がいい」
「難題ですので少々手荒なことをしても?」
「構わん、どちらにしろメモリーさえ抽出すればいいのだ」
「能力者はその強力な能力ゆえ、自分は特別だという思考を持ちやすいです。そのことを利用して、交通事故で大衆を巻き込むまいとして自分が犠牲になり、そこで犠牲になった能力者のメモリーを抽出するというのはどうでしょう?」
「ほう!なかなかいいアイデアではないか!死亡直後でも脳さえ無事なら問題はないからな!」
「これでしたら最近は集団で下校する高校生も多いので一石二鳥になるかもしれません」
「わかった、すぐに実行に移してくれ」
「承知しました」
この時、裏で大きな歯車が動き始めていた・・・
とうとう司君の能力を明かしました!いやあ、難しかったです・・・
これから徐々に戦闘シーンも多くなっていくと思いますが、その時に出てくる化学物理知識はなるべく解説を挟むようにします。