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魔法のいろは  作者: ほろほろほろろ
第三幕
24/27

なら、教えてあげる

「病状が更に進行しています。かなり危険な状態です」


「そう、ですか」


「発作の程度も頻度も酷くなっているようです。ここまでくると、いつまでもつか」


「……」


「私達も最善を尽くします。しかし白峰さん、あなたにも『覚悟』をしていただきたい。いつその時がくるかは、私達も保証はできませんから」


「……分かりました」


「それでは、今日はお部屋へお戻りください。後で点滴を取替えに行きますから」


 ***

 ***


 白峰さんが病院から戻らないまま一月が経った。僕自身は時間の流れを実感したくはなかったが、吹き抜ける風の冷たさが無理矢理僕に現実を突きつける。残暑に唸り声を上げていたあの頃が懐かしい。

 夏を終え、冬へ向かうこの街はどこか灰色に染まっているような気がした。飾り気のない壁が並ぶ住宅街。雲に覆われた空。モノトーンの地面。色味の薄い街の空気がやけに悲しい。

 それでも、僕は息を切らしながらペダルを漕ぐ足に力を込める。風を切り、自転車で民家の間を抜けていく。向かうは勿論隣町の病院。目的は、白峰さんのお見舞いだ。

 これで通算何度目になるだろう。週一くらいで顔を出していた気がするから、きっと今日で五回目だ。それに、今日は僕一人じゃない。詩織も一緒だ。


「ちょっと~! あさひ遅いよ~!」


「ま、待ってくれぇ! 詩織ッ! 速いよ!」


「速くないよ~! あさひが遅いんだよ~! のろのろしてると置いてくよ~!」


 コイツめ。前回は道を知らなかったから僕が先導したが、一人で行けるとなると持ち前の体力でずんずん先へ進んでいきやがる。しかも上り坂をだ。こっちが持久力無いのを知っているはずななのに。


「もぉ、あさひはもやしっ子だなぁ。そんなんだから持久走で足がつるんだよ」


「う、うるせぇ! それは去年の話だろうが! このヤロウ! 待ちやがれ!」


 あいつに挑発されて黙っているわけにはいかない。僕は最後の力を振り絞ってペダルを漕ぐ。


 ***


「はぁ、はぁ、やっと着いた」


 病院に着いた僕は駐輪場に自転車を停め、肩で大きく息をする。その一方で、詩織はいかにも余裕そうな笑みを浮かべている。


「もう、そんな息切らしちゃって。あさひも日頃から運動したほうがいいんじゃない?」


「うるせぇ、ほっとけ」


 詩織の冗談もほどほどにして僕らは白峰さんの病室へ向かう。

 院内へ入れば、辺りを満たすのは独特の空気。静かで、ゆったりして、それでいてどこか神経質になる。初めはその中を進むのが躊躇われたが、今ではそれが普通になってきた。慣れないことには変わらないが。

 詩織と並んで歩くこと十分ほど。白峰さんの病室が見えてきた。五回目ともなれば、ドアをノックすることには抵抗はない。


「は、はぁい」


 コンコンとドアを叩けば、すぐに中から返事が返ってくる。引き戸をスライドさせれば、ベッドの上の彼女と目が合った。


「やぁ、白峰さん。お見舞いに来たよ」


「あぁ、桐江君! 来てくれたんだ! ありがとぉ! いらっしゃい」


「あたしもいるよ!」


「柳瀬さんも!」


 病室へ足を踏み入れた僕らは、あらかじめ用意されていた丸椅子へ腰掛ける。腰を下ろした途端、ふっと体から力が抜けるような感覚を覚えた。心臓破りの坂をハイペースで上りきり、ようやく一息つけるのだ。

 深く呼吸をしつつ、何となく部屋の中を見渡す。するとどうだろう。何かいつもと違うような気がする。


「桐江君、どうしたの?」


「いや、なんか……」


 白峰さんがこっちを見つめる。ベッドに横になり、上半身だけを起こして。以前なら、こんなところに居られるかとベッドを飛び出していたのに。それに、心なしか表情に元気がない。

 そのまま視線を下へ移動させれば、ベッドの端から管が出ているのに気が付いた。その先を目で辿れば、そこには点滴バッグが一つ吊り下げられている。

 点滴?


「白峰さん、これまで点滴なんてしてたっけ?」


 指差して訊けば、彼女は恥ずかしそうにはにかんでいる。


「あぁ、これね。そんな大したものじゃないのよ。ここにいると、全然体を動かす機会がないから運動不足になっちゃうの。そのままにするといろいろ体に良くないから、これを繋いでるの。えへへ、ちょっと恥ずかしいな」


「そう、なんだ」


 僕はこういうものには全く詳しくないんだけど、白峰さん本人がそう言うならそうなんだろう。けれど、柱にぶら下がるそれが僕の目には物々しく映った。


「そっかぁ、ここだと走ったりもできないもんね。それで点滴なんて、入院って大変」


 詩織が身を乗り出して口を開く。


「それなら、あさひも点滴してもらったらいいよ。こいつ全然運動しないから、ここに来る間の坂道ですらヒィヒィ言ってたんだよ」


「し、詩織!? 余計なことを」


「うふふ、そうなんだ。でも、確かにあの坂は自転車じゃキツそうだね」


「そうだぞ。お前の体力がバケモノなだけだ。部活でエース張ってるやつと帰宅部を比べるんじゃない」


「ババ、バケモノって何さ! 女の子に対してヒドい!」


「うふふ、あはは」


 ふと、少し前に時間が戻ったような感覚がする。白峰さんが入院する前、そういえば、こんな風に賑やかだったっけ。部屋の中が笑い声に満たされる。白峰さんも、口元を隠してくすくすと笑っている。


「そうだ!」


 そんな中、詩織が思い出したように声を上げる。そのまま鞄の中をまさぐり始め、取り出したのは一つの白い紙袋。何かのロゴが大きくプリントされている。


「なんだ? それ」


 訊くと、詩織は自慢げに、そしてもったいぶるように言う。


「ふっふっふ、これが何か知りたい?」


「あいや、別にいいです」


「そんなに知りたいなら教えてあげる。これはね、今巷で話題沸騰中の高級洋菓子店『コントラット』の新作スウィーツよ!」


「わたし知ってる! テレビで見た!」


 何!? あの詩織が洋菓子の差し入れだと!? それに、白峰さんが食いつくということは、どうやら『本物』らしい。

 詩織は袋の中から箱を取り出し、蓋を開く。その中には計十二個の子袋がきれいに整列していた。箱を机の上に置き、白峰さんへその中の一つを手渡す。


「はい、どうぞ。入院生活で大変だと思うけど、これを食べて元気だして」


「ありがとう、柳瀬さん。いただきます」


 早速白峰さんは包みを開く。中から現れたのはクッキーのような焼き菓子だが、そんじょそこらの安物とは違う。キラキラしているような、品のある佇まい。ゴージャスな雰囲気がその周囲に漂っている。

 それをサクッと一口。瞬間、白峰さんの顔にぱっと笑顔が咲いた。


「んっ、これおいしい!」


「ほんとに!? よかったぁ。実はあたしもまだ食べてないんだ。あたしも一つ貰うね」


 そして詩織も一つ口へ運ぶ。すると、瞬く間に顔がほころぶ。

 なんと。それほどまでに美味い洋菓子とな。どれ、僕も一つ。


「あさひにはあげない。あたしの話無視しようとしたもん」


「そんな殺生な!」


「柳瀬さん、そんな意地悪言っちゃ可哀そうよ。一つくらいいいじゃない」


「し、白峰さん」


 なんて優しい人なんだ。かつて僕を強引にあちこち振り回した人と同一人物とは思えない。

 詩織はムスッとした顔になりつつも、一つを渋々僕に手渡す。少し緊張しながら包みを開き、恐る恐る口へ運ぶ。その瞬間、高級感溢れる繊細な甘さが口いっぱいに広がった。


「美味い!」


「美味いって……あんだけ物欲しそうにしておきながら感想がそれだけなの? もっと他にもあるでしょ」


「美味いものは美味いとした言い様がないだろ。実際美味かったぞ。こんなに美味いのは初めて食べた」


「分かったから、そんな美味いばっか連呼しないで。とにかく、これであさひが食レポには圧倒的に向かないってことは分かったわ」


「うふふ、二人とも可笑しい」


 白峰さんが笑う。詩織も、口ではあんなことを言っていても顔はほころんでいた。

 一つの洋菓子を中心に、僕らは話に花を咲かせる。


 ***


 白峰さんと詩織の笑い声が響く中、ふと気が付けば空に茜が射していた。しばらく振りに顔を合わせ、つい時間を忘れていたらしい。壁の時計を仰ぎ見れば、ここに着いてから一時間が経とうとしていた。


「さて、と」


 重い腰を持ち上げ、荷物を掴む。


「結構長居しちゃったな。話すことも話したし、今日はもう帰るよ。また来るから。詩織、行こう」


「あ、そうだね……て、もうこんな時間なんだ。気付かなかった」


 詩織も立ち上がり、荷物を纏め始める。その様子を、白峰さんは眉を寄せて見つめている。


「柳瀬さん」


「ん? どしたの?」


「少しだけ、柳瀬さんに話したいことがあるの。いいかな」


「別にいいけど……」


 怪訝そうな顔で詩織は頷く。心なしか、白峰さんがほっとしたように眉を上げた。

 僕は背負った荷物を再び床へ下ろす。

 それにしても、白峰さんから詩織に話とは珍しい。その内容に若干興味が湧く。


「何だ? 話って」


 ダメ元で訊いてみれば、やはりというか、白峰さんがキッと僕を睨みつけてきた。


「あら、桐江君ったらデリカシーが無いんだから。ガールズトークに割って入ろうだなんて。それとも、女子の秘密を覗き見したいの?」


「あぁいや、別にそういうつもりじゃなくて――」


「なら分かるでしょ。桐江君は席を外して頂戴」


 若干高圧的な態度。入院前の白峰さんを思い出す。

 まさかの仲間外れか。けれど、ガールズトークなんて単語を出されたら無理に首を突っ込むこともできない。がっくしと肩を落とす僕に、詩織がそっと声を掛ける。


「あさひは先に帰ってて。暗くなる前には帰るから。心配しないで」


「わ、分かったよ」


 荷物を背負い直し、引き戸に手を掛ける。


「んじゃ、またな、二人とも。またお見舞いに来るから。詩織は気を付けて帰れよ」


 もう一度振り返り、言葉を残す。えぇ、またね、と白峰さんは言う。分かってるわよ、と詩織は言う。

 二人の返事を背に受けて、僕は白峰さんの病室を後にする。

 一人歩く病院の廊下。薄暗く、無音だ。

 白峰さんの話。気にはなるが、女子の間の話題に関わるのは確かに危険そうだ。大人しく二人の言葉に従うとしよう。

 自分にそう言い聞かせ、自分の靴音だけが響く廊下を歩いていく。


 ***

 ***


 さて、朝陽君には帰ってもらったことだし、これでやっと柳瀬さんとお話ができる。でも、朝陽君だけのけ者にしたみたいでちょっと心が痛む。朝陽君もなんだか残念そうにしてたし。でも、ここからの話を彼に聞かれるわけにはいかない。


「それで、話って何?」


 良心が痛む中、隣の柳瀬さんへ顔を向ける。彼女の顔には、さっきまでの笑顔はない。真剣な話をするのだと、心のどこかで察しているんだろう。

 緊張のせいか、鼓動が早くなる。


「まず先に、柳瀬さんには謝らないといけないわね」


「……え?」


 素っ頓狂な声が響く。ワンテンポ遅れて、柳瀬さんが焦ったように口を開く。


「あ、謝るって何をさ。あたし、白峰さんに何かされたっけ」


 心当たりがないということは、彼女の人柄をよく表してるんだわ。過去のことは水に流す。昔のわだかまりなんかは気にしない。でも、それじゃわたしの気持ちが晴れないままだ。

 胸の内でもう一度意を決する。


「えぇ。わたしたちが初めて会ってからしばらくの間、わたし、柳瀬さんに辛く当たってたでしょう? そのことを、ずっと謝りたくて。あの時は酷いことばかり言って、ごめんなさい」


 頭を下げる。すると、柳瀬さんは微笑み混じりに言葉を零す。


「あぁ、そんな昔のこと。そんなこと今更気にしなくていいのに。あたしだっていろいろ白峰さんに言っちゃったから。だから、そのことはお互い様ってことで、ね」


 初めに因縁をつけたのはわたしの方なのに、柳瀬さんは優しい言葉を掛けてくれる。心の中で、やっぱり彼女には敵わないと思った。


「もしかして、話ってそれだけ。ただ謝りたかっただけなの?」


「いいえ、違うわ」


 食い気味に答えると、柳瀬さんは目を開いて首を後ろへ引いた。わたしは声の調子を直し、気分を落ち着かせる。


「わたしたちが初めて会ったとき、柳瀬さん、わたしが桐江君に執着するのを見て訊いたでしょう。『わたしと桐江君がどういう関係か』って」


「う、うん。確かに訊いた気がする」


「その答えをまだ言ってなかったから」


 それが、今日の話の一つ目。


「知りたい?」


「し、知りたい」


 真っ直ぐ見つめ、恐る恐る首を縦に振る。


「分かった。じゃあ、話すね。わたしと桐江君の関係について」


 と言っても、そんな大した話じゃない。単純に、一人の女の子が一人の男の子に救われた話。そんな話、世界のいたるところに転がっているわ。

 それでも、誰かに打ち明ければ心がすっと軽くなる。別に深刻な話でもなかったけれど、肩の荷が下りたような心地がする。


「そう、昔のあさひとそんなことが」


「この話は桐江君には内緒にしておいて。桐江君は多分覚えていないだろうし、彼へは、自分の言葉でいつか伝えたいから」


「分かった。あたしたちだけの秘密ね。でも、どうして急にそんなことを教えてくれたの?」


「それは……」


 ふと言葉を詰まらせる。言葉は喉元まで出掛かっているのに、いざその時になると臆病になる自分がいる。それでも、ここで言わなかったら今度はいつになるか分からない。心の中で、自分で自分を鼓舞する。


「わだかまりを残したくないから。後悔したくないから」


「わだかまり? 後悔?」


 柳瀬さんが首を傾げている。分かっていない風に見えるが、それでも彼女の顔に次第陰が差していく。きっと察しがついているんだろう。わたしのこの状況を見れば当然か。


「もしかして……」


「そう、もうあまり時間がないの」


 これが、話したいことの二つ目。


「時間がないって、まさか……」


 柳瀬さんが口元に手を当てて息を呑む。

 わたしは胸に手を当てて小さく頷く。


「うん、ずっと小さい頃から。それが最近、すごい速さで酷くなってる。お医者さんも、いつまで持つか分からないって」


「そ、そんな、嘘でしょ? だって白峰さんが言ってたじゃない。すぐに退院できる。心配いらないって」


「ううん、嘘じゃない。最近はもう、歩くのも辛くなってきたの。自分が一番分かるの。もう長くないって。だから、今あなたに伝えたかったの」


「……どうしてあたしなの? そんな大事なことなら、あさひにも――」


「桐江君には言わないでッ」


 思わず語気が強くなる。はっとして前を見れば、柳瀬さんと目が合った。


「ご、ごめんなさい。でも、このことも桐江君には内緒にしておきたいの。お願い」


「わ、分かった……」


 その言葉にほっと安心を覚える。けれど、一方の柳瀬さんはキョロキョロと目を泳がせている。話がいきなり過ぎたかもしれない。


「でも、その、先が長くないって、あとどれくらいなの? 病気ならなんの病気? 手術とか、そういうのないの?」


「あとどれだけ生きられるかは分からない。一ヶ月かもしれないし、一年かもしれない。もしかしたら、明日がその日かもしれない。この発作がいつ来るか分からないもの。これまでずっと投薬とかしてもらってたんだけど、それはあくまで延命療法。わたしの病気に根本的な解決はないって。だから時間がないの」


 柳瀬さんへ詰め寄れば、彼女は焦ったように目をパチクリさせる。

 これが話したいことの三つ目。いえ、前の二つなんて正直どうだってよかった。この話さえできれば。

 わたしは所詮脇役。それなのに、この数ヶ月間、好き放題舞台を荒らしてしまった。だから、せめて最後だけは綺麗に締めないと。主役の子が困らないように。


「ねぇ、柳瀬さん。あなた、桐江君のこと、好きでしょ」


「えぇ!?」


 一際大きい声を上げ、柳瀬さんは唐突に立ち上がる。開かれた目はこちらへ向いたまま、手はふるふると震えている。


「きゅ、急にどうしたの!? 白峰さんの病気の話からどうして、ああ、あさひの話に!?」


「わたしの病気のことなんてどうでもいい。いいから答えて」


「どうでもよくないでしょ! 一番大事なことじゃない!」


 やっぱり病気のことを話したのは失敗だったかな。確かに、この流れだと答えにくい質問ね。でも、柳瀬さんにはどうしても答えてもらわないといけないの。


「そう、あなたは別に桐江君のことをどうとも思ってないのね。分かったわ」


「そそ、そんなこと言ってないでしょ。何とも思ってないなんて」


「じゃあどうなの? 正直に答えて」


「そ、そんなの、ただの幼馴染よ」


「……わたし、魔法が得意なの。頭の中を少し覗けば、あなたが桐江君をどう思ってるか一発で分かるわ」


 声のトーンを落とし、柳瀬さんへ腕を伸ばす。すると彼女は、降参するかのように両手を挙げた。


「わ、分かった。分かったよ! 答えればいいんでしょ! 好きだよ! あさひのこと! これでいい!?」


 えぇ、それでいいわ。その口から彼女の本当の気持ちが聞けたから。

 ふと笑みが零れる。それを口元へ手を遣って隠す。


「ふふ、知ってた」


「え、嘘!? どど、どうして!?」


「そんなの、桐江君に対する。あなたの反応を見れば一目瞭然よ。他の周りの人たちもきっと全員気付いてるわ」


「そ、そんな……」


 よほど衝撃だったのか、柳瀬さんは肩を落としている。ちょっとだけ気の毒。

 でも、このままではだめ。彼女には前へ進んでもらわないと。


「ねぇ、彼のことが好きなら、どうして想いを告げないの?」


 穏かに訊けば、今度は素直に口を開いてくれた。


「だって、あたしたち、幼馴染だもん。あさひはきっと、あたしのこと女の子として見てくれてない。告白したら、きっと今の関係が崩れちゃう。それは怖いから」


「……そう」


 恐怖心。それはきっと誰しもが持ってる。わたしだってそう。わたしも、桐江君にそうできなかったように。

 そんな自分が誰かに言えたことではないのかもしれない。でも、そうしないといけないの。


「桐江君と、恋人になりたい?」


「なり、たい。なれるなら」


 その言葉が聞きたかった。

 わたしは彼女にバレないようにほくそ笑む。


「なら、教えてあげる」


「な、何を……?」


「言ったでしょう? わたし、魔法が得意なの。だから、柳瀬さん、あなたにとっておきの魔法を教えてあげる」


 わたしも立ち上がり、柳瀬さんの元へ。壁を背にした彼女の耳元へ口を寄せ、そっと囁きかける。


「『恋の魔法』を、ね。」

私も恋の魔法が使えるようになりたいです。

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