表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある男の邂逅

考えるって事がものすごくストレスになってる。

こうしてパソコンの前に座っていることすら苦痛だ、だからといって眠くもないのに布団にくるまっているのも空しい。

書き物をしようと思っても、一分とたたないうちに当てもなくふたばちゃんねるやニコ動を見ているのがオチだ、下手な絵を描こうとしている感覚に似ている。

何をしても楽しくない、何一つ新鮮なことはない、こんなとき遊びに誘ってくれる友田でもいればいいのだが、そんな気の利いた友達も居ない、身の回りには薄情でつまらない奴ばかりだ。


俺はこんなとき、ふと、春に行った尾道の風景を、その中でも特に尾道の向い側の島にある山の上から見た、本州側の景色を思い出す。

まだ解けていない雪、動かなくなりさび付いたロープウェイの残骸を背に、尾道の駅前からこの島を結ぶ駅前汽船

何もかもが完璧な景色に見えた、時代のある寺社仏閣に、銀色じゃない電車、何もかも失ってしまった自分が、それを失う前の景色を見ているようだった。

ここで、あの親ではなくだれか別の夫婦の間に生まれていたら、どんなに楽しい人生を送れたであろう、20になったばかりの俺はそこで人知れずため息をついて、麓で借りたDioに寄りかかったものだ。

こんなこと、もしもここで生まれた俺が、今の俺の実家である新宿や下宿先である川崎の武蔵小杉の景色を見ても、絶対に思わないだろう。


今の俺にはあの親がいて、あの実家があってこの部屋があり、時間の浪費にしかならない大学と人間関係がある。


こういう愚痴を言うと母親はいつも俺にがなり立てる

「そんなに嫌ならどこへでも行けばいいじゃない。」

あんたらさえ居なければこんなことにはならなかったんだ、あんたらからさえ生まれなければ、こんな惨めな人生を送らずに済んだんだ、実家から帰る時、俺と親はいつもそんな口げんかをして別れる。


ここで生まれた自分の姿を思い浮かべることは現実逃避だろうし、ここは景色がよいだけの場所かもしれない、ただ、景色すらよくない場所よりも、景色ぐらいよい場所の方が良いことには変わりない、0か1か選択を迫られれば1を選ぶのは当たり前だろう。


逃げたい、もう俺は精一杯だ。

納得できる物が一つもない現実には1秒たりとも身をゆだねていたくない、今までの過去を全て清算して、どこか別の場所で、別の人間として生きてゆきたい・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ