第二話 『理想に潰れる』
きっと私はどこかで選択を間違えたんだ。こんな事で絶望するなら関わらなければ良かったのに。
きっと貴方は来てしまう。私のシアワセの果てに、強がりの果てに来てしまう。
だから私はこんな世界を創ったのに。
こんなに悲しくなるのならなんで貴方はここにいるの?
私に触れなければ良かったのに、拒絶すれば良かったのに。
どうして貴方は笑っているの?これから消えるのに恐くないの?
寂しい私は問いかける。そして貴方は答えるのだ。
「恐くて恐くてたまらない。でもさ、これで合ってるんだと思うんだ。こんな間違いだらけの最低の選択が、正解に見えてたまらない。だからここで消えれるんだ。強がってばっかりのダメな人間の最期の願い。たった一人の女の子を救うだけの願いに」
貴方はどうして嬉しそうなの?そう問うと彼は笑って
「時間切れだな。そんじゃまた逢おう。絶対だ」
彼は笑って消えていく。
また逢えると信じて消えていく
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「ああぁ……つっかれたぁ……」
俺は家に帰ってきた。愛すべき我が家だ。あーソファふかふかぁ
「お兄さん……そんなに疲れてるなら言ってくれれば良かったのに」
「だよねー。お兄ぃ女の子の前だからって無理してカッコつけなくてもよかったんだよ?」
「うるせー…………ってなんで乃愛はなんでいる!?」
え?マジでなんでいるの?そんな話してたっけ?……そういえば帰りのバスに乗った辺りから記憶が曖昧なんだが……
「やっぱり半分くらい寝てたんだね、お兄さん」
記憶が曖昧だから多分寝てたんだろうなー。うん、見事になんも覚えてねぇや。
「えっとぉ、これはどういう状況で?」
うわ、麻鈴がすっげぇ呆れ顔だ。そして溜め息を吐いた後に両手を腰に当てた。
俺はどれだけ呆れられたんだよ……
「はぁぁぁ、しっかたないから私がお兄ぃにしっっかり状況を教えてあげるね?」
「ありがとうございます麻鈴様ぁ」
「様付けはキモいよお兄ぃ」
それから俺はバスに乗った後の話を聞いた。乗っていたときはいつもより元気だったらしく(多分深夜テンションだ)その場で俺は乃愛を家に誘ったらしい。乃愛は遠慮をしていたらしいが俺がしつこく誘った事で折れて今の状態だ。
フム、これはなんだ……ごめん。心の中でだけ謝っておこう。自分が女の子を家に誘ったという事実が無性に恥ずかしい。
「……というわけでお兄ぃは乃愛ちゃんを家に誘ったロリコンってことになるけどOK?」
「なにもよろしくないからな?後、乃愛は俺から距離をとるな。麻鈴は乃愛を後ろに隠すな」
「……お昼の話から思ってたけどお兄さんって結構アブナイよね……」
……否定できない。
「いやまてちょっと言い訳をさせてくれ二人とも!」
「言い訳っていってる時点でもう……」
「……お兄さん、そこは否定してほしかったよぉ」
否定したかったです。でもやってしまったからどうしようもないな。諦めよう。
「で、言い訳はしないの?聞いてあげないこともないけど」
「ありがとうございます。麻鈴様」
「だから様付けはやめて……」
麻鈴は心底気持ち悪そうに両腕を擦った。鳥肌でもたったんだろう。お兄ちゃんは心が痛みました。
「まぁ、始めに分かってて貰いたいのは俺がロリコンじゃないって事だ」
「信用できないから聞くのやめていい?」
「やめないでください。お願いします。プリン買ってあげますから」
「…………分かった」
それから俺の必死の言い訳は一時間にも及んだ。しかし現実は非情なようで
「……というわけなんだよ……」
「うん、お兄ぃの言い分は分かったよ?でもね……」
「でも?」
「お兄ぃがその女の子を好き過ぎる問題が出てきたんだけど」
は?いやいや、俺があの娘の事が好き過ぎる?ないない。いや、可愛いなぁとも思ってたし遊ぶのも楽しかったけど惚れてはなかったぞ?……多分
「い……」
『たッだいまー!!……て、知らない靴があるぅぅ!?』
俺がもう一度言い訳をしようと口を開こうとした瞬間に部屋の扉が開き呑気な俺達の母親の声が聞こえてきた。
『ちょっと誰よー。家に知らない人呼んだの。まさか……お父さん!?……絞めなきゃ』
あ、まずい。母さんの勘違いが始まった。はやく訂正しないと父さんが絞められる。
「母さん!それ俺の友達のだから!父さん関係ないから!」
『あ、そうなの?もう呼ぶなら呼ぶではやくいってくれないと!』
「ご……ごめん」
な、なんとかなった……あとちょっと遅かったら父さんが絞められてた……
俺が父さんを救えたことに安堵していると、部屋の扉が開いた。
お母様の登場である。
「いやー珍しいわね。幸が友達を連れてくるなんてあの娘以来じゃない?」
「まぁ、そうだね」
「それで?その幸の友達はどこ?」
「え……あぁ……って乃愛?どうした、顔色悪いぞ」
麻鈴の後ろにいる乃愛の顔色は真っ白になっており。少しだけ震えていた。
何故に?
「……あなたね!幸の新しいお友達は!」
母さんが麻鈴の後ろにいる乃愛の手をとってブンブンとふる。
しかし乃愛は気づいていないような感じだ。
「へ……あ、はい……どうも」
……気づいてなかったんかい。というかめっちゃ震えてるじゃん。
「どうした乃愛。なんか変だぞ」
「……別に、なんでもないよ?」
おかしい。絶対おかしい。でも追及したらいけない気がする。
「そ、それじゃあお兄さん。私帰るね!今日は楽しかったよ!」
「へ?は?ちょ……おい!」
乃愛は母さんの手を振り切って走って家から出ていった。
そのときの顔はどこか焦っているように俺には見えた。
「あらら~嫌われちゃったかしら?」
「さぁ?わかんね」
「…………私ちょっと行ってくるね」
「いってらっしゃーい」
「てらてらー……ってどこに?」
俺が行き先を聞いた頃には麻鈴は家から出ていた。
なんなんだ。あいつらに俺なんかしたか?いやいや、なんもしてねぇよ。
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少女は駆ける。夜を駆ける。いつしか出会った少年との再会を知って。
少女は恥ずかしさで走る。自分を見つけてくれた少年との再会を喜び走る。
ただ彼女が少年に抱いた感情はあの日とは別物になっていた。だから少女は恥ずかしがる。自分の間違いを恥じる。
そうして少女は間違える。いつものようにいつかのように間違える。
──少年の為に間違える