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彼女は今日もシアワセに  作者: 楠木黒猫きな粉
第二幕 シアワセになる物語
7/11

第一話 『非日常に浮かぶ』

人はシアワセの内に死ねるのだろうか。どんな富豪でもどんな貧乏でもどんなに不幸せだったとしても死は誰もが恐れているものだ。

けれどシアワセの内に死を臨めたのならそれはどんな結果であれシアワセだったと言えるのだろうか。

胸を張ってその結果をシアワセに死ねたと紹介できるのだろうか。

きっとシアワセの内に死ぬなんて不可能だ。誰もが恐れていたものを笑顔で迎えて満足だと言って死ぬなんて不可能なんだ。

どんな死もどんな生も最期には痛みが残るし未練も残る。何かを思い出して後悔だってする。

そんな死を彼女は望んでいなかった。きっと彼女は痛みと共に死んではいけないのだ。

だから間違った生き方だろう。誰かの望みを押し退けて自分の死を優先するなんて大間違いだ。分かっているからできるんだ。知らないからこそやれるんだ。

そんな間違いを大声で叫んだ。

そうこれは誰かの最後の願いだ。それを否定する最低の願い事だ。

そうして俺は夜空に叫んだ。

さぁ────最高の死を迎えようか!!


────────────────────


「お、重い……」

「ほらほら、お兄ぃはさっさと荷物持って!」


今の状況を説明するなら俺は両手一杯の荷物を持っている。

もっと簡単にいうならば荷物持ちにされてしまった。まさか善意で言った言葉をここまで拡大解釈されるとは思ってなかった。  


『それ、重そうだな。貸してみ、持ってやるから』

『え、ホント?ありがとお兄さん』

『あ、じゃあお兄ぃこれも持って』


それを合図にしたように麻鈴達は俺に荷物を持たせまくった。言っておくが俺は病み上がりで病院を抜け出してきている。流石に三日程度で筋力は落ちないとは思うが体力面は元から無かったような物だ。そのおかげか腕が死ぬまで秒読み状態だ。しかもまだ買い物は続いている。

こんなことになるんだったら遊園地に行くべきだった。

誰だよカッコつけてショッピングでもいくかぁ~なんて言ったやつ。……俺を指差した奴は今すぐ出てきなさい。怒るから。


「ね、ねぇお兄さん。その……腕大丈夫?」


少女が恐る恐る聞いてくる。俺は笑顔でこう答えてやった。


「…大丈夫大丈夫。ほれ、こんなに元気」


無理矢理動かしてやった。痛い。少女は苦笑いをしながら「ちょっと持つよ」と言ってきた。仕方なく少しだけ持たせてやった。

少女はえへへ、と笑い素直じゃないなぁ~と言った。


「俺は素直だよ。バーカ」

「うっそだぁ~」

「お兄ぃが素直なわけないじゃん」


麻鈴にまで否定された。何故だ、俺は麻鈴への好意は素直に伝えてるのに


「あ、そうだ。お兄ぃ!お腹減ったから次はレストランに行こう!」

「お、いいな。んじゃ行くか」

「うん!行こう!行こう!」


俺たちは大量の荷物を持ったままショッピングモールにあるファミレスに行った。

昼時の混む時間だったのか少し料理が出てくるまで時間がかかったが旨かった。お子様ランチを見たときの少女の目がキラキラしていて少し笑ってしまったが


「はぁ……というか女子はなんでこんなに服を買うんだ……謎だ」


俺は麻鈴がお手洗いでいない隙に愚痴をこぼした。


「ねぇねぇ……お兄さん」

「ん?なんだ」


少女が話しかけてくる。なんだよ、さっきまでオレンジジュースを旨そうに飲んでたじゃんか。


「私ね、今日のために『また』世界を変えたの」

「…………なんで?」


そういえばそうだ。今日が始まってから今まで世界は巻き戻っていない。


「だって、楽しい時間が消えるのは悲しいから」


あぁ、死んではいるのか。死ぬことができない世界になったかと思った。


「流石にそんなことまではできないよ。私ができるのは『死んだ瞬間に世界が巻き戻る』ルールを創るだけで人間の体で耐えきれない物を耐えきれるようにするのは無理。まぁ簡単に言っちゃうと直接干渉はできないってこと」

「それじゃあ、若返りは直接干渉じゃないのか?」

「だってそれも世界のルールに加えただけだもん。だから大丈夫」


それじゃあ人間やら生物やらに干渉するのがダメなのか。『世界』のルールってやつから干渉するのはありか。


「ふーん、そういうもんなのか。よくわかんねー」

「私もよくわかんないけどねー」


お前も分からんのかい。


「私にだって分かんないことくらいあるよ。神様じゃないんだから」

「いや、お前…前に自分は神様みたいなものって言ってたじゃん」

「うーん……どう言えばいいんだろ。私は神様みたいな力はあるけどそれしかない、みたいな?」

「あー……なるほど。力があるだけで別に全知全能じゃないのか……」

「そうそう。だから私にも知らないことはいっぱいあるよ?例えば貴方の名前とか」

「そういや教えてなかったな。俺もお前の名前知らんけどね」

「知ってたらビックリするよ。教えてないし」

「そんじゃ、自己紹介でもするか?」

「うん、そうだね。私もお前って呼ばれるのちょっと嫌だしね」 

「んじゃ俺から言うわ」


と、言っても名前以外紹介するものがないな……まぁ言わなくても麻鈴が勝手に言うからいいか 


「俺の名前は幸。女っぽいってよく言われるけど気にすんな」

「いい名前だねーシアワセになりそう」

「ああ、俺も気に入ってる」

「それじゃあ次は私ね!」


なんだ、急にテンションが高くなったな。何があった。


「私は乃愛って言うの!歳は12歳!よろしくね!」


人差し指をほっぺたに当てたりしながら自己紹介をしていた。……可愛い


「お、おう。よろしくな」


若干気圧されたが返事をした。テンションが高いんだがホントにどうした。


「だって挨拶は元気にって言われたから!可愛いポーズはおまけだよ!可愛いかったでしょー」 

「隠すことでもないし言うけどあり得ないくらい可愛かった」

「えっへへー。そうでしょそうでしょ」


というか誰だよ。そのポーズ教えたの。かなり前のポーズだぞ、それ


「んーとねー……むかし遊んでた人が教えてくれたの。『乃愛ちゃんがやったらどんな人でもイチコロ』だって」

「俺を惚れさせたいのかな?乃愛は」

「えっ別に?」


じゃあなんでやったんだよ。謎だわ。いや、出会った頃から謎だったけどさ


「というかその遊んでた人ってどうなったんだ?」 

「えっとね……私が四年生くらいの時に引っ越しちゃったの」


引っ越しか。こいつが四年生ってことは10歳だから二年前か。そういや俺も二年前引っ越したっけ。ということはあの時の女の子はこいつと同い年ってことか。元気にしてるといいな 


「?どうしたの幸お兄さん」 

「うおっ!?……いや、別になんにもないよ。ただ俺も二年前に引っ越ししたなーって思ってさ。引っ越しする前に仲良かった女の子がお前と同じくらいだなって、そんなこと考えてただけ」


ビックリしたぁ。ちょっとボーッとしてたらこいつの顔が目の前にあるからすげぇビビったぁ……


「へぇ~あの時の人がお兄さんだったりして。そんな奇跡そうそうないだろうけどねー」

「……俺はありそうでちょっと怖い」

「え……お兄さんまさか私みたいな歳の娘に可愛いポーズを教えたりしてたの?流石に引くよ?」

「……さ、さぁ記憶にございませんねー」


そこで会話が止まった。乃愛が俺を警戒して話しかけてこなくなったからだ。今思うとなんであんなこと教えたんだろ。俺があの娘にやってほしかったからか。それだったら俺はただの変態じゃねぇか。


「お待たせ~ってなにこの空気。これから楽しいお昼を過ごそうって空気じゃないよ?」


そう言いながら麻鈴が戻ってきたので俺が今になるまでの過程を話すと麻鈴は笑顔で


「お兄ぃ……有罪」 


こう言った。俺の味方はどこにいるのだろうか。 

ちなみにファミレスから次の買い物が終わるまでずっと無視され続けた。俺の心はボロボロだ

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