バーカバーカと笑う声
今回の前書きも一人の少女の話だ。しかしそれは救う少女ではなく『麻鈴』と呼ばれる少女のお話だ。
少女はある少年に恋をした。しかしその恋は叶わない。理由は立場のせいだった。
少女はある時何かが軋む音を聞いた。その日から少女の日常は変わっていった。
少女は世界が戻っているのが分かっていた。その理由は知らないが少女には関係がなかった。兄と居られる日々が増えるのだから。
少女は兄が死を知った。そしてまた世界は戻った。その時に人の死がトリガーなのだと分かった。
少女には記憶があったのだ。戻る前の世界の記憶が全てあった。だから少女は少年とずっと居ようした。守りたかったから死なせたくなかったからだ。
ある時少年が聞いてきた。「死なない世界があったらどうする?」と。その問に少女は答えなかった。答えを知らなかったからだ。
だから少女は明日の約束をした少年に戻り行く世界の中でこう呟いた。
────また明日。どの明日?────
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「……ここ……病院か?」
「そうだよー」
少女の声がした。あの世界を作り替えた少女がいた。
てか、なんでいるの?
「あれ?言ってなかったっけ?死んだら時間が戻る話」
「いや、それは聞いたけど」
俺が聞きたいのはなんで君がここにいるなかってことだ。
「あーそっちかぁ~……まぁ簡単に言うとアナタはまた時間の巻き戻しで気絶して一日たっちゃったの」
「て、事は?今日は何日だ?」
「私言ったよね?また明日って」
確かに彼女は明日もまた来るって言ってたな。
でもだ、なら今は何回目の世界だ?人は一日でかなり死んでいるはずだ。
「そりゃあね人は何人も死んでるよ。でもさその死にも色々あってね。運命的な死と偶発的な死、それと設定された死があるの。でもこの世界で起こる大体の死はね運命的な死と設定された死なの。偶発的な死は本当にたまたま起きた出来事で予測ができないから世界が巻き戻るの。死が起こる前までね」
「でもそれじゃあ防げないじゃないのか?」
「記憶があったら防げるでしょ?」
そこは自己責任なのか……まぁどうせ防げなかったとしてもまた戻るんだろうけど
「それがこの世界の全部だよ。こんな世界だから私はシアワセになれないんだけどねー」
「それこそ自己責任だ……」
彼女のシアワセを叶えられる人は彼女以外にいないだろう。こんな世界を壊せる彼女以外には。
そして彼女は急に手を叩いて思い付いたように声をあげた
「そうだ!!じゃあアナタも手伝ってよ!私のシアワセのお手伝い!!」
「はぁ!?」
何を言ってるんだこの娘!!俺が手伝える事なんてないだろうに!!
「アナタが私に普通の事を教えてくれればいいんだよ!!そしたら私はもっとシアワセに近づくんじゃないかなって思って!!」
「急に何を……」
彼女は目を輝かせ勝手に話を進めていく。俺の意思を無視してだ
「そうだ!!なら明日出掛けようよ!私が見てこなかった物をいっぱい教えて!」
「ちょ、ちょっと待て!流石にそれは俺が捕まるぞ!!」
「大丈夫大丈夫!!なんとかなるって!!」
そうして俺の明日の予定は勝手に決まった。もうどうにでもなれとしか言いようがない。頑張れ明日の俺!!
「それじゃあねお兄さん!!明日のデート楽しみにしてるよー!」
「は?デートって……ちょっと待て話を聞けぇぇ!!」
その声が響く頃には彼女はもう病室から飛び出していた。
デートって……十歳位の女の子つれ回してる時点で捕まる気がするんだが。
なんかどこかでバーカバーカと笑われている気がした。