幕開け 燃える日の玩具たち
唐突な話をしよう。とっくにこの世は終わっている。正しく間違って終わっている。しかし世界は終わっていない。
それはなぜか?終わることが許されなかったからだ。
なら、僕は終わらない世界の話をしよう。
ただ終わらない物語の幕を開けさせよう。
なら、これは前書きだ。物語の幕を開けるために必要な物語を始めに語ろう。
そうこれは彼女の為の始まりだ。
2017年12月3日
『今日も例年通り冷え込む模様───』
「なんだ、今年も寒いのか……嫌だな」
夏にも同じ様な事を言ったような気がする。というかどっちも嫌いなんだけど。やっぱり春が一番だな。花粉症の人には地獄だろうけどな。
「なに?お兄ぃ。私の顔じっくり見て。食べづらいんだけど」
「お前を見てねぇよ。あと十年たって出直して来てくれ」
「やーだ」
はぁ……なんでこいつはこんなんになってしまったんだ……いつ育て方を間違ったんだろう。
「なぁ、麻鈴……どうしてお前はそんな娘になっちゃったんだ……」
「知らないよ。お兄ぃの影響だろうけど」
「はぁ?この完璧な兄の何処にひねくれる要素がある」
「そういうところー」
「え…………」
俺の影響だと……。そんな、俺の教育だと俺の事を大好きになるはずなのに……
「そういえば完璧なお兄ぃ。そろそろ家を出ないと遅刻しちゃうよ?」
「マジで?マジだわ……」
こわー。朝ってまったりしがちだけどここまでくると自分をお爺ちゃんかなぁって勘違いしてくる。
「はぁ嫌だ嫌だ。行きたくない」
「さっさと行けば?」
「あそこは地獄だぞ……習いたくもない異世界言語を習わされるんだ」
「はよ行け」
とりつく島もねぇ。くそぉ!!いきたくなぁぁぁい。
「行ってきます……」
「はい、行ってらっしゃい」
妹には勝てなかったよ……
チクショウ、行くしかないじゃないか。はぁーあ休みたい寝たい。
「ふんふふふーん♪」
誰だあの娘。もう小学生は学校に行かないと間に合わないはずなのに。というかランドセルすら背負っていない。
「…………へぇ」
「なんだよ」
おっとつい聞き返してしまった。まぁ、気になってたから別に良いんだけど
「あれれ~玩具が喋っちゃダメなんだよ~」
「誰が玩具だ」
「……まさか貴方って……頭がおかしな人?」
「何故に!?」
なんだこの娘!?関わっちゃダメなタイプか?
「………………なーんだ、ただの変な人かぁ。なら、立場は分からないよね?だったらわからせてあげる」
「はぁ?」
なにいってるんだ、この娘。こわー
「ひとつ注意してあげる。この橋の先は行かない方がいいよーそれじゃ~」
そう言って少女は走って言ってしまった。
なんだよ橋の先へ行くなって。そんな世界が終わるわけでもない。
「なんだ……あれ」
恐ろしい速度で落ちてくるナニカ。
「隕石?なのか……」
そう言った瞬間、目の前が白く染まった。衝撃波で吹き飛ばされた。
「なんだよ……これ」
次々と落ちていく隕石は一つも外れることなく橋の先の町へ落ちていく。
聞こえるのは耳を壊すような激音だけ。
「……なんだよこれ」
橋の先の町は世界の終わりを迎えていた。見える景色は煙に包まれ何も見えない。
「だから言ったでしょう?立場をわからせるって?」
少女の声が耳に届く。
「貴方達はただの玩具なんだから……私に生かされてるだけの玩具」
「生かされてる……だけ?」
「そう生かされてるの?ペットみたいにね。だから貴方達は私を楽しませなくちゃ。幸せにしなくちゃいけないの。わかるでしょう?」
「なら……これを起こしてるのはお前……なのか?」
「当たり前でしょおにーさん。それに玩具を壊して何がいけないの?」
俺は少女に恐怖した。怖くなった。恐ろしくなった。
彼女は当然のようにいっていたからだ。人は壊して当たり前だと。
そして、この災害を起こしたのは彼女に行動させてしまった俺なのだ。
「ねぇ……おにーさん」
少女が俺の顔を覗き込んでくる。多分いま俺は酷い顔をしていることだろう。
「…………まだ、生きたいよね?」
そう問われた俺は首を縦に振ることしかできなかった。
「なら、生きようね?私のシアワセの為に」
その少女の声を最後に俺の意識は消えた。
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この世界の幕が上がる。その世界は恐ろしくも明るい。ならば救いはないのだろう。この燃え上がる世界はもう終わっているのだから