再現VTR
…妙に寝苦しく寝覚めが悪い。何故だろう?
ああ、そうだ。ついさっき変な夢を見たからだ。
どんな夢だったのか…?記憶がかすれている。
端から思い出してみよう。
…そう、確か最初はテレビを見ていた。
そうだ、テレビだ。番組は確か、怪奇系だった。
アメリカ人の司会者、観客。日本人は一切居なかった。
なぜ、言葉が分かったのだろう?
ま、そこはウダウダ考えても仕方ない。
日本語吹き替えだったのかもしれないし、夢だから言語が統一されているありがちな現象だ。
司会者が「以前、この番組で取り上げた依頼者が謎のVTRを私たちに送り…、他界しました…。」こんな感じで話していた。
そこで以前流したと思われるVTR、依頼者が送ったVTRを並べて放送していた。
全く同じ映像。だけど違和感が…。
司会者の説明が入る。
「左の映像は、以前依頼者が見続けるという夢を再現化したものです。
そして右の映像は依頼者が亡くなる前に送ってきたCGです。」
画面内で赤い扇情的なドレスを着た女性が階段を下りてくる。
見比べると形の無い違和感が広がるばかりだ…。
気持ち悪い…。きもちわるい…。キモチワルイ…。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
ここで目が覚めたんだ…。
今、気がついた。寝巻きが汗でぐっしょり濡れていて気持ち悪い。
目が覚めるきっかけは何だったんだろう?
「ご飯よー!いい加減に降りてきなさい!」
下から母の声が聞こえた。
そうか、夕飯に助けられたんだ。
あの夢を見続けるのも嫌だが、夕飯に助けられる。これが以外で笑いがこみ上げてくる。
本当に安心した…。
「ごめーん!今から降りるー!」
そう叫んでベッドから降りる。少しよろけた。
そんなにキツイ夢だった事を再確認した。
部屋を出て、階段を下りる。
中ごろまで来た時、下のリビングから時計の時報が聞こえた。
聞きなれた曲なのに、甲高く耳障りで鈍い曲になっていた。
直接頭に流されている感じがして、頭が割れそうだ。
思わずよろけ、階段を踏み外し、壁にぶつかった。
曲が鳴り終わった。
下から「大丈夫?」と声が聞こえる。
大丈夫と答えて残りの階段を下りようとしたら、急に眠気が襲ってきた。
…いや、本当に眠気だろうか?気を失いかけたのかもしれない。
階段から落ちた。
目が覚める。灯りがなく、暗い廊下に人の足が見えた。
ああ、母が寝ているんだ。
そう思って痛む体を動かし、リビングの戸をあけようとして動きが凍った。
なぜ、なぜ母がここで寝ているんだ?
階段の灯りで足は四本ある。
四本!?
母の足の隣に二本別の足がある。
こ、これは姉か?
母と姉はピクリとも動かない。
姉の片足はあらぬ方向へ捻じ曲がっている。
怖い、とてつもなく怖い。
感覚がマヒしているのだろう。
「ここで寝たら風邪引くよ?」
震える声で母と姉を揺さぶっていた。
相変わらずリビングからは家族の声がする。
そうだ、助け。父に助けを呼ばないと。
そう思い、戸へ振り返る。
戸の向こうのリビングから母の声がする「凄い音がしたけど、本当に大丈夫?」と。
姉の声も聞こえる。
「どうせ階段を踏み外したんでしょ?」
え?
この声は確かに母と姉だ。
じゃあ、この廊下の二人は?
この母と姉は一体誰だ?
いや、こっちが本物だとするとリビングの二人は誰だ?
どっちが本物でどっちが偽者なんだ?
偽者?偽者って一体なんだ?
本物はどっち?
戸へ足音が近づく。戸に手がかかる音がする。
戸がゆっくりと戸が引かれ―
汗グッショリな状態で目が覚めた。
原因は電気毛布の温度を最高温度に設定してたようだ。
夢でよかった…。