表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最後の図書館  作者: 徳永ダイラ
1/1

目覚めた世界に君はいる、そう信じてる

生命の源を深く吸った肺が、

湿った漆黒の夜空で満たされる。


髪から瞼、

そして頬をつたってゆく雫を拭う事もできず、

飲み込まれてゆく無数の星々をうっすらと開く目で見届けた。


体を放り投げ、最後の力を振り絞り見上げた先にはか細くも、

強い光が世を飲み込もうとしている。


頬を風が撫でる心地よさを最後に噛みしめて、

新たな黎明を待ち焦がれながら長い眠りへと落ちていった。




・・・・


記憶を漁れば出てくる、様々な出来事の断片。


深い眠りの中、辺り一面が根雪に覆われ凍える程の空気を薄い呼吸で肺に満たす。

白銀の世界、足跡さえも見えないほどの猛吹雪。

身震いしながら彷徨う中、出会いは訪れる。


そして、気づかぬうちに季節が廻った。


雷鳴が轟く豪雨、桜の花びらが美しく散ってゆく中永遠と続く林を駆け抜ける。

裸足の小足は泥に覆われ、土を力強く蹴り、運命に思いはせて地へと刻み込んだ。


後方からは喧騒が響き渡り、心臓の鼓動はか細くも虚しさを奏でる。


二度と同じ情景を見ることが無いまま、先の見えない恐怖に耐え続けながら生涯を経たのちに薨去(こうきょ)の運命を辿った。




人が生を受けて息吹く事が許された時、

いずれは儚くなる定めを受ける。


そして朽ちてゆく瀬戸際に回想し、黎明を待ち焦がれながらも長い眠りへと落ちてゆく。


数々の時代を超えて、あの時、あの場所に経験した閃光は奥深く刻まれたたまま、許された者は次の黎明を迎える。



畢竟(ひっきょう)するに、


生まれ消えゆくこの一巡を我々は


輪廻


と呼ぶ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ