目覚めた世界に君はいる、そう信じてる
生命の源を深く吸った肺が、
湿った漆黒の夜空で満たされる。
髪から瞼、
そして頬をつたってゆく雫を拭う事もできず、
飲み込まれてゆく無数の星々をうっすらと開く目で見届けた。
体を放り投げ、最後の力を振り絞り見上げた先にはか細くも、
強い光が世を飲み込もうとしている。
頬を風が撫でる心地よさを最後に噛みしめて、
新たな黎明を待ち焦がれながら長い眠りへと落ちていった。
・・・・
記憶を漁れば出てくる、様々な出来事の断片。
深い眠りの中、辺り一面が根雪に覆われ凍える程の空気を薄い呼吸で肺に満たす。
白銀の世界、足跡さえも見えないほどの猛吹雪。
身震いしながら彷徨う中、出会いは訪れる。
そして、気づかぬうちに季節が廻った。
雷鳴が轟く豪雨、桜の花びらが美しく散ってゆく中永遠と続く林を駆け抜ける。
裸足の小足は泥に覆われ、土を力強く蹴り、運命に思いはせて地へと刻み込んだ。
後方からは喧騒が響き渡り、心臓の鼓動はか細くも虚しさを奏でる。
二度と同じ情景を見ることが無いまま、先の見えない恐怖に耐え続けながら生涯を経たのちに薨去の運命を辿った。
人が生を受けて息吹く事が許された時、
いずれは儚くなる定めを受ける。
そして朽ちてゆく瀬戸際に回想し、黎明を待ち焦がれながらも長い眠りへと落ちてゆく。
数々の時代を超えて、あの時、あの場所に経験した閃光は奥深く刻まれたたまま、許された者は次の黎明を迎える。
畢竟するに、
生まれ消えゆくこの一巡を我々は
輪廻
と呼ぶ。