表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/191


「貴方は?」


「何だアレは」


アシェスは言葉を無視し、フォーザに向き直った。

この場に似付かわしくない、異様な存在に頭をやられたらしい。


「ちょっと…そこのお兄さん?」


「あーなんか一気に冷静になっちまった。なんかよーわからんがオヤジ、つまみ出してこいよ。ここはガキの居ていい場所じゃねぇだろ」


「ちょ…ちょっと!!」


まったく相手にされないのが気に食わないのか、すぐに少女の声色が上がった。


「うーん、なんだか面白そうな展開になりそうだ。しばらく静観させてもらうよ。ククク…」


フォーザは他人事と、からかうようにアシェスに言い放つ。

悪戯を含んだ醜い笑み。


「おいふざけるなよ!オヤジの店だろーが!ふざけたこと言ってるとその髭全部引っ込抜くぞ!」


「いいじゃないか、今は昼だ。酒場フォーザ亭じゃなく料亭なんだからな。それよりもほれ、お譲ちゃんが呼んでる」


フォーザはしっかりと髭をカバーしつつ、アシェスの喚きを無視し、少女の方を顎で示す。

少女はいつのまにかアシェスの背後へと歩み寄っていた。


「ちょっと!聞いてるの?」


「あぁん?うるせぇな。ここはガキの来るような場所じゃねぇんだ。とっとと帰りやがれ」


「な…何よ!私、まだ何も言ってないじゃない!」


「じゃあ俺から言ってやる。俺は用はない、だから失せろ」


「~~ッ!」


取りつく島もないアシェスに、少女は声にならない奇声を発した。

だが突如持っていたトランクをカウンターへと置く。


「見て」


少女がトランクを開くと、そこには眩しい程の紙幣が敷き詰められていた。


「私は護衛出来そうな人を捜しにきたの。お金ならこれくらいあれば大丈夫って聞いてたけど…」


「………」


ざっと見渡して百万セルはあるだろうか。

人一人ならばこれだけで一生遊んで暮らせてしまうような金額。

そんな想像さえしてしまうほどの大金が、今まさにここにあった。

アシェスもフォーザも一瞬で凍り付いたように固まっている。


「こりゃあ…たまげた」


「護衛でこの金額だと?おかしいだろ…」


目眩がしたのかアシェスは頭を抱えた。


「あれ…これじゃ足りないのかな…」


「馬鹿野郎多すぎだ!」


価値観が狂いすぎている少女の物言いに、アシェスは思わず叫んだ。


「そう…なのかな?よく分かんないけど…。で、お兄さんはどうなの?」


「は?」


「だから護衛の話!見たところ貴方にも頼めそうだから、一応…訊いておこうかと思って」


少女はアシェスの脇に携える剣をちらりと見た。

フォーザはそれで悟ったのかアシェスに耳打ちをする。


「おい、すごいじゃないか!まさに神の助けってやつだぞアシェス」


「冗談は止せ」


「馬鹿!あれだけの金があったら、お前さんが嫌いな面倒な仕事もしなくて済むだろうに」


アシェスはそれでも首を横に振った。そして、少女に向き直る。


「悪いが断る。仕事内容がどんなのとか関係ねぇ。俺はそんなに暇じゃねぇんだ」


「な…」


それは少女の言葉ではない。

奥に居るゴロツキたちの驚愕の声。

向こう側に陣取る男たちは、この紙幣の束を見るなり態度を翻したにも関わらず、アシェスは動かなかった。

少女はまさか断られるなど思っていなかったのだろう。あっけにとられたのか、言葉を詰まらせていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ