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22

ジェスターは一通り語り終えたあとようやく席に着いた。


「俺には魔法なんてモンには縁のない人間だからな。お前とは想像が違うかもしれねぇ。けどやはり普通の人間とは明らかに違う構造な存在ってことだな」


「うん、代行者なんて存在は所詮お伽話でしかない。僕だってそんな存在が居るのなら一度会ってみたいよ」


染々語るジェスターの顔は興味津々といった感じだ。

未知の可能性を示す存在は、彼にとって叶う夢の一つといっても差し支えがない。


「でもいきなりなんでそんな話を?それが王宮に呼ばれた理由に繋がるのかな」


「話したいのは山々なんだが、正直口止めされてるような事を、いくら親しいお前にでも話していいのか…」


「無理には問うつもりはないよ。この王国に関わるような余程重要な話だったんだね」


「ああ、俺には荷が重すぎるような話でな…。お前にも気軽に話せねぇようなこと任されちまって参ってんだ」


あっさり追求を止めてくれた親友はさすがだと、アシェスは言葉にこそしなかったが感謝していた。

この話を目の前に居る男に話し、協力を得られるならどれほど心強いだろうか。

だが国王と約束をしたのだ。決して他言無用だと。いくら信用できる親友だからという身勝手な理由で、軽々しく口には出来ない。

これは自分自身だけでやらねばならない。

山積みのように抱えてしまった難題を頭で整理していると、ため息しか出てこなかった。


「何か食べるかい?」


「ああ…でも、こんな状態だった家に食料なんてあるのかよ?」


「大丈夫。保存食を置いてあるから、食材は心配ないよ」


ぬかりなし。

ジェスターの作る食事はお世辞抜きで美味いのだ。

男にしておくのが勿体ないと思えてしまうくらい。

どうせなら食堂でもやればいいのにと、アシェスは何度思ったことだろうか。

一人旅で身につけた各地の味と知識。それは人々の舌を唸らせる素晴らしい技術となっていた。


「頼む」


「よし、じゃあ再会を祝して豪勢に振る舞うとしますか」


腕まくりでジェスターは気合いを見せる。

と、その左腕に巻かれた包帯が目に入った。


「その腕どうしたんだよ?」


「え?あ、これは魔法実験で失敗しちゃってね」


「おいおい」


軽い火傷を負ってしまったのだという。

どんな実験をしてるもんだと、アシェスは苦笑しながらも軽く注意だけ促していた。


「式を創り出すには多少の危険も覚悟しないとね」


まったく危険というものを畏れないその口調は、間違いなく昔のジェスターと変わらない。


「お前のその無茶っぷりも、まるで変わってないんだな」


アシェスは親友の変わらなさに、呆れた様子ながら安堵したように笑っていた。

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