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「本来ならば外部の人間には話すことはできないのですが…貴方は特別な存在です。国王からも許可はいただいているので、お話しましょう」


ディオの顔付きは険しいものにと変わっている。


「この話は他言無用です。もしも漏れた場合、国家すべてを挙げて貴方を排除するものだと覚悟していてください」


きっと脅しではないのだろう。

ディオは空気が変わるような威圧感を押し出す。


「そんな恐ろしい話、無理してまで聞きたくはねぇな」


「この期に及んで…貴方という人を見損ないますよ」


「誰もてめぇなんぞに見込まれたくねぇよ」


思わず鋭い突っ込みを入れる。

だが話を聞かないことには引き下がるような雰囲気ではなかった。

アシェスは折れたように項垂れ、手首を振った。


「…ちっ、続けろよ」


「ええ。で、スフィア様はレイド王…現国王の三女に当たるお方なのです」


「なんとなく予測は出来てはいたが、そういうことか。ならお前らが出張ってきたことには納得はいくな。けどそれが何故機密なんだよ?」


姫が城を抜け出し街を見学に来た。

事実だけ述べればたったそれだけのことに過ぎないのだろう。

しかしあれ程大がかりに捜索が行なわれ、昨日の惨事を引き起こした。

考えてみれば理にかなわず不可思議な話。

だが巻き込まれたアシェスとしてはくだらなさすぎて、不信感しか募らなかったようだ。


「貴方は噂を聞いたことがありませんでしたか?ローウェンスには姿を見せない姫が居る…と」


「噂?あんまそういったことにゃ詳しくはないが…」


記憶を巡らせるかのように額を叩く。

アシェスは滞在している身として、一通り知識は身につけていたつもりだった。


「…そういや、この国の姫とやらは二人しかお披露目をしない、って話は聞いたことがある。それが何か問題なのか?」


「それですよ」


「あん?意味がわかんねぇ」


ディオは順を追うようにして語りだした。


ローウェンス家には三人の姫が居た。

幼少の頃は三人すべてが、民衆の前に普通に姿をお披露目していたはずが、いつしか三女は姿を現わさなくなった。

ある者は亡くなったと噂をし、ある者は病にかかったなどと噂した。

何年も前より、一人だけがすべての人間の前で姿を見せなくなったというのだ。

詳細は現在も語られず。

噂は今でも一部の民衆の間では囁かれており、王宮に勤める人間からも出ているほど。

真相はレイド王とその身近な人間にしか知らされていない。


「私からはここまでしか言えませんが、スフィア様は今その存在を他人の前に現わすことができない状況なのです」


「だからお前らは居なくなったあいつを必死で捜した…。ここまでは俺でも分かる。だが、その真相ってのは何なんだよ」


煮え切らないディオのもの言いに、アシェスは苛立ちを隠さない。

カウンターを指で何度も叩く。


「ですからここまでしか私の口からは言えないのですよ。ここから先はレイド王から聞いてください。貴方を連れてくるよう申し付かっているのです」


「…は?」


(ちょっと待て、国王直々だと?)


国家の王たる者が一介の浮浪者である人間に面会を希望するなど考えられないことだった。

アシェスは驚きを隠そうとはしない。

従来王家というものは一般人からは距離を置くものだ。

ましてやそんな機密の話を、得体の知れない輩に話すなどおかしな話と疑うのは当然である。

問題を解決するために、目の前にいる駒、ディオのような存在が居るわけであり、疑問を抱いて仕方ないものである。

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