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関所前、多くの来訪者たちがここを通って出入りを行なう。

夕暮れ時に門が閉じられ、完全に外界とは遮断される。

故に人影はまったく見当たらなかった。

高く聳え建つ岩でできた壁。外敵から護る城壁。

翼でもなければ安易に越えられるようなものではない。

岩の赤茶けた色が夕日で更に赤く染まる。

そこに浮かぶ二つの影。

対峙する影は未だ動かずにいた。


「なぜ抜かないのですか?」


「だからさっきも言っただろうが。てめぇなんざ素手で十分だ」


「…そんな甘い考えでは死にますよ」


すうっとディオが目を細める。殺気を解放したようなそんな空気を纏う。


「…俺は簡単に剣を抜きたくねぇ。ただそれだけだ」


「偽善ですね。あのときの貴方はすべてを力で滅ぼすような、覇者の眼をしていましたよ」


「うるせぇ、俺はお前のことなんざ知らねぇよ。どうして知ってやがる」


過去の自分を知る人間。

その勿体つけた物言いが勘に触って仕方がない。

アシェスは煮え切らない男の言動に苛立ちを隠せない。


「六年前…裏闘技場のことは覚えてますか?」


「あん?…ああ、そんな所に居たこともあったな」


裏闘技場。

闇の世界の一部とも呼ばれる、賭博を兼ねた戦いの場。一部の道楽者どもが娯楽のために造られた場所。

勿論非合法な場所であり、自警団などに知れてしまえば唯事では済まない。


そこは戦うものに賞金がかけられ、勝者には賃金が与えられる。

腕試しや素人の集まりではない。

主な出場者たちは貧しく、生きるために戦うものたちばかりだった。

勝てば生きるための賃金が得られ、負ければ最悪死ぬこともある。

それだけに己の命を賭けて戦う場なのだ。

金持ちたちの悪趣味極まりない道楽による死の闘技場。彼らはその命を賭けて争う様を見て興奮するというのだ。

六年前、アシェスはそこに居た。強さを得るためと、生きるために。


「そこで私は戦っていました。勿論、死に物狂いでね。あの頃の私は金を得るために必死だった…」


「そうか、ならお前も苦労人なんだな」


「しかし貴方だけには…負けたのですよ。一度も…勝てなかった」


「俺はいちいち対戦した奴のことなんざ覚えてねぇな」


「そうでしょうね。でも、敗者である私は…忘れてはいませんよ」


微塵も悪怯れる事無く言い放つアシェスに対し、ディオは思わず感情的になる。

口調は変わらずとも、声色が明らかに違うのだ。


「はっ、てーと何だ?今更ご丁寧に復讐って訳か?随分ねちっこい野郎だ」


「言葉が悪いですね。ただ私は純粋にもう一度、貴方と手を合わせてみたいだけなのですよ」

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