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「この国は甘すぎるんじゃねぇのか、こんな野郎共までホイホイ招き入れやがって。ちったぁ規制しろよ」
「なんだとコラ。てめぇ…立場分かってんのか?」
「ひょろいガキの癖に舐めた言葉遣いしやがって。死ぬゾ?」
「この人数相手にビビらない度胸だけは認めてやるが、そんなんじゃ早死にするぜ小僧」
アシェスの売り言葉は見事に買われた。
大安売りの叩き売り状態。
次々に男たちは罵声を浴びせる。
「はん、ツラのまんま言動も分かりやすい野郎たちだ。低脳って言葉知ってるか?」
「てめぇ…すぐにでも死にてぇらしいな…」
真っ昼間の公園、先程から人影がなかったのはこの男たちが人払いをしていたのだろう。
アシェスたちが食事をするさまをジロジロ覗き見していたというわけだ。
実に悪趣味極まりないと呼べる行為。
「素直に金さえ渡しゃ見逃してやる気もあったんだが…どうやらそういうわけにはいかねーみてーだなぁ」
全員がじりじりとにじり寄って距離を縮めてくる。
恐いのかスフィアの体がアシェスの背に密着した。
「アシェス…どうするの?このお金、渡したほうが…」
「あん?なんで人語がわからねぇ猿共に餌をやんなきゃならねぇんだよ。いいからお前は黙ってろ」
「てめぇ!!」
わざと煽るようにけしかける。
アシェスはもはや穏便には済むはずはないと先を見据えていたのだろう。
相手との距離感を測り、隙が出来るのを窺っていた。
「めんどくせぇな…ったく、飯食ったばっかだってのに、よ!」
「きゃ!!」
アシェスはスフィアを懐に抱き、目前まで迫る一人めがけて一気に間合いを詰めた。
「うご…!!」
間髪入れず鳩尾に蹴りを入れる。重いブーツの内側には鉄板が仕込まれ、更に表面には金属が装飾されており、ただならぬ衝撃に男はあっさりと崩れ落ちた。
すかさずそこを突破する。
向かった先は公園の奥、森林地帯。
「待ちやがれクソ野郎が!」
林の中をスフィアを抱えながら駆ける。
背後からは殺気の塊のような怒声が耳をつんざく。
反響して喧しいことこの上ない。
しかしあえて無視を決め込みただ走る。
「スフィアお前は下がってろ」
ある程度奥に辿り着いたところで、アシェスは足を止めスフィアを背後へと追いやった。
辺りは一面の緑。
木々が覆い茂り、身動きの取りづらい地形だ。
「はぁはぁ…もう逃がしゃしねぇぞ!!ぶっ殺してやる」
「この程度走ったくらいで息切らしてる分際で、随分威勢のいいこと言うな」
「うがぁぁぁ!!」
まさに野獣の叫び。
正面にずらりと並んだ悪党共の一人が、我を忘れて飛び掛かってきた。
髪の毛がないのは剃っているというわけでなく、主人に嫌気がさして逃げていったのだろう。
そんなくだらないことさえ想像させる。
まるで微動だにしないアシェス。
男は大剣を振りかざす。