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消えた本は見つからなくてもいい
確証はないが、本を持ち出したのは恐らく従兄弟の和夫だ。
彼以外にはまず本をもっていきそうな誰かはいない。
私は昼間のことを思い出した。
母に自転車の鍵を預け、夕立に降られて戻ってきたとき、従兄弟の和夫と友人の早川優子が仲良く談笑していた。
彼は電話嫌いな人間なのだが、いやいやいや、電話嫌いが突然携帯電話を持ちたくなる事だってありそうじゃない。
例えば、誰かに一目惚れして、その人から携帯電話のメールアドレスを貰ったとしたら。とかね。
携帯電話やスマートフォンを買う前に、どんなモノなのかと取扱説明書に目を通しているのだろう。大いにありうる。
私は顔がにやけるのを感じた。じつに、実に微笑ましいではないか。
明日は三連休の最後の休みだ。一緒に電機屋に行ってあげてようじゃないか。大いにからかいながら。