遅い朝の解
先ほど考えている途中で私は自分にヒントを与えていた。
フォークを使って食べる物を思案していて思いついたもの。
それはスパゲティ。フォークは麺類を食べる時によく使う。
更に思考を加えてみよう。七味唐辛子をかける麺類と言えば?
ウドンだ。
そう、このフォークと七味唐辛子はウドンを食べた痕跡だ。
さらに言うのならば、きっとインスタントカップのウドンだと思う。
赤い狐と緑のタヌキ、ウドン権兵衛ソバ権兵衛などの。
フォークと言う食器だけがテーブルの上にあるのに、皿がなかった理由もそれだ。
カップ麺ならプラスチック容器を捨てるだけでいい。その人物はそのまま出かけていったのだろう。流し場に使われた痕跡がないのも納得が行く。
さて、その誰かとは誰だろう。
流しは綺麗に何もない。と言う事はつまり、誰かしらが朝食を食べたあとで皿を洗ったということだ。
仮に父がカップうどんを食べ、片付けずに出かけていったのだとしよう。そのあとでテーブルに座る弟、または母がなぜフォークを一緒に洗わなかったのだろうか。普通ならば一緒にフォークも洗い、テーブルにフォークは残りそうにない。弟が朝食にカップウドンを食べた場合も同じ事が言える。
つまり、真相はこうだ。
父と弟は朝食を食べ、食器を洗った。そのあと起きてきた母は、カップウドンを食べたのち、プラスチック容器だけ捨てて出かけた。それだけ。
分かってみると簡単だなぁ。
そのとき、玄関の外で飼い犬のチッポの鳴き声がした。
「ただいまぁ」
母の声だ。チッポはお客さんにまでか、家族の人間にも吠え立てる。
「あら美代、起きてたの」
そんなに私がこの時間に起きているのが珍しいのか……
「お母さん。朝ご飯にカップウドンたべるのもいいけどさ、テーブルくらい片付けておいてよ」
母は「あら」と口をおさえ、
「朝からそんなの食べないわよ。それ今から使おうと思って。でもカップウドンが無いから買ってきたところよ」
なるほど……たしかに朝からカップウドンは少ししつこいかもしれない。
ああ、寝ぼけてたけど思い出し。私、「なにを食べたのか気になる」と思っていたのに、「フォークの先に付いている食べ物の残りカス」に全く気を払わなかった。
だって、うんだって、そんなものついていないんだもの。
あれは、食べたあとの痕跡ではなく、これから食べようとしていた痕跡だったのね。分かるかちくしょう。
「あなたの分もあるわよ。食べる?」
言いながら母はお湯を沸かしに台所へ入る。
……あの、私はこれが朝ご飯になるし、それにフォークよりも箸派だ。