消えた本は謎になってない
(あれ……? 本がない)
明日になるれば三連休の最終日が来てしまう。ああもうすぐ学校だなんて。
気分は雨だ。……というのはさっきまで。
自室のテーブルの上に、置いてあった本が消えていた。
それだけで私の憂鬱な心は、さあっと晴れ渡る。
あんな本、この家の誰も読みそうにないし、暇つぶしにめくってみようと思うものでもない。
だって、スマートフォンの取扱説明書なのだから。
分厚いし、重いし、なに書いてあるかわからないし、読まなくても使えるし。
かく言う私も読んでない。スマートフォンを買ってから、テーブルの上に放置しっぱなしだったのだ。
すこし部屋の中を探し回ってみたが、どこにもなかった。
今日は母を病院に迎えに行った後突然夕立に降られたり、部屋で本を無くしたり。今日は運がない。
自室に置いてあったとはいえ、ドアの外から手を伸ばせば簡単に持ち出せるような位置に説明書はあった。
持って行こうと思えば簡単に持ち出せるが…… 今この家には私を含め五人の人間がいるが、私以外で携帯電話に興味を示すものはいないはずだ。
暇つぶしにめくるような本でもないし、私が疑問に……いや、全然不思議なんてことはないか。
私は誰が、スマートフォンの説明書を持ち出したのかすぐに思い当たった。そしてその理由も。
さてさて、明日は買い物に出かける準備でもしましょうか。にやにやが止まらないわね。