遅い朝の謎
(七味唐辛子とフォーク・・・?)
とある三連休の一日目。
私は遅い朝を迎えていた。
高校の入学祝いに買ってもらったスマートフォンで確かめるともう十二時半だ。
リビングテーブルの奇妙な組み合わせに、私は寝癖を直しに行くのも忘れて立ち止まる。家族はみんな出かけてしまっているし、昼に誰かが家に来る用事もない。というわけで、髪など気にせず、目の前にある組み合わせに心奪われるままいられる。
五つの椅子のうち、四つの椅子は綺麗にテーブルにしまわれている。しかし七味唐辛子とフォークが置かれた場所の椅子だけが、テーブルから飛び出ていた。ここで食事をした誰かが、慌てて立ち去ってしまったあと、という感じだ。
フォークそのものも、テーブルにきちんと置かれていると言うよりも、何かに使い終わったあとそこに放り出したまま、という置き方である。
台所の流しを見てみたが綺麗で、何も置かれていない。
椅子をしまわずに立ち去った誰かが、七味唐辛子とフォークを同時に何らかの目的に使ったことは明らかだった。こんな些細なことに、いちいち気をかけてしまうのは私の悪い癖だ。十二分に自覚はあるのだけど……気になる物は気になる。仕方ない。
とりあえず検証をしてみた。
まず先にフォークを考えてみる。
フォークを使う料理。ケーキ、ステーキ、スパゲティ・・・・・・とりあえず我家には、ペペロンチーノにさらに七味を加えてしまうくらいの辛党はいない。まったく思い当たらないなぁ。
私は見方を変えて、家族の中で誰がこんな事をやりそうかを考えた。当然、私自身と愛犬チッポは除外して考える。
まずは一番早起きだったと思われる父。今日は知り合いとゴルフに出かけているはずだ。
父の次、もしくは同時に起床したと思われるのが弟。
休日はいつも朝早く中学のバスケット部に出かけていく。学校までは自転車で十分ほどなので、昼ご飯を食べに一旦帰ってきた可能性も高い。
母。看護婦をしているが、今日は休みのはずだ。私と同じく休日は遅起き体質な母だが、そういえば今は家にいない。どこに行ったのだろうか。
ずぼらな弟は食べ終えた食器を洗ったりなどはそうしないはずだ。台所が綺麗という事は誰も食事をしていないか、弟、母の順に昼食が取られ、その後、母が流しの食器類を片付けた、ということだろうか……?
そこまで考えて……私の脳裏に閃くものがあった。
だれが、そして何を食べたのか。
なんてことはない。簡単な事だったのだ。
七味唐辛子とフォーク。そして三人の行動から、その人物が何を食べていったのかは容易に想像がついた。