舞踏会には行きたくないシンデレラと魔法使いの攻防
小説家になろうラジオ大賞の参加作品のため、1,000字以内でさくっと終わります。
「え?」
「ですからご遠慮申し上げます、どうぞお引き取りを」
鼻先で閉まりゆく扉。慌てて足を差し入れた魔法使いに、シンデレラは険のある声をあげた。
「警邏を呼びますよ」
「お城の舞踏会だし、人員はそっちに割かれているんじゃないかなあ」
「それを見越して押しかけたんですか」
「違うって、何度も言うけど僕は魔法使いで、君を舞踏会へ連れて――」
「何度も言いますがお断りします」
「なんで!? すべての女の子が憧れる場所じゃない? 王子の花嫁だよ?」
「勝手に女の意見を総括しないで」
シンデレラは言う。私はインドア派なのだと。
「せっかく義母も義姉も不在なのよ、ゆっくり羽を伸ばせるのに、舞踏会? あんなパリピ会場、御免だわ」
いいから帰ってよと、シンデレラが扉を手前に引く。魔法使いの足もそろそろ限界だ。
「な、なにか他の希望は」
「どうしてそんなに必死なのよ。あ、ノルマがあるんでしょう、大変ねえ」
シンデレラの声に同情が混じった。
「うん、その通りでさあ」
魔法使いはアポなし突が基本。
不思議な力で願いを叶えてくれる彼らは歓迎され、断られることは滅多にない。
願いの持続は日付を超えるまで。永続的ではない。
文句を言われても、ほんのわずかでも夢を見られたでしょうと、流してきた歴史がある。
「詐欺まがいのアコギな商売なんだ。僕だってこんなことしたくない、部屋でカウチポテトしたい」
「あなたもインドア派じゃないの」
扉の力が弱まった。足への圧迫が解放される。
「私、家は出たいけど、パリピ王子の嫁にはなりたくない」
「じゃあ、舞踏会ではなく僕の国へ行くのは?」
魔法使いはシンデレラの手を引いて結界をくぐった。
あっというまに世界を超えて自身の部屋へ。彼女をソファーに座らせてローブを脱ぐ。現れたのは金髪の美青年。
部屋の外に出て何事かを頼む。
ほどなくワイングラスと軽食が並べられた。
乾杯。
シンデレラは初めてのお酒に気持ちがふわふわする。
寝て起きたら消えてしまう泡沫の魔法だとしても、良い思い出になるだろう。
◇
そうして未だ、魔法使いの国で暮らすシンデレラ。
幾つ夜を超えても魔法は消えない。
「だって君に魔法はかけていないし」
「でも家を出たいって願いは叶ってるわ」
「僕が君を連れ出した結果、そうなっただけだね」
隣で笑う青年はこの国の第五王子らしい。
怠惰な末っ子がついに仕事をしたと感謝された。
「僕は王子だけどパリピではないんだ」
「知ってる」
だから結婚するのだ。
魔法使いは普通に自分の家に帰っただけなので、シンデレラに対して魔法はかけていないのです。
日頃から虐げられているシンデレラが、加害者が出席している舞踏会に出かけたいわけがないと思うんですよねえ。
できれば羽を伸ばしたいでしょうし、どうせならこの機会に家から脱出したほうが幸せになれるんじゃないかなーと思って、こんな結末になりました。




