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僕と×××。と香織の物語「特別編 林間学校から始まる×××。」  作者: なお。


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7/16

 髙橋家を後にした僕たちは帰路についた。□□駅で石川草野組と別れた僕たちは電車に乗り自宅の最寄り駅まで帰る。

 改札を出て駅前のロータリに向かうと僕の母の車が見えた。僕たちは母の車で僕の家へと帰った。


 ◇


「ただいまー」


「おかえりー。て、お前の家はあっちやけどな」


 そう言い道路の反対側を指差す僕に「どっちも私の家みたいなもんやん」と香織は言う。そして、当たり前のように僕の家に入っていく。呆れながら僕もその後に続く。

 僕が着替えてリビングに入った頃には香織は既にソファでスマフォを片手に転がっていた。

 僕はキッチンへと入り冷蔵庫から出した麦茶を二つのコップに注ぐとそれを持ってソファに移動する。

 僕は「ほい」と香織にコップを手渡す。そして、僕と香織は麦茶を一気に喉へ流し込んだ。熱く焼けた身体に冷たい麦茶が沁み渡る。


「あぁー、生き返るー」


「大袈裟な。って言いたいとこやけど、生き返るな」


「やろ」と言い笑う香織。ソファで寛ぐ香織と今日の事を頭の中で纏める僕。そして、それを遥陽へとLINUで報告し「今日の仕事完了」っとソファに倒れ込む僕。


「仕事て?」


「遥陽さんへの報告」


「あぁ、それな。ご苦労様です」


「お前忘れてたやろ…」


「イヤ…、ソンナコトハナイデ…」


「目が泳いどるし、誤魔化すの下手くそすぎやろ…」


「いや、その辺はあんたが上手くやってくれるやろ? 私はあんたを信頼してるんや!」


「こういう時だけうまいこと言うてからに。しゃーないなぁ」


「話変わるけどさ、奈美ちゃんもやけど早希とか草野くんは大丈夫なん?」


「わからんのよなぁー。もう髙橋さんからは何も感じんかったから大丈夫やと思う。二人も特に違和感はなかったんやけど、どうなんやろな?」


「はっきりせんなぁ…」


「そら、僕は普通の高校生やで。遥陽さんと一緒にしたらあかんよ」


「そらそやな。感覚麻痺してたわ。そんなんしたら遥陽さんに失礼やな」


「絶妙に僕を貶すのやめぃ」


「で、何が私に失礼なんですか?」


 突然、背後で声がして驚いた僕たちが振り向くとそこには遥陽が立っていた。いつも気配がなく彼には驚かされてばかりだ。


「来るなら来るって言うてくださいよ。びっくりするやないですか」


「いや、お母様には伝えましたよ。もうすぐ着きますと」


 僕が母の方を見ると「言うの忘れてた」と顔の前で両手を合わせて謝罪のポーズをとっていた。僕はため息をいくとソファから立ち上がった。


「で、今日はどうされたんですか? 報告はさっき送りましたよ?」


「はい、ありがとうございました。内容は先程確認しました。今日は別件で寄ったんです」


「別件ですか?」


「はい。この前渡した御守りは香織さんが持っていると聞いていますが、他の方々の分がなかったので用意してきました。御学友のお三方にも渡してあげてください」


「ありがとうございます。僕では大丈夫かどうかとか全然わからんくて困ってたんです」


「あぁ。だから、一緒にすると失礼だと」


「そうそう。て、聞こえてるやないですか!」


「ははははは。すみません、ちょっと揶揄ってみたくなりまして。お詫びにこちらもどうぞ」


 そう言って遥陽は鞄から荷物を取り出しテーブルの上に並べていく。朱い札を二束と白い札を一束。一束が十枚単位で纏まられている。


「こんなに? えぇんですか?」


「はい、構いません。いつも私が一緒にいて守れる訳ではありませんし、念には念を入れましょう」


「ありがとうございます。この白いお札は誰でも使えるんですか?」


 白い札は身を守るものだが僕にはその仕組みがよくわからない。石川さんたちにも渡したいが使えないなら意味がない。

 遥陽はそんな僕の意図をしっかり汲んでくれているようで。


「もちろん使えますよ。私の霊力を付与しておきましたので誰でも使えます。と言っても、肌身離さず持っておくというだけですけどね」


「それで十分です。助かります」


 僕は遥陽に頭を下げて札を受け取ると香織に白い札を二枚渡した。香織はすぐに一枚を制服の内ポケットへと入れ、もう一枚を鞄にしまった。


 遥陽は「また新しい情報や困ったことがあればすぐに連絡して下さい」と言って帰っていった。香織も母親が帰宅したらしく自分の家に帰っていった。

 母はずっと心配そうに僕たちを見ていたが結局何も言わなかった。


 ◇


 この日の夜、時刻「22時22分」。

 石川早希は入浴するために脱衣所にいた。帰宅した彼女は部屋着であるTシャツとスウェットに着替えたいた。

 洗面所でメイクを落とした早希はシャツとズボン、下着を順番に脱ぎ洗濯カゴへ入れる。露わになった彼女の肢体は部活で鍛え上げられており香織とは違った意味で美しい。

 早希は浴室に入り湯船の蓋をあけると軽くシャワーを全身に浴びる。そして、髪の毛、顔、身体を洗い終えると湯船に浸かった。


「ふぅー。今日も色々あったな…。でも、奈美が元気になってホンマによかった…」


 彼女は浴槽の中で大きな伸びをするとそのままお湯につかりながら天井を見上げる。そして、暫くの間そのままぼーっとする。


 トン、トン、トン、トントントントントン…。

 ザァーーーーーーーーーーーーーーーー。


「あれ、雨降ってきた? 予報で雨とか言うてなかった気がするんやけどなぁ。まぁ、その方が涼しなってえぇかもしれんな」


 チカ、チカ…。チカ、チカ…。


「なんや?」


 急に浴室の照明が点滅し始める。遠くにゴロゴロという音が聞こえるので雷が近づいているのかもしれないと早希はそんな風に思った。


 ゴロゴロ、ゴロゴロ…、ドォン!


 轟音と共に消える浴室の照明。「キャッ」と悲鳴をあげた次の瞬間、早希の身体をとてつもない違和感と嫌悪感が襲う。

 暗闇で何も見えないが肌に伝わる感触でそれが何かわかった。

 それは誰もがよく知る感触…、()()()だった…。

 彼女は言葉が出なかった。浴槽の中でただただ恐怖に震える。手のひら、腕、太腿から脹脛、胸から腰に至るまでしゅるしゅるとソレが絡みついてくるのがわかる。

 そして、目が暗闇に慣れ始めた頃、彼女の瞳に()()が映った。

 そこには、「背中まである長い髪の女」がいた。

 早希の意識はそこでなくなった…。


 ◇


 次の日、登校した僕と香織の元に飛び込んできた第一報は石川早希が倒れたというものだった。髙橋さんと草野が僕たちの元に駆け寄る。


「早希が…。これって、まさか」


「かもしれん。断定は出来んけどこのタイミングやでな」


「草野、石川さんは無事なんやんな?」


「そうらしいで。お風呂入ってる時に倒れたらしいわ。特に外傷もないし、変わったところもなかったらしいで」


「そうかぁ。無事でよかったわ…。これ以上はなぁ…」


「せやな」と草野は小さく呟く。香織がそこで思い出したように僕の脇腹を小突く。御守りとお札を出せと言っているようだ。


「髙橋さん、草野。これ持っといて欲しいんや」


「何これ。御守りとお札?」


「そうや。出来れば肌身離さず、常に身につけといて欲しい。お風呂では難しそうやけどな…」


「お風呂て…。ちょっと待ってくれや。もしかして、山田から続いてるこれって、そういう事なんか?」


「そう決まったわけやあらへん。ただ不運が重なってるだけかもしれへんし、そうでないかもしれん。念の為や…」


「嘘…。そんな事あるん…?」


 髙橋さんと草野は信じられない様子で固まっている。普通に生活していれば遭遇するはずのないモノ。経験したことのないモノが眼前に突きつけられている。

 髙橋さんと草野は僕の体質については知らない。だから、余計に信じられないのかもしれない。そこで、香織も口を開く。


「奈美ちゃん、草野くん。信じてやってや。今まで言うてなかったけど、こいつは昔からこういうのに悩まされてきたんや。私はずっとそれをみてきてる。だから…」


 そこで草野は「わかった、信じる」と香織の言葉を遮った。僕たちの真剣な瞳を見て受け入れる事を決めたみたいだ。友を信じるそのまっすぐな心は草野のいいところだと思う。

 髙橋さんも香織が言うので何とか信じてくれた。

 御守りとお札の説明をすると髙橋さんと草野はお礼を伝えて自分の席に戻っていった。

 僕たちは彼らを守ることが出来たと一安心した、のだが…。


 その日の午後、僕たちに告げられたのは残酷な報せだった。


 ◇


 放課後の教室。僕と香織、髙橋さんと草野はそこに集まっていた。それは午後に告げられた報せについて話し合うためだった。

 僕たちは昨日のように石川さんのお見舞いに行こうと計画していたのだが、それは頓挫することとなった。

 石川さんは病院で目を覚ましたが酷い錯乱状態で面会謝絶となってしまったそうだ。

 三人には秘密にしているが彼女は「髪の毛が…」と譫言のように繰り返しているそうだ。


「錯乱状態って何なんやろな…」


「早希、大丈夫なんやろか」


「昨日あんなに助けて貰ったのに、うちは助けにも行けへんやなんて。歯痒すぎるわ…」


 僕は皆んなの不安そうな言葉をただ聞くことしかできなかった。僕が昨日気づいていれば彼女を助けられたかもしれない。悔やんでも悔やみきれなかった。

 そんな僕の心を見透かした香織が僕の瞳を覗き込む。


「あんたのせいちゃうで。一人で抱え込むのやめ。いつもそうやって何でも一人でやるんやから。そんなん、あかんで!」


「そんな事考えてたん? それは違うで。朝に御守りとかもくれたやん。きっと解決するために動いてもくれてるんやろ? それやのに、うちらが責めるはずないやん!」


「そうやで。ぼくらは十分助かってる。友達がどんどん襲われてるってことやろ? ぼくらも黙ってられへんよ。出来ることは協力するで、何でも言うてや!」


「みんな…」


 僕はここまで自分の事を理解してくれたのは香織と母以外では初めてだった。皆んなの熱い想いでじーんと目頭が熱くなる。


「ありがとうな。でも、危ない事は絶対やめよ。僕らではどうすることも出来ん。そこはプロに任せるんや」


「じゃあ、うちらは何もでけへんの?」


「そんな事はないで。情報を集めることが大事なんや。それなら僕らでも出来る。些細な事でも良いんよ。何がきっかけになるかわからんし。情報がこの事件の解決の鍵になるかもしれへんらしいわ」


「そうなんか。それなら、ぼくらでも出来るな」


「そうや。草野は誰それの恋バナとか泉がどうとか、噂話を良く集めてくるやん。あれも大切な情報になってるでな」


「うちもそういうの好きやし、役に立てるかもしれん」


「僕はそういうの苦手やし助かるわ。あと自分の身をしっかり守ることをせなあかん。これが一番大事。どうやら狙われてるんはあの祠が壊れた時にその場にいた僕らみたいやから、しっかり身を守らなあかん。しっかり御守りとお札使てな。万が一が起きて、お札無くなったらすぐに連絡して。新しいの渡すさかいに」


「了解! 何か小説みたいでちょっとわくわくするな」


「草野! わくわくするのは構わへんけど、ちゃんと注意してくれよ。興味本位で大変な事になった人をいっぱい見てきたからな…」


 草野は下を向く僕に「ごめん。ホンマに気ぃつけるわ」と手を合わせた。

 僕も少しきつく言いすぎたことを謝罪し、僕たちはすぐに仲直りした。

 僕たちの今後の方針として、「皆んなで情報を集めて僕が纏めたものを遥陽に報告する」、「危険な事に首は突っ込まない、深追いしない。しっかりと自身の安全を確保する」という二点を決め、その日は解散することとなった。

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