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訳ありパーティーとの出会い

 朝。といっても、野宿明けの朝はあまり清々しくない。背中は痛いし、腹は減るし、川の水は冷たい。


「んー……昨日よりマシか?」


 ぼそっと独り言をこぼしながら、俺は干し肉をかじる。固い。味はまあまあ。いや、嘘だ。まずい。


「どうした、義夫。顔が死んでるぞ」


 ランスが木の上から軽やかに降りてきた。手にはウサギ――じゃなくて、異世界の小動物っぽいやつ。すでに仕留めて血抜きも済んでる。手際がいい。


「朝から狩りかよ……」


「お前がその干し肉に文句言いそうな顔してたからな。あとで炙ってやるよ」


「……惚れるわ」


「やめろ。そういうのは女の子に言ってやれ」


 冗談混じりに笑うと、今度はカリナとミリアも合流してきた。カリナはすでに鎧を装備済み。盾がやたらでかい。


「準備はできてる? 今日から正式にパーティーとして動くわよ」


「正式……って、もう仲間に入れてもらってるの?」


「仮採用。すぐ切るかも」


 ミリアの言葉は相変わらず冷たい。が、それもなんとなく照れ隠しのように聞こえるから不思議だ。


「今日は、まず冒険者ギルドに行くわ。ちゃんと登録して、任務を受けてみましょう」


「ギルド! それっぽい!」


 テンションが上がる俺に、ランスが苦笑する。


「お前、ちょっとは緊張感持て。ギルドってのは、ただの依頼仲介屋じゃない。情報と噂と、時には命の売買もあるんだ」


「それでも、行ってみなきゃわかんないだろ?」


「……そう来たか」


 俺のやってみなきゃわからない精神に、微妙に慣れてきたのか、三人とも呆れた顔をしながらも笑っていた。



 町に着いた俺たちは、ギルドというよりも小さな酒場兼事務所のような建物に入った。受付には、無愛想そうな中年の男が座っている。


「新規登録か?」


「ええ、こいつが新入り。登録を頼むわ」


 カリナが前に出て、説明してくれる。俺は名前と年齢、職業欄には「なし」と記入した。


「職業なし?」


「……一応、剣は振れます。気合で」


 受付の男は鼻を鳴らしたが、それ以上は何も言わなかった。審査や身元調査がないのは、ある意味ありがたい。


「じゃあ、お試し依頼を受けてみな。初級ダンジョンの探索だ。報酬は少ないが、腕前は測れる」


 紙を受け取ると、義夫以外の三人が自然に動き出す。チームの流れができているのがわかる。


 そして、俺もその流れに乗るように歩き出す。


 ギルドの扉が閉まるその瞬間、男のつぶやきが聞こえた。


「……へぇ、あの落ちこぼれ、また拾ったのか」


 誰のことだ? 俺か? それとも――


 まだ何も知らない。ただ、前に進むしかない。


 そして、このチームが、どこか俺と似ている居場所のなさを抱えていることに、俺はまだ気づいていなかった。




 初めてのダンジョンは、見た目ほどファンタジックではなかった。湿っぽい空気と、岩肌の通路。天井からぽたぽたと水滴が落ちている。


「スライム、左。義夫、下がって」


 カリナの指示に即座に反応し、俺は後ろへ回避。ランスがすかさずナイフを投げ、スライムの中心を正確に射抜く。


「命中。お前、意外と動けるな」


「体育の成績は悪くなかったんで」


 冗談めかして返すと、ミリアが淡々と呟く。


「このくらいの敵で手こずるようなら、即帰還よ。まあ、今のところは許容範囲」


「褒められてる……のか?」


「貶してはいない」


 あの人、ほんと評価の仕方が難しい。けど、それが逆に安心材料になっている自分がいた。



 ダンジョン奥に進むと、突如、罠が発動した。


「っ、義夫、止まって!」


 ギリギリで罠にかからず済んだが、前方の床が崩れ、細い穴が開いていた。気づかなければ、下へ真っ逆さまだ。


「この程度の罠なら、普通見抜けるはずだけどな……」


 ランスが眉をひそめる。


「この配置、わざと人が落ちるように誘導してあるわね。しかも複数箇所。これ、模擬じゃない」


「本物の……トラップダンジョンか?」


 カリナが周囲を警戒しながら頷いた。


「ギルドの情報が古いのか、誰かが故意に改造したか……義夫、焦るな。ここからは判断の速さが命よ」


「了解」


 咄嗟の判断。それだけなら負けない。落ちこぼれでも、やれることはある。


「この構造……斜めに進むと、トラップの死角になるかも。ほら、岩の配置がわざとらしい」


「分析力、あるじゃないか」


 ランスが目を見開いた。俺の言った通りに移動すると、案の定、罠は発動しなかった。


「やるわね、義夫」


 ミリアも、ほんの少しだけ頬を緩める。


 その後も、咄嗟の判断で回避した毒矢トラップ、抜け道を見つけて避けた魔物の巣。自分でも驚くほど頭が冴えていた。



 外に出たとき、空はもう夕暮れに染まっていた。


「よくやったわ、義夫……正直、最初はただの足手まといだと思ってた」


 カリナが率直に言ってくれる。


「いや、今もそう思われてると思ってた」


「まあ、半分くらいは」


「ミリア、それ言う?」


 でも、みんな笑っていた。俺も自然と笑った。


 まだ仮採用かもしれない。だけど、今日一日は、誰かと一緒に戦って、生き延びて、役に立てた。


「また一緒に行こうぜ……義夫」


 ランスのその一言が、少しだけ、胸に染みた。


 居場所って、きっとこういうのを言うんだろうな――


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