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番外編 ヴォルガの末娘ジュール

 アイビス商会のヴォルガとキエナの末娘ジュールは、幼いころから祖父母や両親を見て育ったため自然と商売に興味を持っていた。

 長男は新しい商会を立ち上げ、次男はアイビス商会を引き継ぐ予定になっている。


 ジュールは優秀な両親と兄たちを誇りに思い、自分に出来ることを考え、各々の商会の手伝いをしていた。

 いつかは女性目線の自分にしか出来ない商会を立ち上げたいと心に秘めていた。


 自身のため長兄のために最近はミュゲ商会を手伝いにメディウム男爵領のニアンの家に滞在していた。

 ちょうどもう一人の兄のアスベルも仕事の帰りに立ち寄っていたようで、久しぶりに三兄妹が揃うことになる。


 早馬が到着しニアンが外国の客人を連れて屋敷に帰ってくるという報せがあった。屋敷は騒然としていた。

 早馬で帰宅した従者は迎えの馬車を急遽整え途中まで一緒に向かうようだ。


 ジュールはニアンと一緒に帰ってきた外国人たちを見て息をのんだ。

 ダークブラウンの髪に茶色の瞳、四肢は長くて丸太のように太い、背も高く明らかにこの国の人種ではないことがわかった。


 ジュールは彼らの屈強な体に怯んだが、洗練され上品な佇まいと優しい眼差しに怯えていた気持ちが和らいでいった。

 言葉が全く通じなかった彼らに兄が用意してくれていた絵を指差し、手振り身振りで意志疎通を図っていった。

 彼らは理解できるまで何度も話を聞いてくれた。見た目とは違い優しく紳士的な彼らに徐々に好感を持つようになっていった。


 ジュールは優しく接してくれるフォードという男性に心を惹かれ始めた。

 彼らは大柄なため洗濯物の量も多くなり、洗うのも干すのも重労働になった。

 ジュールが各部屋から洗濯物を集めているとフォードはそっと手を添えて洗濯籠を軽々と抱えてくれた。


 ジュールが笑顔で感謝の意を表すとフォードも笑顔で答えてくれた。

 いつの間にかフォードはジュールの側でいつも見守ってくれていた。

 言葉はあまり通じなかったが、ジュールはフォードと一緒にいる時間を快く感じるようになった。


 長兄夫婦が彼ら数人とともにドネシア国に行くことになり、ジュールはフォードとの別れを実感し寂しさを感じていた。いつかは母国に帰ってしまう彼のことを思うと胸が締め付けられるようだった。


 そんなジュールに気がついたのか覚えたてのこの国の言葉で、

「僕はドネシアに帰らない。ジュールといる」

 と、フォードは言ってくれた。

「私もフォードといる」

 ジュールはフォードの目を真っ直ぐに見て答えた。

 フォードはガラス細工に触れるように優しくジュールを抱き締めてくれた。


 ニアンが帰国した後ジュールは思い切ってフォードとのことを打ち明けた。

 ニアンはヴォルガに連絡をとり、ジュールとフォードをドネシア国に連れていくことを提案してくれた。

 ニアンから連絡を受けたヴォルガはドネシア国との取り引きのこともあり、ジュールとフォードとともにドネシア国に行くことを引き受けてくれた。


 フォードはドネシア国ではこの国の侯爵位にあたる身分の子息だった。

 ドネシア国に行くとヴォルガとジュールは手厚くもてなされ、フォードの両親もジュールとの結婚を快諾してくれた。

 フォードは両親を説得し弟に爵位を譲りドネシア国を離れて、一緒に帰国した後ジュールと結婚して、彼女と一緒に小さな商会を立ち上げ働いてくれることになった。


 一年後フォードとジュールはモルラトの街の教会で結婚式を挙げることになった。結婚式にはジュールの家族や親戚など街をあげて大勢の人たちが祝福に訪れた。ドネシア国からもフォードの両親や家族、親戚も訪れ祝福をしてくれた。


 ドネシア国でフォードの両親が用意したお祝いの品々をのせた豪華な馬車は、国境から長い列をつくり最後尾がモルラトの街へ辿り着くまでに数日かかっていた。

 街道の周りの住人は長い馬車の列を目の当たりにして、再び他国からの姫様の輿入れだと噂をしていた。

最後までお読みいただいてありがとうございました。

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