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48 ドネシア国との貿易

 この国の南の隣国にあたるスッド国よりも更に南にある比較的大きな規模の島国がドネシア国である。

 ドネシア国の鳥は色鮮やかな鳥が多く生息しているが、真っ白な鳥の種類はとても少ない。

 孔雀も生息しているが、色鮮やかな類いの鳥だけだった。


 ドネシア国の風習では白い鳥の羽というのは親愛や忠誠などを表す特別な意味を持っていた。

 大きければ大きい程価値があるとされている。


 スコットは王女の専属騎士である。

 第三王女とはいえ王族の一員である彼女に求婚するためには、未来永劫の忠誠と親愛を誓わなければならない。

 第三王女もスコットのことを慕っているらしい。


 ドネシア国に行く準備が整いニアン夫婦とスコットたちは旅立ちの日をむかえた。

 ヴォルガはシエルバ伯爵様経由で、国王様の印を押した旅券をニアンに手渡していた。

 ニアンは少し手が震えた。


 国王様の旅券のお陰でスッド国の入国は積み荷や人員の確認もなくほぼ素通りだった。

 ドネシア国に行く港町で船に乗るために手続きをしていると、スコットたちとはぐれてしまっていたドネシア人たちと再開することが出来た。

 スコットたちは当初十名でスッド国に入国していたようだった。


 はぐれた三人の男たちは酒に酔ってスッド人と喧嘩になり警備隊に捕らえられたようだった。

 彼らのひとりがスコットたちの旅券や地図を預かっていたらしい。釈放を待てなかったスコット始め七人は森の獣道などを通り国を越えたようだった。幸いにも捕らえられていた彼らは旅券を持っていたため釈放も早かったようだ。


 スコットたちに平謝りする仲間三人とともにニアン夫婦もドネシア国行きの船に乗ることになった。

 ドネシア国までは二日間の船旅だった。

 リリアージュは初めて見る海に心が踊った。


 ドネシア国に着きニアンは商人としての血が騒いだ。

 見たことのない竹細工や色鮮やかな織物、繊細な金細工に独特な形の工芸品や宝飾品、果物や野菜などどれをとっても欲しい物ばかりだった。

 リリアージュは図鑑でしか見たことのなかった動物や植物、島の景色に目を輝かせていた。


 スコットは直ぐに白孔雀の扇子を第三王女に献上し王様に結婚の許しを得ることができた。スコットと王女は一年後に婚姻することが決まったようだ。


 弟のアスベルに作ってもらったドネシア語の辞書のようなノートを駆使して、ニアンは母国から持ち込んだ商品を交換したり、金を対価にしてたくさんの商品を手にすることが出来た。

 今後も優先して取引をしてもらえるようだった。


 リリアージュはドネシア国の万能薬だという薬草の種と、家族たちのお土産に色鮮やかな織物や小物、装飾品などをたくさん買うことができた。


 スコット以外のふたりの男たちは無事に家族に会えたことを喜び、家族たちは彼らを助けたニアンに深く感謝をしていた。

 ドネシア国王もニアンたちに感謝の意を表し、特別に王城に宿泊することが許され、食卓には豪華な料理が並び、歌や踊りでもてなされた。


 御礼の品だといって賜った物とニアンが仕入れた物でスッド国行きの船はほぼいっぱいになり、ニアン夫婦の貸切状態になった。


 たくさんのドネシア国の人たちに見送られ船は無事にスッド国に到着した。

 積み荷の多さにスッド国の荷運びの作業員は仰天していた。

 ドネシア国からは荷運びの手伝いとして数人が同行してくれていた。


 ニアンたち一行は1日スッド国に滞在した後、荷馬車や馬を借りて自国の屋敷を目指して馬車を走らせた。

 スッド国からメディウム男爵領の屋敷まで馬車の列が続いた。

 長い馬車の列を見た人々は王族の姫が輿入れされたのではないかと噂していた。


 ♢♢♢


 ミュゲ商会はドネシア国やスッド国を中心とした南国貿易の先駆けとなり、後に巨万の富を得ることになる。

 スッド国からも船で距離があるドネシア国は、今まで北に位置する国々との大きな貿易や観光客などはなかったが、ミュゲ商会との取引で知名度が上がり、貿易や観光業も活発となり外貨を獲得することでより一層豊かな国となっていった。


 ミュゲ商会がほぼ独占的に売り出した宝飾品の中に、南洋真珠と呼ばれる大粒で色や独特の形状の真珠は、各国の王族を中心に貴族の女性たちに愛用されることになった。


 屋敷に帰ると妹のジュールとドネシア人のフォードが仲睦まじく過ごしていた。

 ヴォルガにも認められたふたりは数年後に結婚する予定だ。

 スッド国からの再び長い荷馬車の列がモルラト の街に到着するのは、また別のお話。


 ♢♢♢


 ニアンは日常会話程度ならドネシア語が話せるようになっていた。

 フォードを始めドネシア人の男たちは三人を残して帰国して行った。

 この国に残ってくれたドネシア人はミュゲ商会で護衛や御者として働いてくれることになった。屈強な彼らはこの国の盗賊など相手にならない。丸太のような太い筋肉質の腕や足を見て腰を抜かす者たちはひとりやふたりではない。


 ニアンはドネシア国から仕入れた商品をヴォルガに見せ、宝飾品などの一部の商品を貴族向けにアイビス商会で販売してもらうことになった。


 ヴォルガはドネシア国との貿易に成功したニアンを伴い、シエルバ伯爵様に挨拶に行くことになった。


 シエルバ伯爵邸の応接室に通されると、シエルバ伯爵様と執事、若い男の子ふたりが入ってきた。


 ニアンは今でもシエルバ伯爵を憎んでいる。

 リリアージュを殺したのは奴だ。

 顔を上げて奴の顔を見ると以前より穏やかな顔つきになっていた。


 執事だと思っていた男性はグラス伯爵家の次男ディーノ様で、特別顧問としてシエルバ伯爵様と共同で領地経営をされているようだった。

 シエルバ伯爵様は今後ご結婚される予定はなく、跡取りとなる男の子ふたりを親戚筋から養子に迎えられたそうだ。


 今回ドネシア国に行くことになり、国王様の印まで頂いた経緯にシエルバ伯爵様の助力があった。

 丁寧に御礼を言ったニアンは、金色の南洋真珠を使ったクラバットピンとカフスボタンのセット、金細工の鷹の置物をシエルバ伯爵様に献上した。


 強い憎しみを抱いていたシエルバ伯爵様との話は淡々としていて呆気なく、ただ時間だけが過ぎていった。


 リリアージュとふたりで幸せになれ安心したことで、シエルバ伯爵様への憎しみも徐々に薄らいでいくような気がしていた。

 今世で彼を恨んだところでどうしようもない。猫のアビーではなく今の僕はニアンだ。

 彼は···リリアージュに会ってもいないし今後も会わせない。リリアージュは生きている。


 そして彼女は僕の最愛の妻だ。

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