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47 専属護衛との出会い

 ニアンとリリアージュが結婚してあっという間に一年が過ぎていた。


 ニアンが立ち上げたミュゲ商会は仕事も軌道に乗り売上も順調だった。ふたりは結婚してからも愛情や信頼はより深まり、幸せな新婚生活を送っている。なにより馬車の移動では心強い仲間も増えた。


 ミュゲ商会専属の護衛の彼らとの出会いは、今後の商会の業績の発展に大きく影響を及ぼした。


 ─彼らとの出会いは突然だった─


 ニアンがミュゲ商会の仲間たちと商談からリリアージュの待つ屋敷に帰る途中、人気のなくなった街道で、この国では珍しい大柄で見るからに屈強な男たちに襲われてしまった。

 彼らは薄着なうえ衣服や髪は乱れ、話す言葉も全くわからない。見慣れない衣装の彼らはこの国の者で無いことは明らかだった。


 こちらに危害を与える風ではなく手振り身振りで、食べ物と衣類の要求をしているようだった。盗賊の類いではなく人を傷付けることはしないように思えた。

 ニアンたちは争っても勝ち目のない彼らに抵抗せず、荷馬車に積んでいたなけなしの食糧と衣服や布を分け与えた。

 ニアンはなんとか彼らを誘導し、荷馬車を街道から少し外れた空き地に移動させ従者に野営の準備をさせることにした。


 二頭立ての荷馬車の一頭の馬を離し、もう一人の従者にお金の入った袋を渡し、近くの街まで彼らのために衣類と食糧を買いに行かせた。

 約二時間程で従者は大量の食糧と彼らのサイズに会うような大きな布や衣服、靴などを荷馬車ごと買い付けてきた。

 同時にアイビス商会宛の手紙を託していた

 早ければ数日後にはヴォルガか代理の者がニアンの屋敷を訪ねてくれるだろう。言葉の通じない彼らはニアンだけでは対処できない問題だ。


 彼らの体格から考えて先程渡した食糧では十分にお腹を満たしていないと判断し、ニアンは早速従者とともに火をおこし調理の準備に取りかかった。

 彼らはしばらくニアンたちを見ていたが、手分けして薪を集めたり、水を汲んできたりと調理の手伝いをしてくれた。


 この場所から彼らの足に合わせゆっくりと馬車を進めれば、2日程でニアンの屋敷にたどり着く距離だった。

 リリアージュに宛てた手紙を託した従者を先に屋敷へ帰らせ、同時に彼らを乗せるための馬車の手配を頼んだ。


 なんとか名前の聞き取れたのは、彼らのまとめ役であろうスコットと補佐のフォード。彼ら二人が数名の男たちを統率しており、礼儀正しく馬の扱いがとても上手い。

 彼らはニアンたちに敵意がないとわかると紳士的な態度を示してくれていた。


 一泊は野宿になってしまった。残念ながら屋敷に着くまで言葉は通じなかったが、迎えの馬車と合流し無事に彼らを屋敷へ招くことが出来た。


 ニアンの屋敷に着くとリリアージュ、弟のアスベルと妹のジュールが迎えに出てくれた。


 ニアンは出迎えてくれたリリアージュを見て安堵し、挨拶もそこそこに彼女を抱きしめていた。

「あなた、···お客様を紹介してくださらない?」

「そうだよ兄さん、僕たちのこと見えてる?」

「まぁ···」

 人目もはばからずリリアージュを抱きしめる兄に弟と妹は呆れていた。


「ああ、そうだった。アスベル、ジュールいつも商会を手伝ってくれてありがとう」

 あまり感情のこもっていないニアンの言葉に弟と妹は更に呆れていた。

「紹介といっても彼らとは言葉が通じないんだ。南の隣国スッド国の言葉を使ってもダメなんだ。アスベルどう思う?」


 語学が堪能で博識なアスベルは口元に手を当ててしばらく考えると、

「ドネシアという島国の人かな?」

 すると男たちは「うぉーっ」という声を上げたかと思うと、スコットを始めとし男たちは跪いた。

 ニアンは慌てて男たちに立ち上がるように促した。


 アスベルはあらかじめ彼らと意志疎通が出来るようにと食事を表すものやお風呂、トイレやベッドなどの絵を書いた紙を用意し、屋敷で働く使用人たちに渡していた。

 屋敷の空き部屋は多くないので、彼らには二人で一部屋を使ってもらうことにした。

 大柄な彼らにはベッドの丈が合わず、急遽ベッドを用意して三台分を組み合わせて寝てもらっている。

 彼らはアスベルの用意した紙を利用して、使用人たちと簡単な意志疎通ができるようになり生活に不便はなさそうだった。


 アスベルはシエルバ伯爵領にある図書館へ行き、ドネシア国のことが書かれている本から、日常会話に必要な言語を書き留め帰宅した。

 翌日になると彼らは進んで家の手伝いをしていた。

 庭での力仕事、薪割り、調理の補助、掃除などそれぞれ手分けして使用人たちを助けてくれていた。


 ヴォルガも商談の帰りに屋敷に寄ってくれ、家族で彼らのことを話し合うことになった。


 国が認めた商業ギルドの証明書を持っているヴォルガやニアンが付き添えば、隣国のスッドに出入国することは可能だった。

 彼らがこの国に入国した経路が不明で、体格がよく目立つ存在だ。一度に全員は無理でも二人や三人程度なら、ヴォルガかニアンがスッド国まで同行し、スッド国の港から船で彼らを帰国させることが可能だろう。


 彼らにこの状況を伝えるためドネシア語の習得をアスベルに一任することになった。


 ヴォルガと話し合いニアンはリリアージュを伴って彼らをドネシア国に送って行くことになった。

 先は見えない旅だが初めての夫婦の旅行にニアンとリリアージュは浮き足立っていた。


 彼らには母国に帰る三人を選んでもらうことにした。話し合いにより今回はリーダーのスコットと他二名が選抜された。


 アスベルが覚えたての言語を駆使して彼らがこの国に来た目的を聞いてみると、大きな白い羽を使った扇子を求めるためだった。

 この国やスッド国など近隣国の扇子は殆ど貴婦人用なので、彼らが求める大きさの扇子はなかった。

 リーダーのスコットがドネシア国の王女に求婚するために必要なものらしい。


 ヴォルガは考えを巡らせ、急遽白孔雀の羽で大きな扇子を作らせた。スコットに見せると、彼が望んでいた扇子のようでとても喜んでいた。

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