第1話 「いじめの始まり」
あれは1週間前のこと。
俺、浅山優希(あさやま ゆうき)は、
大好きな一軍女子——"田中美雨(たなか みう)"に放課後の空き教室で告白をした。
のだが、
3秒もしないうちに振られていた。
「.......」
俺は状況が読めなかった。
6年間共に過ごして、家が近所で、最近仲良くて、デートっぽいお出かけも2人きりで何回もしたから、俺は多分告白は成功するだろうと思っていた。
「ごめんなさい。あなたとはお付き合いすることはできないわ」
俺は振られた時の想定をしていなかったためにその場で何もいえずに硬直していた。
俺が気づいた時には美雨はその場にいなかった。
「くっそ....なんでだよ......」
おれはその場で泣き崩れた。
—次の日—
俺は美雨と顔を合わせるのが怖くて学校を休んだ。
親には体調が悪いと嘘を伝えた。
ベッドであのことを思い出して胸が痛くなり、涙を流していると
一通のメールが入った。
それは俺の幼馴染"佐藤杏奈(さとう あんな)"
《体調大丈夫?風邪なんだっけ。早く治るといいね》
涙を枕で拭い、メールを打ち返す。
《大丈夫。寝てたら治るよ》
杏奈とは長い付き合いで、幼稚園、小学校、中学校、高校、とずっと同じクラスである。
彼女は男子に人気ではあるが、顔は大して可愛くはない3軍女子であった。
それから約1週間後。
ようやくけじめがついたので学校に行こうと思った。
あと普通に、親に嘘を貫き通すのが流石に難しくなってきたのでその理由も含めて今日、行こうと思った。
「いってきまーす」
そう言い放ち、学校へと向かった。
—学校—
「おお!優希!復活したかー」
俺の前の席にいる男友達"坂田秋(さかだ しゅう)"は俺の復活を待っていてくれた。
「秋じゃないかー。久しぶり!後で休んでた分のノート見してくれよー」
「おっけー。いま音ゲーやってるから後でなー」
「えー今渡してくれねーの?」
「えなにー?あくっそ!フルコン逃したー」
他愛ない会話をしながら1時間目の授業の準備をする。
それから順調に授業が進んでいき放課後へと突入していた。
放課後、俺はお腹が痛くなったのでトイレにこもっていたら
トイレから出た時にはもうすでにみんな帰っていた。
「俺もさっさと帰るかー」
そう独り言を呟きながら自席へと向かうと、
そこには死ねだのクソだのと机の端から端までびっしりと書かれていた。
自分の机の中に入っていたプリントは全てぐちゃぐちゃにされて破られていた。
「なに...これ....」
何これと言わずとも自分ではわかっていた。
確実にこれはいじめだった。
よく机を見てみると、
『3軍のブサイクが俺の彼女に気安く話しかけんな』と赤のマッキーペンで書かれていた。
それを見た瞬間、すぐに美雨に告白をしたことだとわかった。
俺はとりあえず冷静になるために水筒に残ってるお茶を少し飲む。
その瞬間、かえって頭の中が整理されてしまって状況をしっかりと理解してしまい、その場でお茶を吐いた。
「うええええええぇ」
理解したくなかったけど、理解せざるおえなかった。
俺は徐々に落ち着きを取り戻して、
水に濡らした雑巾で机を拭いて帰った。
—次の日—
俺は休む理由を考える暇もなかったため学校に仕方がなく行くしかなくて、登校した。
秋と話して気分を紛らわそうと思ったのだが、
秋は浮かない顔をして元気がとてもなさそうだった。
「どうかしたの」
と、俺は秋に聞いてみた。
「....その....俺...昨日の放課後見てたんだ......」
それを言われた時勝手に涙が流れてきた。
秋に見られていたのだ。
「あの...その....俺でよければ相談乗るよ?....」
俺はその場に居ても立っても居られなくなって教室を飛び出した。
トイレの個室に急いで駆け込んで声を抑えながらも泣いていた。
涙が止まった時にはすでに1時間目はもう始まっていた。
「送れてすみません。少しトイレに行っておりました。」
といいながら席に座った。
1時間目が終わり10分休みに入ったが、秋は何も言って来なかった。
そのまま時間が過ぎて昼休み。
トイレをすまして教室に入り、先に5時間目の準備をしようと机の中を見た時、謎の白い紙が1枚入っていた。
その紙は四つ折りにされていたので開いてみるとそこには、
『放課後2階の男子トイレの中で待ってる。必ず来い』と書かれていた。
すぐにいじめの主犯格だとわかった。でも、秋が心配をしてくれたと思うようにしたことによってだいぶリラックスできたため、文を読んでも怯えずに、意外と冷静でいられた。
秋に助けを求めようとしたが、朝以来何も喋っていなくて気まずいのでやめた。
—放課後—
言われた通りに男子トイレへと入ると、隣のクラスの"山田龍太郎(やまだ りゅうたろう)"がバケツを持って立っていた。
俺が一歩山田に近づいたその瞬間。
バケツの中に入っていた水のようなものをこちらにかけてきた。
俺は全身びちゃびちゃになった。
「あははははwwwwwお前臭wwwwwwそれトイレの水だよwwwww」
言われた瞬間、悲しみと怒りが込み上げてきたが、これ以上何されるかわかったもんじゃないので抑えた。
「美雨に告白なんかするからこうなるんだwwwwざまぁみやがれw」
山田はそう言ってバケツを俺の顔面に放り投げてそそくさとさっていった。
「俺が....何したって言うんだよ....」
おれは何もできずにそのまま硬直して、濡れたまま帰った。
帰宅後、携帯を開くとメールがきていたことに気づく。
杏奈からだった。
《なんかあった?》
その言葉にうるっときてしまい、思わずいじめられていることを言おうとしたが、杏奈に迷惑をかけるわけにはいかないため、言わなかった。
《なんもないけど、どうしたん?》
《いや、なんか今日浮かない顔してたし、目が腫れてたからなんかあったのかなと》
《深読みしすぎだよwなんもないってー》
おれは疑われないようにメールを送った。
その時家のチャイムが鳴った。
宅配便かなと思いインターホンを見てみると、
そこには秋がいた。
次回「秋の訪問」