表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/120

第92話 ブラン、山を食べる

 エルミナさん、シャーロットさんと別れて早1週間。

 気温も一気に35℃を超えて、猛暑が続いている。

 にも関わらず、寮の部屋にはエアコンが存在しない。

 いや、この世界にエアコンが存在しないが正しい。

 それに加えて、扇風機も無い。


 さっきからずっと汗が止まらないし、ブランがオレの膝の上でうつ伏せになって、バテてるから余計 暑い。


 何度もベッドの上にブランを退かしてはいるけど、吸い寄せられたかのようにオレの膝の上に戻ってくる。

 ただ、暑さからか「キュイ……」と小さく抗議するだけに留まっている。


 ちなみにネメシスは、ルームの中で快適に過ごしている。

 話を聞いた所、ルームの中は常に過ごしやすい環境が整っているとか。

 だから、ブランを入れようと思ったけど、頑なに入ろうとしない。

 この期に及んでまだ入らないのは、いいんだけど、オレの膝の上に居座るのだけはやめて欲しい。


「……キュイ!キュイキュイキュイ!」


 オレの膝の上でバテていたブランが、急に元気を取り戻し、何かを訴えかけてくる。

 どうせろくなことじゃないと思ったけど、一応ネメシスに通訳してもらおうと召喚した。

 ただ、あまりにもブランの言葉が難解過ぎたのか、あのネメシスですら頭を抱えている。


 そういえば、会話に謎の言葉、ブラン語が混ざることがあるって聞いたことあるな。

 きっと、ブラン語で構成された何かをネメシスは聞かされたんだろうな。


 最終的に通訳不可能ということで、ネメシスをルームに戻した。

 このまま、この暑い中 居させるのは申し訳ないし。

 ブランは「キュイ!?」とかなりショックを受けていたけど。


「キュイ……キュイ……」


 目に涙を浮かべ、オレを見てくる。


「ブラン、少しずつ正しい言葉を覚えようね」


「キュイキュイ!」


 自分の要求が通らなかったからか、ジタバタし始めるけど、直ぐに静かになった。

 あまりの暑さにジタバタする気力がどこかへ消えたみたい。


 ……はあ、今だけは元の世界が恋しいな。

 エアコンとは言わないから、せめて扇風機。

 いや、アイスとかかき氷でも……


「あっ!暑いならアイスを食べに行けばいいじゃん!」


「キュイ!?キュイキュイ!!」


 アイスという言葉に反応するブラン。

 さっきまで、ふにゃふにゃ、ペタッとなっていた耳がピン!と真っ直ぐ伸びている。


「あ、もしかして、さっきネメシスにアイス食べたい的なこと言ったの?」


「キュイキュイ」


 コクコクと首を縦に振る。


 その後、上機嫌になったブランを抱きかかえて、アイスが食べられるスイーツのお店が無いか探して、商店通りに来た。

 その一角にある小さな甘味処。

 外に設置されたテントの下に、大きな立て看板が掲げられていた。


『挑戦者求む! 超山盛りかき氷チャレンジ! 制限時間10分で完食できれば無料! 失敗すると……20万ユルド!!』


「……20万って。いや、さすがに高すぎない?」


 思わず看板を二度見すると、看板の右下に小さく10kgと記載されているのが目に入った。

 何も見てない、気づいてない振りして通り過ぎようとしたけど、


「キュイキュイ!キュイ!」


 前肢で看板を指さしながら何か訴えかけてくる。

 いや、聞かなくてもブランが何を言ってるかは理解できる。

 でも、無理なものは無理。

 ここらでブランには、諦めるや我慢するという言葉を覚えさせよう。

 そう心の中で決めた。


「キュイ、キュイ!」


 看板から離れるにつれ、ブランが前肢でオレを叩いてくる。


「ブラン、あれ、10キロだよ。氷だけで10キロ。オマケに制限時間10分って、絶対無理だから。大人しくアイスを食べに行こ?」


「キュイキュイッ!!」


 オレの言葉を無視して、ブランは一目散に受付へと飛び出した。


「あら?随分と可愛い子ね。本当は遊んであげたいけど、お姉さん今ちょっと忙しいからあっち行っててね」


「キュイキュイ!」


「……もしかして、これに参加したいの?」


「キュイ」


「あ、違います。この子の冗談です。すみません、紛らわしくて」


 危うく参加しかけていたブランを回収し、さっさとこの場所を離れようと思ったけど、スルッとブランがオレの腕の中から抜け出し、今度は受付の机の上に着地した。


「キュイキュイ!」


「ああ、やっぱり参加したいのね。お姉さん、大歓迎だよ。おいでおいで」


 今度はブランを回収する間も無く、受付のお姉さんに連れて行かれた。

 完全にブラン(カモ)20万ユルド(ネギ)を背負って来たと思われてそう。


 ……っていうか、オレ今20万ユルドも持ってたかな?

 ……ヤバい。さすがにそんな大金が必要になると思わなかったから、今2万しか持ってない。

 どうしよ……


「可愛い可愛い挑戦者、入ります」


「キュイ!」


 ブランは流されるままに挑戦者として、挑戦台に立つ。

 そして、店員さんが特製の超山盛りかき氷を台車で運んできた。

 透明のガラスボウルにこんもりと盛られた、見た目にも圧倒的な雪山。

 上にはフルーツと練乳が贅沢にトッピングされており、冷気が漂うその山の高さは……遠目でもオレの腰ぐらいはありそう。


 ブランも雰囲気だけは一丁前で、これから強敵と相対するって感じ。

 だけど、早く食べたいという気持ちが全面に出ていて、涎を垂らした顔がそれを完全に台無しにしている。


「それでは、チャレンジ スタート!」


 掛け声と同時に、ブランが勢いよくジャンプし、かき氷の山に頭から突っ込んだ。


 ズザァッ!!


 ブランの口は、まるで掃除機のノズルのようにかき氷をどんどん吸い込んでいく。

 次から次に消える氷山。


「今……開始から2分ちょっと!? 嘘でしょ、もう半分いってるわよこれ……!」


 そして、五分経過する頃には、


「キュイキュイッ!!」


「チャレンジ、成功〜!!」


 見事、10kgのかき氷が空になった。

 フルーツも練乳もすべてペロリ。

 かき氷の山が入っていた器の上でブランが満足気な顔をしている。


 オレはこれ以上 何かが起こらない内にブランを引き取りに向かう。

 しかし、既に遅かった。


「キュイ!」


 今しがた空にした器を何回も肢でペチペチと叩く。

 まるで、何かを催促しているかのよう。


「まさか……おかわり?」


「キュイキュイ!」


 目をキラキラと輝かせ、おかわりをご所望する。

 これには、さすがに店員さんたちもドン引きで、オレに早く引き取ってと言わんばかりの視線を送ってくる。


 ……先にブランをカモだと思って連れてったのそっちでしょ。

 まあ、オレも食べ切れるとは思ってなかったけど。

 しかも、時間内に。



 結局、この日はおかわりを5回ほどした所でお店の在庫が空になり、ブランは渋々オレに抱っこされながら、寮に帰ることとなった。


「キュイキュイ」


 まだまだ食い足りないって感じだな。

 見てるだけで暑さがどこかへ飛んでいったし、こっちはお腹一杯だよ。

 この小さな体のどこにあの量(5回おかわりしてるから50kg)が入ってるのかな。



 翌日、朝 顔をペチペチされてる気がして、目が覚めた。

 角が痛いと涙目で訴えかけてきた次は、顔が真っ青。

 理由は、一つしかないよね。

 今回は、ネメシスを召喚して通訳を頼むことなく、そのまま保健科のカリン先生の所へ連れて行った。

 そして、かき氷を食べ過ぎたことで、お腹を壊したと診断され、ブランは今日一日ゆっくり横になって安静にするよう言われた。

次回、『学園祭に向けて』に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ