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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第89話 スキル作成

 もしかして、エルミナさんにブランさんって"さん"付けで呼ばれて気分が良くなったのかな。

 今までブランは呼び捨てか、"ちゃん"付けでしか呼ばれてないからな。

 ……あ、いや、フォルリオ先生もブランのことは"さん"付けで呼んでたな。

 それなら、いつもの気まぐれか。


「よしよし、大人大人~」


「キュイキュイ~」


 自称大人のお子様はなでなですると頬を緩めて、幸せそうな顔をする。

 とりあえず、これで大人しくしてくれそうだから、このままシャーロットさん、エルミナさん、ネメシスと一緒に交換所の中へ入る。


「いらっしゃい。どんなスキルをお求め……」


 中にいた店員さんらしき人がシャーロットさんとエルミナさんを見て、まるで時が止まったかのように硬直した。

 エルミナさんは学園の研究者で、シャーロットさんが部外者だけど、かなりの有名人だと思われる。

 オレがこの世界の知識に疎いからあれだけど、普通こういうリアクションになるんだろうな。


「え、え、え、エルミナ様!?それに……!!ど、どうして、このような場所に……」


「ああ、スキル無料交換券を使ってオルフェウスくんのモンスター、ネメシスさんに新しくスキルを取得させようと思ってね」


「はあ……」


 店員さんにすごく見られてる。

 もうさ、"何者だこいつ"的な目だよ。

 今になって思うけど、フォルリオ先生ってもしかして、とんでもな凄い人かも。

 今まで担任の先生としか思わなかったけど、エルミナさんみたいな人が学園の研究者として在籍しているわけだし、フォルリオ先生も過去に何か凄い肩書きというか実績を持っててもおかしくないよな。


「遠距離攻撃、もしくは空中にいるモンスターを地上に引きずり下ろす類のスキル一覧を見せて」


「は、はい!少々、お待ちください。直ぐにご用意いたします」


 シャーロットが端的に要求すると、かなり慌てた様子でバックルームらしき場所へ行った。

 すると、秒で本みたいなものを持って戻って来た。


「大変お待たせいたしました。こちらご所望のスキル一覧となっております」


「ありがとう。助かるわ」


 すごいタジタジになりながら、静かに下がっていく。

 それに対して、シャーロットさん、エルミナさんと何一つ気にすることなく、スキル一覧に目を通し始める。


「キュイキュイ」


「主様、ブランも見たいと」


「大人なんだら少しは我慢しようね」


「キューイ〜!!」


 むすーって頬を膨らませてご機嫌斜めになる。


「シャーロットさんとエルミナさんが見終わったら、一緒に見ようね」


「キュイキュイ!!」


「今すぐ見たいと」


 ……ブラン、よくこれで自分のこと大人なんて言えたね。


「オルフェウスくん。スキル一覧、見てもいいわよ」


 エルミナさんが一覧の冊子を軽く持ち上げて、こちらに向けた。


「ありがとうございま――って、ブラン!?勝手に飛びつかない!」


「キュイィィィ!」


 オレの制止も聞かず、ブランはまるで飛び込み台からダイブするみたいにスキル一覧に突っ込んだ。

 結果、冊子は勢いよく床に落ちてページがパラパラと広がった。


「キュイ……キュイ……」


 床にバタン!と落ちた直後、ぴょんとオレの胸元にダイブしてきた。


「うんうん、痛かったよね。よしよし、泣かない泣かない」


 床に落ちた冊子はネメシスが拾って、オレとブランの代わりにエルミナさんに渡してくれた。

 シャーロットさんは、何故か店員さんの方に向かって歩き出していた。


「ねえ、他には無いの?」


「申し訳ございませんが、学園内で取り扱っているスキルでご所望の系統はそれだけです」


「じゃあ、交換じゃなくて作成はできる?」


「え、あ、いや……私の判断ではなんとも……」


「上に確認して」


「承知しました!少々、お待ちください!」


 店員さんは、バタバタと奥のバックルームへ入って行った。


 えっと、シャーロットさん?

 状況はよくわかってないんですけど、態々そこまでしなくていいんじゃ……


「あ、シャーロットの悪い癖が出た。自他問わず、一切妥協しないのよね」


 しばらくすると、店員さんが小走りで戻ってきた。


「上の者から許可が下りました。スキル作成依頼として、特別に対応いたします。ただし、申請用紙への記入と、作成までに数日お時間をいただくことになります」


「それでいいから申請用紙を用意して」


「か、かしこまりました!」


 店員さんが再びバタバタと奥へ下がっていく。


「えっと……スキルって、そんな簡単に作れるものなんですか?」


 ふと、素朴な疑問を口にしたオレに対して、シャーロットさんは少しだけ笑った。


「さすがに無理。そもそもスキルを作るのってかなり大変だし、膨大なお金も必要になる。今回はエルミナの研究費から落とすから、お金は気にしなくて大丈夫」


「え、ちょっと!?私の研究予算を使うなんて聞いてない!」


「うん、今 初めて言ったから当然」


「サラッと言わないでよ!普通、言い出しっぺが出すでしょ」


「普通、持ってる方が出す。どうせ、使い切れないくらい持ってるでしょ?」


「そんなことないよ。私だって、あれやこれやと予算で買おうと思ってたのが山ほど……」


「何買おうと思ってたのか、教えて。納得できたら、ボクさまが出すよ」


「え、えっとね……」


「口から出任せ言ってもダメ。エルミナが研究費を余らせてるのは、ボクさまたちの界隈じゃ有名」


 なんか、すごい話をしてる。

 他人事じゃないってわかってるけど、シャーロットさんたちの界隈ってブリーダーたちの間ってこと?

 っていうか、エルミナさん何をどうしたらそんなことで有名になるの?


「くっ、いつの間にかそんなことまで知れ渡っていたなんて……」


 なんだかんだで結局、スキル作成のお金はエルミナさんの研究費から出ることになった。

 金額のほどは、ブランの純白ブラシ数十個ほど買えるくらいには高い金額が聞こえてきた。

 あれでさえ、高いと思ったのに……


 ちなみに、ブランは耳をペタッとして、何も聞こえてないアピールをしている。

 金額が微かに聞こえてきた辺りからずっとこの調子。

 きっと、ブラシの一件があって、こういうのに敏感になってるんだろうな。

次回、『葬翼』に続く

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