第83話 フォルリオ先生の紹介
いろいろと思うところはあったけど、その後 期末試験があって、それどころじゃなかった。
ただ、ガイドくんに言われた周りの人の事を知らないが頭の片隅にずっと引っ掛かっていた。
結論が出ないまま、期末試験は終わり、結果が出た。
辛うじて、試験は合格。
あまり、試験勉強とかも集中してできなかったから、正直 一安心。
「皆さん、期末試験お疲れ様でした。明日から夏休みになります。実家へ帰省する方、学園に残る方と分かれるでしょうが、ここでの時間の使い方は今後に大きく影響します。悔いを残さないよう過ごして下さい」
最後、フォルリオ先生から一言 話があって、解散となった。
ルナとシエルは実家に帰省するみたいで、夏休みはオレ一人……
「キュイ、キュイ」
ブランと一緒に過ごすことになりそう。
……さすがのシエルも実家にブランを連れ帰ったりしないよね?
シュッ!サッ!
「はぅ、ブランちゃんともしばらく会えない……。ボクがいなくて寂しいと思うけど、我慢するんだよ」
「キュイ」
「あぁ、ブランちゃん、寂しくなったらいつでもボクの所まで遊びに来ていいからね」
「キュイ!」
これでもか、どいうくらいブランをもふもふするシエル。
ルナに話を聞くと、夏休み中はほぼずっと帰省するみたい。
まあ、実家がどこにあるのかわからないけど、馬車とかで移動するわけだからな。
アラナ村から王都に来た時だって、片道1週間。
往復で考えると2週間になる。
夏休みが1ヶ月ちょっとだし、もっと遠いと行って、帰ってで夏休みが終わってそう。
……ブランが迷子になったら困るから、間違ってもシエルの所まで遊びに行かないよう見張っておかないと。
あとでネメシスにも話をして、協力してもらお。
「はいはい、シエル、時間も無いから早く行くよ」
「あぁぁ、ボクのブランちゃん!」
「キュイキュイ〜」
いつの間にかシエルの元から脱出し、オレの膝の上に座って前肢を振ってシエルとルナを見送っているブラン。
未だに前肢を振るというマイブームは健在みたい。
その後、二人が教室の外へ出て、見えなくなった途端に丸くなって、スヤスヤと眠りについた。
気持ち良さそうに寝ているブランを撫でているとフォルリオ先生に声を掛けられた。
「オルフェウスくん、今いいですか?」
「え、あ、はい。大丈夫です」
「ルナさん、シエルさんと実家へ帰省されましたが、オルフェウスくんはこの夏休みをどう過ごすおつもりですか?」
「それが、まだ何も考えてなくて……」
それもこれも、ルナとシエルが帰省する話を昨日聞いたからだ。
オレは今まで通り、三人でダンジョンに挑戦するものだと思ってたけど。
「やはり、そうでしたか。ルナさんとシエルさんの帰省申請がギリギリだったので、声を掛けて正解でしたね」
「えっと、どういうことですか?」
「クラス内トーナメント優勝、クラス対抗戦も全勝。結果だけ見れば文句なしですが、オルフェウスくんはこの結果に満足していますか?」
フォルリオ先生の言う通り、結果は良かったと思う。
ブランとネメシスが一生懸命、勝つ為に頑張ってくれたから。
……でも、もし一回戦でジルさんと戦っていたら。
ジルさんのリベラスもだけど、空を飛べるモンスターが相手だとやれる事は少ない。
一回戦のダブルバトルも、ボルドくんの意表を突いたから勝てただけで、次 戦ったらどうなるかわからない。
「その様子ですと、満足していませんね。理由は、大方の検討はつきます」
「……」
「もっと強くなりたいと思うのでしたら、私からオルフェウスくんの紹介したい人がいます。彼女ならオルフェウスくんが今、抱えている悩みを解決する術を知っていると思います。どうしますか?」
フォルリオ先生の言葉に、自然と背筋が伸びた。
「紹介したい人……ですか?」
「無敗の女王、シャーロットさんのことはご存知ですか?」
「えっと、一応。ブリーダーになってから負け無しの人ですよね?」
「そうです。シャーロットさんが所属するチーム"ボクさまは最強"が現われるまで、彼女のチームが最強と呼ばれていました。私がオルフェウスくんに紹介するのは、かつて最強と呼ばれたチームでリーダーを務めていたブリーダーです」
フォルリオ先生の言葉に、思わず息を呑んだ。
「かつて最強と呼ばれたチームのリーダー……?」
「名前は、エルミナ。今は現役を引退して、研究者として学園で働いていますが、その実力は健在です。得られることは大きいと思いますよ」
「……会ってみたいです。紹介してもらってもいいですか?」
「では明日、朝9時に学園の第七研究塔へ行ってください。私の名前を出せば、エルミナは会ってくれます」
翌朝、フォルリオ先生に言われた通りの時間に第七研究塔に来た。
普段、こっちの研究塔がある方へ近づく用事が無いから初めて来たけど、かなり大きい。
「キュイ~!」
ブランも初めてこんな大きな建物を見るから最初はすごく驚いていた。
……今は、好奇心が勝ったのか、目を輝かせて、今にもオレの腕の中から飛び出そう。
オレは、それを一生懸命なでなでして、食い止めてるとこ。
「キュイキュイ~!」
「ちょっ、ブラン!?」
「キュイ?……キュイ!?」
はしゃぐからブランが腕から滑り落ちそうになったけど、慌てて抱き直すことでなんとか落とさずに済んだ。
ブランも「キュイ」と小さく、ホッとしたかのように鳴いた。
「もう、少しは落ち着いてよね」
「キュイキュイ」
ダンジョンに挑戦する時以外だと、この時間はスヤスヤと寝てるのにな。
何でか、今日に限って目が冴えてるみたいで、元気一杯。
何故だか、シエルの凄さというか、ありがたみを痛感する。
次回、『エルミナ研究室』に続く




