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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第82話 界渡りの英雄

「主様は、どのような経緯でその名前を付けられたのですか?」


「えっと、ルナとシエルに初めて会った時、なんて名乗ればいいかわからなかったから記憶が無いというか名前がわからないって事にしたら、シエルが名前を付けてくれただったかな」


「なるほど。シエル様が……偶然、で済ませて良いのかどうか、迷うところですね」


 ネメシスが何やら考え込んでいる。


 オレもちょっとだけ、今 気になることができた。

 どうして、シエルはオレにオルフェウスって名前を付けたのかな?

 あの時は、確か……かっこいいとかそんな事を言ってた気がするけど。

 ホントにかっこいいと思って付けてくれて、それが偶然にも王族、貴族に伝わっている英雄の名前だった。

 その可能性だってあるけど、いや、そう思いたい。

 でも、何か別の意味があるんじゃ。

 今はそう思える。

 正直、シエルの考えって読めないからな。

 ……ブランの事以外だと。


 貴族であるガイドくんに話を聞くのが先かな?

 とりあえず、ガイドくんの部屋に行ってみるか。


「主様、何が起きるかわかりませんので、私も行きます。基本、ルームの中にいますので、ご迷惑はお掛けしません」


「えっと、それはありがたいけど……」


 ブラン、どうしよ?

 もし、オレがネメシスとガイドくんの部屋に行ってる最中に目を覚ましたら。

 自分だけ置き去りにされたと思って、泣きそう。

 いや、間違いなく号泣コースだな。

 うん、それは他の人の迷惑になるし、起こさないように連れて行くしかないか。


 ブランをそっと抱きしめながら、ネメシスに目配せしてルームへと戻し、ガイドくんの部屋へ向かう。


 ガイドくんはオレと同じC組だから、寮の部屋も同じ階にある。

 確か部屋を出て、右に向かって――あった。

 部屋のネームプレートにガイドって書いてあるし、ここで間違いない。

 ただ一つ問題がある。

 門限は過ぎているし、ガイドくんがもう寝ている可能性もあったけど、扉の下から光が漏れていることに気づいた。


 コンコンコン


 ガイドくんはまだ起きてると思ったから、ドアをノックする。


 ガチャッ


「うん?オルフェウス?どうした、こんな時間に」


「あ、ごめん夜遅くに。今 ちょっといいかな?聞きたいことがあるんだ」


「聞きたいこと?まあ、いいけど。とりあえず、入って」


「あ、ありがとう」


 ガイドくんに言われるがままに部屋へお邪魔させてもらう。


 中に入ると、まず目に入るのは整然とした空間だった。

 部屋の広さは変わらないはずなのに、どこか品の良い静けさが漂っている。

 木目調の床には絨毯が敷かれ、壁際の机にはランプがクラシカルな光を灯している。

 窓辺には観葉植物と、小さなティーセット。

 どれもこれも上品というか、上質さが見ただけで伝わってくる。


「オルフェウス、紅茶でいいか?」


「え、あ、うん。ありがとう」


 ガイドくんは、部屋の中央にある丸机に紅茶を注いだティーセットを置いて、座る。

 オレはその反対側にガイドくんと向かい合う形で座った。

 ブランはオレの膝の上でスヤスヤ夢の世界にいる。


「それで聞きたいことって何だ?わざわざこんな時間に来たんだ。急ぎというか大事なことなんだろ?」


「うん……王族や貴族に伝わる英雄について教えて欲しい」


「……なるほどな」


 オレの問いに、ガイドくんは少しだけ沈黙したあと、静かに口を開いた。


「……オルフェウス。その名は、かつてこの世界に実在したとされる"界渡りの英雄"の一人だ」


「界渡り……?」


「遥か昔、異なる世界、つまり"外の世界"からこの地に現れたとされている」


 オレと同じ世界から来た人……なのかな?

 でも、この世界とは別の世界から来たのは、間違いないよな。


「当時、世界は争いが絶えず、混沌としていた。英雄たちは、人間とモンスターの間を取り持ち、契約を結べるようにし、世界を魔境とアルカディア王国の二つに分かった。争いを好む者は、魔境へ。そうじゃない者はアルカディア王国へ」


 魔境、確かフォルリオ先生のブリーダー基礎学で名前だけ出たな。

 ゲームのエンドコンテンツっぽい場所で、国王に許可をもらったブリーダーしか立ち入ることができない人類不可侵領域だっけ?


「英雄たちはアルカディア王国を作った後、姿を消し、その名は王族、貴族の間でのみ語り継がれている。……一応、言っておくと、オルフェウスが外の世界の人間だってことは気づいてはいた。でも、俺は……ちょっと待て。その話、誰に聞いた?」


「え、F組のジルさんにだけど」


「ジル?オルフェウス、悪いことは言わない。ジル、いや、アルセリア家の人間とは今後、関わるな」


「どういうこと?」


「詳しいことは何も言えない。ただ、一つだけ断言できる。アルセリア家はいずれおまえの敵になる」


 そういえば、ジルさん、できる限りオレの味方になるって。

 "できる限り"って言葉が引っ掛かっていたけど、それっていつか敵になるって意味?

 いやいやいや、そんなわけ……


 オレ、よくよく考えるとジルさんがどういう人かよく知らないな。

 クラス対抗チーム戦の一回戦が終わって、一緒に夕食を食べに行ったくらい。


「まあ、今すぐに俺の話を信じるのは無理だと思う。だけど、一つ言えるのは、オルフェウス、おまえは周りの人間のことを何も知らないってことだ」


 これ以上は何を聞いても、ガイドくんは自分で確かめろの一点張りで何も教えてくれなかった。

 それもあって、オレは寝ているブランを連れて、自分の部屋に戻った。

次回、『フォルリオ先生の紹介』に続く

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