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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第79話 オルフェウスVSザイル

 ミューラさん、強すぎる……

 控えスペースから試合を見てたけど、何が起きているのかさっぱりわからなかった。


「ブラン、約束通り勝った」


 戻って来たミューラさんは、一言だけ告げ、拳をブランに突き出した。

 ネメシスにギュッの仕方を教えてもらったブランは短い肢を伸ばし、ミューラさんの拳に肢をコツンと当てる。


「後は頼んだよ」


「キュイ!」


「うん、任せて」


 ミューラさんの圧倒的な戦いを見せられたら、次も勝って優勝を決めるしかない。

 対戦相手のザイルくんは、クラス対抗チーム戦の1回戦、準優勝と出ていない。

 カナリア先輩がクラス内トーナメントの情報をくれなかったら、未知の相手と戦うとこだったし、感謝しないと。


「それでは、決勝戦 第三試合を始めます!C組、オルフェウスくん。G組、ザイルくんはフィールドへ!」


 カリン先生の声が闘技場に響き渡り、オレとザイルくんは、それぞれ控えスペースからフィールドへと向かった。


 白銀の短髪で、やや長め前髪の隙間から赤い瞳が冷たく鋭くオレを睨み付けてくる。

 細身で長身、立ち姿がリンとしているからか、圧を感じる。


「まさか、出番が回ってくるとは思わなかった。さすがに決勝まで勝ち上がって来ただけある」


 試合開始までに気持ちを落ち着かせようと思っていたら、突然、ザイルくんが話し出した。


「キュイィィィ……!!」


 ブランがザイルくんを威嚇する。

 それだけ、今の言葉は聞き捨てならなかったのだろう。

 正直、オレもあまりいい気はしない。

 褒められてるというより、侮辱されている気がした。


「二人とも準備はいいですか?」


「はい」


 泣いても笑ってもこれが最後の試合。

 ここで勝った方が優勝。

 ミューラさんが繋いでくれたからクラスの代表としてオレはここに立ってる。

 それは、ザイルくんも同じだけど、背負ってるものが違う。

 オレとブランは絶対に負けない!


「オレも大丈夫です!」


「それでは、クラス対抗チーム戦 決勝戦第三試合、始め!」


「狩れ、ヴァルザ」


 赤黒い鎧をまとった騎士。

 長剣を握り、背に破れたような黒翼を持っている。

 全身から重苦しい圧を感じる。


「頼んだよ、ブラン」


「キュイ!」


 何も感じていないのか、オレの腕の中から元気に飛び出るブラン。


 ヴァルザの見た目は、聞いてた通り。

 戦い方はネメシスと少し似てるとこがあって、攻防一体の剣術。

 最初は、様子見で自分からは動かない。

 でも、悠長に時間を使おうと高速斬撃のスキルで自分から仕掛けて、こっちを崩しに来る。

 だから、基本的に速さで翻弄して、ヴァルザのペースでは戦わない。


「ブラン、『ジェットアタック』!」


「キュイ!」


 準決勝で戦えなかった鬱憤でもあるのか、いつもより動きのキレが良く、速い気がする。


「速い……が、動きは直線的。『ヘルブランド』!」


 漆黒の炎を纏った剣が、高速で接近するブランに向け、振り下ろされる。


 っ!?完全に動きが読まれてる!

 このままじゃ……


「キュイ!キューイ!」


 ドゴッ!!!


 しかし、ブランは空中で身体を捻り、タイミングをずらす事で、振り下ろされる剣を足場として、ヴァルザの攻撃を回避しつつ、自分の攻撃は当てる神業を披露した。

 そして、ヴァルザは予期せぬ攻撃に体勢を崩し、地面に膝を突いた。


「そのまま『ソニックホーンブレイカー』!」


「躱せ」


「えっ!?」


 完全に体勢を崩したと思ったけど、あの状態から『ソニックホーンブレイカー』を躱せるのか……!


「『カース・ブロウ』」


 ヴァルザの持つ剣が黒く脈打ち始め、まるで生き物ようにうねる。

 それを何も無い場所でただ振り下ろしただけにも関わらず、衝撃波でブランが大きく吹き飛ばされた。


 ブランは地面を数メートル転がり、「キュイ!」と体勢を立て直そうとするが、その動きはどこか重い。


「『フレイムリープ』」


 ヴァルザの足元に炎が爆ぜ、瞬く間にブランを間合いに捉えた。


「キュイ?」


 勢いそのままに剣を振り上げ、ブランが完全に立て直す前に追撃する。

 しかし、今度はギリギリのタイミングで回避に成功するも、バランスを崩してブランは転倒してしまう。


「キュイィ……」


 おかしい。ブランの動きがいつもと違う。

 ついさっきまで、元気にいつも以上の速さで動き回っていたのに。

 どこか足取りが重そう……ん?重そう?

 もしかして、また太った?

 いや、さすがに試合中、しかも途中から動きが重くなったわけだし、それはない……よね?

 うーん、でも、素早さデバフが付与されてるわけでもないしな。


「まだ、これだけ動けるのか。さすがだな」


 今、微かにだけど、ザイルくんの声が聞こえた。

 あの感じからして、ブランの動きが重いのは、ヴァルザのスキルの影響か。

 素早さデバフ以外にも、動きに影響を与える類いの何かがあるのか。

 カナリア先輩情報には無かったよな。

 そうなると、この試合中に打開策を見出さないといけない。

 

 だけど、ザイルくんはこっちが打開策を思いつくまで待ってくれるわけない。

 ……上手くいくか、一か八かの賭けになるけど、ブランを信じるしかないか。


「ブラン、焦らずに我慢できる?」


「キュイ!」プイ


 そこ、そんな堂々と首を横に振るとこ?

 少しは頑張る的な素振りは無いのね。


「頑張った子には後でご褒美あげるけど……」


「キュイキュイ!!」コクコク


 ご褒美で簡単に釣れた。

 さすがブラン。安定のチョロさ。


「ヴァルザ、『ドゥームスティング』」


 剣先の一点に漆黒の炎が集中する。

 その構えは、明らかな突きによる攻撃。


「ブラン、突きが来るよ!」


「キュイ!」


 さすがのあの構えで突きじゃないってことは無いよね?

 もし、そうだとしても対応するしかないけど。


 ヴァルザの足元に黒い稲妻のような閃光が走り、猛烈な勢いでブラン目掛け、突きを放つ。


「ブラン、突っ込んで!」


「キュイ!!」


 それと同時にブランが正面からヴァルザに向かって駆け出したが、その足取りは重い。


「何かあるのか?……そのまま行け、ヴァルザ!」


 ヴァルザの剣先が徐々にブランへと近づいていく。

 その距離は1メートルを切り、今にも当たりそう。


「今だ、『ジェットペック』!全力で駆け抜けろ!」


「キューイ!!」


 このタイミングなら攻撃の軌道を変えることはできない。

 そう確信を持てるとこで『ジェットペック』の素早さブーストを利用した股抜きに成功した。


「ブラン、反転して『ジェット・ブレイクスルー』!」


 ズドッ!!


 振り返ろうとするヴァルザの横腹にブランの攻撃が突き刺さった。

 それにより、バランスを崩し、後退りした。


「これで決める!『ホーンラッシュバースト』!!」


「させるか。『アビスブリンガー』!!」


 後退りしつつもスキルを発動させ、ヴァルザの剣が赤黒い炎と闇の渦に包まれ、周囲の空気が歪んだ。


 シュバッ!


 直後、まだ体勢を立て直せていないにも関わらず、ヴァルザは一瞬にしてブランの背後へと移動した。

 そのまま振り返りざまに一閃。


 ギャリィッ!!


「はぁっ!?」


 え、何その神業……

 ザイルくんが驚きの声を上げる気持ちがすごいわかる。


 スキルの効果だと思うけど、一瞬で背後に回られて、終わったと思ったら後ろ肢でヴァルザの剣を弾き蹴った。

 しかも、それを利用して空中で一回転し、ヴァルザの上を取った。


「キュイキュイ!!」


 そのまま、重力に身を任せ、ブランは前肢と角を使った連続攻撃。

 蹴り飛ばされたにも関わらず、すぐさま体勢を整え、ブランの連続攻撃を剣で捌こうとする。

 しかし、数回ほど捌いたところでブランの角に剣を弾き飛ばされる。

 その後、ヴァルザのHPは一気に0まで削られた。


 フィールドには、一仕事終えた感を醸し出しているブランだけが残った。


「勝負あり!クラス対抗チーム戦 決勝戦、2勝1敗でC組の勝利とします!!」


 応援席から大歓声が湧き上がり、控えスペースのミューラさんやカレンさんがブランに駆け寄ろうとしていたけど、風切り音と同時にブランが消えたことで苦笑いを浮かべていた。


 ザイルくんは無言のまま、それでもどこか晴れやかな表情でヴァルザのクリスタルを拾っていた。


「……勝ったんだよね。よかった~」

次回、『ジルの誘い』に続く

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