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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第78話 ミューラVSカティア

 涙を流しながら一人黙って戻って来た。


 カレンさん……


 何一つ声を掛けられない。


 でも、あの涙を見たら負けられない!と思った。

 ブランもくつろぎモードから一転して、「キュイ!」とやる気モードになってる。

 今にもオレの腕の中から飛び出て、フィールドに向かいそうなほどに。


「ブランの出番はこの後」


「キュイ!キュイキュイ!」


「大丈夫。ミューラとニューは負けないから」


 そう言ってミューラさんは、ブランに向かって拳を突き出した。


「キュ……キュイ……?」


 しかし、ブランはどう応えたらいいのかわからないでいる。

 それを見かねたネメシスが教えてくれた。


「ブラン、こうやってギュッとして、突き出すのですよ」


「キュイ!キュイ」


 ネメシスのおかげで前肢をギュッとすることができ、そのままミューラさんの拳と突き合わせる。


「第二試合、出場者はフィールドへ!」


「それじゃあ、勝《行》ってくる。……カレン、想いは必ず繋ぐから」



 ◆◇◆◇


 G組の控えスペースからフィールドに現れたのは、カティア。

 腰まで伸びた銀白の長髪は、かなり低い位置でまとめられている。

 灰色の瞳は冷たく澄んでいて、次勝てば優勝という大一番にも関わらず、表情には一切出ていない。


 ミューラもまた、ここで負けたらC組優勝者のオルフェウスの出番無くして、敗北が決まるが、緊張している素振りは無い。


 まだ試合は始まっていないが、二人の間には張り詰めた空気が漂っている。

 審判のカリン先生が思わず、息を飲むほどに。


「二人とも準備はいいですか?」


「うん、ミューラは大丈夫」


「私も大丈夫です」


「それでは、クラス対抗チーム戦 決勝戦第二試合、始め!」


「侵せ、ヴェルグレイド。護れ、ルミアリエル」


 漆黒と暗紫のまだら模様の鱗を持つ全長5メートルを超える巨大な蛇。

 頭部には角のような骨の突起が二本あり、尾の先端には大きく発達した毒腺と鋭い毒針を持つのが、ヴェルグレイド。


 白金色の甲冑風装飾をまとい、全身が柔らかな光に包まれており、黄金の仮面で顔を隠している六枚の大きな光翼を持つ天使。

 フィールドにいるだけで周囲に静かな神聖さと圧を与える存在感を放っているルミアリエル。


「ニュー、ヒュー、お願い。この試合、本気で勝ちに行くよ」


 対するミューラの放った一言、"この試合、本気で勝ちに行くよ"。

 この言葉を聞いたニューとヒューが驚愕の表情を浮かべた。

 だが、その直後、絶対に負けることはない。

 その自信で満ち溢れているような表情へと変貌した。


「ヴェルグレイド、『ネクロフィールド』。ルミアリエル、『サンクチュアリ・ドーム』!」


 地面から毒の蒸気が立ちのぼり、フィールド全体が鈍い紫に染まる。

 それと同時に、大きな光の紋章が地面に浮かび上がり、光の結界が展開される。

 こうして、禍々しさと神々しさを兼ね備えたフィールドへが一瞬にして爆誕した。


「ニュー、『焔翼顕現』で飛んで。そしたら猛毒は付与されない」


「えっ!?うそ、ありえない……!こんな一瞬で……」


 カティアは試合開始早々、ポーカーフェイスが崩れ、驚きを隠せないでいた。


『ネクロフィールド』と『サンクチュアリ・ドーム』は相反するフィールド。

 それ故に『ネクロフィールド』単体なら空中にいるモンスターにも猛毒を付与できるが、同時発動するとそれができなくなる。

 その為、地面に触れているヒューには猛毒を付与できたが、空中へ逃れたニューには付与できなかった。


 これまで、クラス内トーナメント、クラス対抗チーム戦のどちらでも、この弱点を露呈させていない。

 カティアは少なくとも、そう考えていた。

 だが、ミューラの対応の早さから、試合開始前から気づかれていたに違いない。

 どうして気づかれたのかがわからず、カティアの思考が乱れた。


 対するミューラは作戦通り、ヴェルグレイドを完全に無視して、ルミアリエルを速攻で倒すべくニューを突っ込ませていた。


「ヒュー、『踊り子の舞』『一撃必殺』『魔法拡散』『炎纏の舞』『熾炎の加護』『炎撃連動ブレイズリンク』。ニュー、『フレイムブレス』!」


 使えるスキルは全部発動し、盛れるだけ盛った。

 通常時の倍以上の威力、攻撃範囲となったニューの『フレイムブレス』が空中にいるルミアリエルごとヴェルグレイドまでも飲み込んだ。


「……っ!ルミアリエル、『聖翼讃歌セラフ・オラトリオ』!」


 六枚の光翼が大きく広がり、光の波がフィールド全体に伝播する。

 すると、ルミアリエルとヴェルグレイドが光に包まれ、HPが徐々に回復していく。


「ヴェルグレイド、ヒューに向かって『ポイズンリープ』!」


 尾を大きくしならせてから地面に叩きつけ、その反動を利用して跳躍する。

 そこから毒霧を散らすように尾を打ち下ろす。


「ヒュー、動かないで。ニュー、ルミアリエルの上を取って。……そこから『熾烈気拳』で落として」


 ドガァッ!!ズガァァァン!!


聖翼讃歌セラフ・オラトリオ』を発動した瞬間に生じた一瞬の隙。

 そこを突いて、ニューはルミアリエルの上を取り、地面へと殴り飛ばした。

 そして、跳躍から尾を叩きつけようとしていたヴェルグレイドと空中で衝突し、2体仲良く、地面に衝突した。


「『業火奔流』!」


 息つく間もなく、フィールド全体が灼熱の業火に晒される。

 どれだけ強力な回復スキルを使用していても、圧倒的高火力の前には無意味。


「まず1体。ニュー、『紅蓮脚撃』!」


 急降下による超加速を加え、灼熱の炎を纏った蹴りの威力は凄まじく、ルミアリエルと地面との間にヴェルグレイドがいたにも関わらず、地面が大きく割れた。

 ルミアリエルのHPは一気に0になった。

 そして、『サンクチュアリ・ドーム』はフィールド上から消滅した。


「うそ……。何が起きてるの……?」


「『ファイアボール』『フレイムランス』」


 火球と火槍がゼロ距離でヴェルグレイドに炸裂。

 容赦のない追撃が決まった。


「……まだ。ニューさえ倒せば。ヒューに攻撃スキルはない。まだ勝てる。ヴェルグレイド、『ネクロトキシン・バースト』!!これでニューを……」


「ヒュー、ニューの前に。ニューはヒューを盾にして『フレイムナックル』!」


 ヴェルグレイドの毒腺が赤黒く脈打ち、全身の毒が爆ぜるが、ピンポイントでニューに降り注ぐ筈だった毒液をヒューが盾になって受けた。

 これにより、ヒューのHPは秒で溶けたが、ニューがノーダメージで残った。


 炎を纏った拳がヴェルグレイドのHPを削り切った。


「勝負あり!勝者、C組 ミューラさん!」

次回、『オルフェウスVSザイル』に続く

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