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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第75話 ルナ?

「はい、お待たせ。蜜蓮玉包みつれんぎょくパオ……」


「キュイ!!」


 透明感のある薄皮に包まれた小ぶりの包子パオズが、蓮の葉の上に美しく並べられている。

 皮の中には琥珀色のとろりとした蜜が透けて見え、冷気を纏ったような。

 どこからどう見てもスイーツだ。

 それに、桃と蜜の香りが混じったような甘い芳香がふんわりと漂っている。


 角の痛みがどこかへいったのか、「キュイキュイ!!」とテンションが爆上がりのブラン。

 自分じゃスプーンを持って、食べられないから早く、早くとオレを見つめてくる。


「これが焔雲刀削麺えんうんとうしょうめん


「ありがとうございます」


 刀削麺らしい平たく太めの麺が、透明な冷たいスープに浸っており、上には焦がし赤唐辛子とフライドガーリック、細切りの肉がトッピングされている。

 スープには、氷片が浮かび、冷気が立ち上っている。


「次に星火蒸籠包せいかせいろパオ星燐炒飯せいりんチャーハン


「ありがとう」


 星火蒸籠包は、蒸籠の中で湯気を立てる小ぶりな包子。

 上部に星形の焼き印が押されており、表面にかかるオレンジ色のソースが、ほんのりとピリ辛具合を伝えてくる。


 星燐炒飯の炒められた米は、ほのかに銀青色の光沢を帯びている。

 透き通るような琥珀色のエビ、焦げ目のついた金糸瓜などが盛られていて、こんな炒飯、見たことない。


「最後に獄炎石鍋飯ごくえんいしなべはん


「ありがとう。待ってたで」


 黒曜石のような重厚な石鍋に盛られた赤黒いお米が、ぐつぐつと音を立てながら煮え立っている。

 表面には唐辛子かな?

 それがいくつも刺さっており、湯気ですら目にしみそうなレベル。


「「「いただきます」」」


「キュイキュイ」


 ブランが忙しないから先に食べさせてあげるか。


「はい、あーん」


「キューイ……キュイ〜!」


 前肢で頬を触りながら身体をクネクネさせるブラン。

 見てるだけで美味しいと伝わってくる。

 顔もすごく幸せそう。


 余韻に浸ってるし、オレも自分で注文した焔雲刀削麺を食べよ。


「……うまっ!」


 ただ辛いだけじゃなくて深みがある。

 ……これ、スープだけでご飯いけるかも。


 あまりにも美味しすぎて気づいたら食べ終わっていた。


「キュイキュイ〜」


 あ、ブランに食べさせてあげるの忘れてた!

 ……ん?でも、今 満足気な声が聞こえてきたぞ。


 ブランの方を見ると、口元がベタベタになっていて、机の上には無造作にスプーンが放置されていた。


 スプーンはお皿の上に置いた筈。

 それに汚れた口元。

 うん、スプーンを持って自分で食べようと頑張ったけど、無理だったから放置して、かぶりついたな。


「ブラン、こっちおいで」


「キュイ?」


「お口拭いてあげるから」


「キュイキュイ」


 よしよし、いい子いい子。

 手のかかる子なんだから。


 その後、お金を支払ってミューラさん、カレンさんとは解散した。


 それから部屋にブランを連れて戻ったけど、シエルの姿はどこにも見えなかった。


 特にやる事無いし、ブランは部屋に戻ると直ぐに寝ちゃったし、オレも寝ようかなと思ったけど、ネメシスに聞きたいことがあったのを思い出した。

 その為、ネメシスを召喚する。


「主様、どうかされました?」


「聞きたいことあるんだけど、いいかな?」


「はい」


「ブランが精神的に幼いって話を前はしたけど、実際、どのくらい幼いの?」


「そうですね……人間の感覚で言うと、ようやく2歳児くらいでしょうか。けれど、思考はまだまだ直感寄りです」


 え、そんなに幼いの?

 もうちょっと、4、5歳くらいはあると思ってた。


「最近になって、ようやく自分の名前を呼べるようになりました」


 ……もしかして、最近、ブランって言葉に反応するのはそれが理由?

 あれ?ていうか、ブランって2文字までしか名前を覚えられないんじゃ。

 いや、最近ってネメシスが言ってるし、成長したのかな?


「そっか。ネメシスからすると、順調に成長してる感じかな?」


「……いえ、時折、謎の言葉、ブラン語が会話に混在するので、もう少し正しい言葉を覚えて欲しいです」


 ブラン語……

 そういえば、ヒューがすごく通訳に苦労していた気が。

 最初から何事も無くフィアやネメシスが通訳してたけど、こっちがすごいだけか。


 うん、少しずつ覚えさせていこう。



 翌朝、ペチペチと頬を叩かれて目が覚めた。

 ブランが「キュイキュイ」と何かを訴えかけてくるからネメシスに通訳してもらった。

 そしたら、角が痛くなくなったことが判明した。


 その後、教室で


「ブランちゃん、昨日はボクがいなくて寂しかったよね?今日は一緒にいるからね!……もふもふ〜」


「キュイキュイ〜」


 何だろう。

 改めてシエルとブランのやり取りを見ると、ネメシスの言う通りブランが幼く見える。

 いや、今までも幼く見えたけど、それ以上に。


「シエルは相変わらずね。……羨ましいわ」


「ルナ、どうかした?元気ないけど」


「そう?いつも通りだと思うけど」


 うーん、いつもと違う気がするんだよな。

 上手く言葉で言い表せないけど、頑張って作り笑いをしてるように見える。


「……ほんとに?」


「ほんとに、って……そんなに変?」


 ルナは、少し困ったように首を傾げる。

 だけど、その目は、オレを見てるようでどこか遠くを見ている気がした。


「いや……何ていうか、ちょっと無理して笑ってるように見えたからさ」


「…………」


 ルナは何も言わず、ほんの少しだけ俯いた。


 俺が何か言おうとしたその時、


「……ねえ、オルフェウスは、シエルのこと、どう思ってる?」


「えっ……?」


 あまりにも唐突な質問に、思わず言葉が詰まった。


「いや、別に深い意味はないわよ。ただ……見てて、思っただけ」


 ルナは笑っているが、やっぱりどこか寂しげに見える。


「……ルナ。何か、抱えてることがあるなら、ちゃんと言ってほしい。オレでよければ、聞くから」


「……ありがとう。けど、何も話せることはないの」


 ルナの声は、いつもよりほんの少しだけ弱々しく感じた。


 オレにできることは無いのかな?

 シエルはルナが何を抱えてるのか、知ってるのかな?



 放課後、ルナはいつも通りに見える。

 でも、それが逆に心配だ。

 無理していないといいけど。

次回、『対G組 作戦会議』に続く

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