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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第74話 シエルはブランのママ

「C組が先に2勝した為、準決勝はC組の勝利とします!」


 ミューラさんの勝利が確定したことで、自然と三試合目を行わずしてC組の勝利が決まった。


「キュイ……」


「ん?痛みが酷くなったの?」


「キュイキュイ……」


 首を横に振ったから違うっぽい。

 でも、いつもの元気がないから痛みはありそう。


「勝ったよ……。ブラン、どうかした?」


「あ、ミューラさん、おめでとう。えっと、ブラン様子が急におかしくなって」


「ヒュー、通訳お願い」


「うん、ちょっと待って」


 その後、ヒューが頭を抱えながらブランと根気よく会話を続けた。

 その結果、


「うん、ご飯まだ?って言ってる。……たぶん」


 なんか最後に一言 余分な言葉が聞こえてきた気がするけど、気のせいかな。


 それにしても、お腹空いて元気が無かったとは。

 いつものブランに戻りつつあるな。


「それなら、今から夕食に行こか」


「!?キュイ〜!!」


 カレンさんの夕食という言葉に食いついたブラン。

 オレの足元で「キュイキュイ」と、まるで早く早くと急かすように強請ってくる。


 そのままブランに急かされるようにして、夕食をこの三人で食べに行くことに。

 ただ、一つだけ気がかりなのは、何故かシエルの姿が見当たらないってこと。

 いつもなら、「ブランちゃん、どうしたの?」とか言って、シエルの腕の中にブランが居てもおかしくないのに。

 今日はオレの元にいる。


 それにルナの姿も見えないんだよな。

 まあ、ルナの場合、決勝で当たるクラスの偵察って可能性もあるけど。

 シエルは……さすがに無いよね。

 ブランがこんな状態なのに、姿が見えないなんて、何かあったのかな?


「ちなみにブランは何が食べたいんや?」


「キューイ……キュイー……キュイキュイ!キュイキュイ」


「ヒュー、お願い」


「えっとね、美味しいやつ!名前忘れたって言ってるよ」


 美味しいやつ?

 ブランの好きな食べ物とかかな?

 うーん、ありすぎてわからない。

 ていうか、ブランって何食べても美味しそうな顔するし、好きじゃない食べ物あるのかな?


「ブラン、それだとわからないから、もう少し何かないかな?」


「キューイ……キュイ!キュイキュイ」


「ま、ま、ん?誰のこと言ってる?」


「キュイキュイ」


「うーん……ごめん、ミューラ。僕には何言ってるかわからない」


 この子、今 ヒューに何って言ったのかな?

 こうなったら、仕方ない。

 ネメシスに通訳を頼もう。


「ネメシス、ヒューの代わりにブランの言葉を通訳して」


「承知しました」


 その後、ブランがヒューに伝えたのと同じことをネメシスに伝えた、と思う。

 全てを聞き終えたネメシスはどこかヒューを同情するような目で見た。


「ああ、なるほど。そういうことでしたか。ブランは、シエル様がよく食べさせてくれるのと言ってます」


「え、そんな事言ってなくない?もしかして、僕の知らない言葉?」


「いえ、ブランは、まだ幼いので、人やモンスターの名前を2文字までしか覚えられないのです。その上、何故かは私も知りませんが、シエル様のことをブランはママと呼んでいます」


「そんなのわかるわけない……」


「キュイ?」


 なんだろうな。

 シエル、ブランがお泊まりに行った時とかに変なことを教えてそうな気がする。

 オレの気のせいかな?

 てか、オレのことってなんて呼んでるのかな?


「シエル様以外の方は基本的に名前の最初2文字だけで呼ばれてます」


 あ、そうなのね。

 まあ、それでネメシスと会話が成立しているならいいか。


「そんで、シエルがブランによく食べさせてるのってなんや?うちは知らんで」


「ミューラも知らない。オルフェウスは?」


「え、あ、シエルがブランにか……」


 一つだけ思い当たる節はある。

 ていうか、あれしかない。


「ブラン、甘いものはダメ」


「キュイ!?」


「角の痛みが消えて、治ったらね」


「キュイキュイ」


「痛くなくなったと言ってます」


「嘘はダメ」


 そんな急に痛みが引くわけないでしょ。

 もしそうなら、カリン先生も今日は安静になんて言わないから。


「じゃあ、ミューラが美味しいお店知ってるから、そこ行く?」


「うちはそれでええで」


「うん、オレも」


「キュイキュイ!!」


 "やだやだ"と言ってるだろうブランを無視して、ミューラさんオススメのお店へ向かった。


「ここ」


「ん?何のお店や?」


紅蓮飯荘ぐれんはんそう』って読むのかな?


 深紅と金の瓦が連なる二重屋根に、龍の彫刻が屋根の先に絡みつくように配置されている。

 入口は大きな朱塗りの門に、黒地に金の文字で『紅蓮飯荘』とあった。

 どこからどう見ても、中華料理店にしか見えない。


「ここだと《《あの》》中華料理が食べられる。だからオススメ」


「なんやて!?《《あの》》中華料理が食べられる見せ!?学園内にそないな店があるんか!」


「知る人ぞ知るお店」


「さすがミューラや!うちとは全然違う」


 なんだろう。

 オレだけ置いてけぼりみたいなこの感じ。

 ていうか、気づいたらブランがミューラさんの足元にいる。

 まるで、自分はこっち側と主張するように。


「えっと、中華料理ってそんなにテンション上がるものなの?」


「なんや、オルフェウス!中華料理と言えば、超激レア、激うまの珍味やで!まず、作れる人が世界で数人しかおらん。それもどこで店を出してるかなんて、普通は知りたくても知れへん!みんな知ってても喋らへんからな」


「へえ、そうなんだ。初めて知った」


 ブランをさっと回収し、お店の中に入る。


 中は、最大で六人掛けの円卓が大小あわせて20席ほどある回転テーブルつきの本格中華スタイル。

 半オープンキッチンで、厨房で料理を作っている様子も見える。

 壁は、黒と金を基調に赤い蓮と火の紋様が交互に描かれていた。


 席に着くと、ミューラさんがテーブルの上に置いてある巻物を手に取る。

 何が何だかオレとカレンさんはわからなかったけど、ミューラさんが巻物を開けることで理解した。

 これがメニュー表だと。


「ここの料理には、辛味度と甘味度が0~10まで存在する。簡単に説明すると辛さと甘さを自由に選べる」


「そりゃ、ええな!うち めっちゃ辛いの好きなん!」


 ちなみにメニュー表に書いてある辛味度と甘味度の指標はこんな感じ。


 辛味度

 0無辛むしん 一切の刺激なしで、幼児でも安心して食べられる

 1微辛びしん ほんのり舌にピリッと刺激に弱い人向け

 2弱辛じゃくしん 軽く辛さを楽しめるレベル

 3並辛へいしん バランス型辛味

 4香辛こうしん 辛さと香りの両立

 5中辛ちゅうしん 普通に辛い

 6強辛ごうしん 舌に刺激が残る

 7烈辛れっしん 辛党歓喜。食後も辛さの余韻あり

 8煉辛れんしん 味覚の半分を辛さが支配し始める

 9煉獄れんごく 火竜級。体が内側から燃えるような辛さ

 10 灼獄しゃくごく 食の試練。涙・汗・嗚咽を呼ぶ、常人には不可避の地獄辛


 甘味度

 0無糖むとう 甘味一切なし

 1極微ごくび わずかに感じる自然な甘み

 2控甘こうかん 控えめな甘さ

 3淡甘たんかん ほんのり甘い

 4並甘へいかん 一般的なスイーツの甘さ

 5芳甘ほうかん 甘さが際立ち始めるが、しつこくはない

 6強甘ごうかん 甘党が満足するレベル

 7蜜甘みつかん 口内にとろける蜜のような甘さ

 8甘界かんかい 甘さが支配的で、スイーツ主役級の濃厚さ

 9禁甘きんかん 甘さで思考が止まる

 10 極甘ごくかん 糖の魔境



 うん、オレはこれに決めた。


「ブラン、注文は決まった?」


「キュイ!」


 どうやら決まってるみたい。

 ミューラさん、カレンさんも決まってるようなので、店員さんを呼んで、注文をする。


「ご注文をどうぞ」


 やって来たのは、全身が黒曜石のような光沢ある漆黒の皮膚に覆われている六本腕の小さなゴーレム?

 喋ってるし、ゴーレムじゃないのかな?

 そんなことを考えていたらミューラさんが普通に注文をし始めた。


「ミューラは、星火蒸籠包せいかせいろパオの辛味度2、甘味度5と星燐炒飯せいりんチャーハンの辛味度3、甘味度4。両方、温で」


「うちは、獄炎石鍋飯ごくえんいしなべはんの辛味度10、甘味度0で。うちも温」


「オレは、焔雲刀削麺えんうんとうしょうめんの辛味度5、甘味度2で、冷で。ブランは……」


「キュイキュイ、キュイ!」


蜜蓮玉包みつれんぎょくパオの辛味度0、甘味度10 冷ですね。少々、お待ちを」


 ……ん?辛味度0、甘味度10。


「キュイ?」


 うん、このわざとらしい「キュイ?」は自覚あるね。

次回、『ルナ?』に続く

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