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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第69話 オルフェウスVSボルド

「嘘やろ……」


 あのミューラさんが負けた。

 オレとカレンさんは正直、現実を受け入れられてない。

 だってブランですら、運勝ちした相手だよ。

 単純に考えるとC組最強はミューラさんと言っても過言じゃないと思う。


 この敗北で流れは完全にF組に傾いた。

 しかも、次のダブルバトルで負けたら、その時点で3試合目のシングルバトルを行わずして終わり。

 ブランとネメシスのダブルバトルが一番 不安だっていうのに。


「ごめん」


「いや、謝るとこやないで。相手が強かっただけや。この後、2試合しっかり勝つから安心しときや」


「うん、頼んだ」


 ……オレ何、弱気になってたんだろ。

 カナリア先輩が事前に情報をくれた。

 ミューラさんに託された。


 相手がどんなに強くても、負けられない理由があるんだ。


「うん、任せて。次の試合はブランとネメシスで勝つから」


「キュイ……!キュイキュイ」


 はい。これでいい?


「キュイ!」


 前肢を伸ばしてミューラさんの頬をペタペタと叩くブラン。

 でも、肢が短くて一度目は空振り。

 そこは、誰も突っ込まなかったよ。

 女の子に肢が短いは禁句だからね。


「ブラン、そろそろ行くよ」


「キュイ!」


 さっきからずっと肢でペタペタとミューラさんの頬を叩き続けていた。

 試合に負けた後だったけど、ミューラさんもどこか嬉しそうだったからブランも楽しくなっちゃったのかな。


「第2試合、ダブルバトルを始めます!C組 オルフェウスくん!F組 ボルドくん!それぞれフィールドへ」


 審判のカリン先生から指示が出たからオレはブランを抱きしめ、フィールドへ向かう。

 F組のダブルバトル出場者は、カナリア先輩の情報通り、ボルドくんか。

 一応、ネメシスともらった情報を基に話して、対策は立てた。

 ……ブランがどこまでしっかりと話を聞いてたかだけ問題。

 この子、途中で眠くなってスヤスヤと夢の世界に旅立ったから。


「キュイキュイ!」


 やる気だけはあるんだよな。

 これが空回りしないといいけど。


 ……なんかボルドくんってイメージと違うな。

 まあ、オレが勝手に名前から活力溢れる人を連想していただけだけど。


 黒に近いダークブラウンの前髪は流し気味だけど、目元が完全に隠れている。

 基本は無表情。でも、時折、微かに口角を上げる程度の柔らかな笑みを浮かべる。


 ……何だろう、怖いってわけじゃないけど、警戒を強めた方が良さそう。


「C組、オルフェウスくん。F組、ボルドくん。二人とも準備はいい?」


「はい、大丈夫です!」


「キュイ!」


「うん、こっちも大丈夫」


「それでは、C組対F組 クラス対抗チーム戦、第二試合 始め!」


「頼んだよ、ブラン、ネメシス!」


「いくよ、ハンク、フェグミン」


 ボルドくんのモンスターはカナリア先輩の情報通り。

 分厚い鎧のような皮膚、肩部に大型シールドを装備したサイのハンク。

 ふわりと空を漂い、3本の尾を持つ小型キツネの精霊、フェグミン。


「ハンク、『シールド……』」


「ブラン、『ジェット・ブレイクスルー』!」


「キュイ!」


 ズガッ!


「ネメシス、『ダークスラッシュ』!」


 スパッ!


 よし、上手くいった。

 ただ、一直線に突き進むなら『ジェット・ブレイクスルー』は『ソニックホーンブレイカー』より速い。

 ただ、『ソニックホーンブレイカー』とは違って、途中で動きの軌道を変えることができない。


 今回はブランとネメシスが連携せず、1対1でそれぞれ戦うなら先手を取って、相手のリズムを崩す。

 そこから、ネメシスが支援役であろうフェグミンをハンクから引き離し、素早さデバフと猛毒の状態異常を付与する。


 事前に思い描いた作戦が上手くいった。


「うわっ、思ったより速いな。てか、デバフに状態異常の付与か……。面倒だな」


 先制攻撃が決まって、ネメシスが上手く立ち回り、ハンクとフェグミンを分断することに成功した。

 だけど、ボルドくんに困惑している素振りは無い。


「ハンク、『シールド・シフト』。フェグミン、『生命華陣ライフ・サークル』」


「ブモォォォ……」


 鼻息混じりの唸り声を上げるハンク。

 全身から白いオーラのようなものが溢れ出て、自身に防御力上昇のバフを付与した。


 フェグミンは、空中でくるんと一回転する。

 足元に淡く緑がかった魔法陣が広がり、花びらのような光が舞い始めた。


 さっき、ジルさんのリベラスがフィールドを展開、ミューラさんのニューがフィールド全体を攻撃していたので、無意識に攻撃かそれをサポートするスキルを警戒した。

 しかし、実際の効果は違った。


「……!?これ、もしかして、リジェネ?そんなスキルまであるのか……」


 フェグミンの猛毒によるスリップダメージが完全に相殺されている。

 効果は魔方陣の範囲内にいる味方モンスターのHPを継続で回復するとかかな?

 いや、もしかしたら、敵味方関係無く、ブランやネメシスのHPも回復できるかな。

 まだ、ダメージが入ってないからわからないな。


「さてと、様子見はここらで終わりにしよう。これ以上は、必要ない。全て理解した」


 この瞬間、オレの全身に寒気が走った。

 まるで見えない何かに見据えられたような感じで、肌の奥がぞわっとした。


「とりあえず、ハンク、フェグミンと合流……」


「キュイ!」


「……の前にブランだっけ?そのモンスターを退かそうか」


「グルルル……ッ!」


「……ん?警戒している?もしかして、ただ速いだけじゃない……?」


 さっきからボルドくんがブツブツ呟いているように見えるけど、今は気にしない。

 作戦通り、ブランがハンクの足止めをしてる。

 この間にネメシスが支援役のフェグミンを倒して、2対1と数的有利な状況を作る。

 それだけで、こっちは精神的優位に立てる。

 ボルドくん視点だと、ブランとネメシスの連携に難ありってわからない筈だから。


 ブランは作戦通りでも、ネメシスはちょっと、いやかなり苦戦している。

 猛毒を付与しているから本来なら、スリップダメージでいずれ倒せたが、それはリジェネスキルで相殺されている。

 さっきからずっと攻撃をしないで、空中をゆらゆらと浮かんでいる。

 そのせいで、ネメシスの攻撃が『飛閃』以外全て届かない。

 まだ、遠距離攻撃ができると情報を与えたくない。

 攻撃さえしてくれたら、『返刃ノ構(へんじんのかまえ)』でカウンターを決められるのに……


「ハンクがここまで警戒している。中途半端はよくないな。うん、最大火力でいこう。ハンク、『アイアン・チャージ』」


 ブランの『ジェット・ブレイクスルー』ほどではないが、巨体に見合わない超加速の突進。


「キュイ!?キュイキュイ……!」


 これにいち早く反応したブランは、ハンクに背を向け、一目散にネメシスに向かって駆け出した。


「え、ちょっ、ブラン!?そっちはダメ!」


 何でネメシスの方に君が駆け出してるのさ!

 ダメって言ってるけど、聞こえない振りをしているのか、戦闘中にも関わらず、耳をペタッと閉じている。


「キュイー!」


 そして、大ジャンプをし、ネメシスの頭を越――せなかった。

 それどころか、見事にネメシスの頭に着地し、そこを足場に『ソニックホーンブレイカー』を発動し、とてつもない速さで空中でゆらゆらしているフェグミンへ突っ込んで行く。


 あ、もしかして、ブランはネメシスとフェグミンの相性の悪さを察知して、相手を交換しようとした……いや、考えすぎかな。

 偶然だろうけど、ナイスだよブラン。


「ネメシス、ハンクに『返刃ノ構(へんじんのかまえ)』!」


 ハンクの正面に佇んでいた筈のネメシスが、次の瞬間、背後から剣を振り下ろした。

 しかし、ハンクの防御力があまりにも高く、与えたダメージは微々たるもの。

 猛毒の付与に成功したが、リジェネで相殺される。


「そのまま『斬哭冥華ざんこくめいか』!!」


返刃ノ構(へんじんのかまえ)』で振り下ろした剣をそのまま振り上げ、『斬哭冥華ざんこくめいか』に繋げる。

 これにより、猛毒のスリップダメージはより大きくなり、リジェネを上回った。

 そして、防御力デバフ、疫病の状態異常の追加付与にも成功。

 このまま何事も起きなければ、ネメシスなら勝てる。


 その為には、ブランがフェグミンを押さえ――何あれ?


「キュイ!キュイ!キュイ!キュイー!!」


 空中という、これ以上ないくらい不安定な場所で何故かブランが一方的にフェグミンを蹴ったり、角で突いたりを続けていた。

 しかも、『ホーンラッシュバースト』を発動させている気が……


 そのままの勢いでブランの連続蹴りがフェグミンのHPを0にした。

 これで戦局は決した。


 デバフで防御力と素早さが低下し、更に猛毒と疫病を付与されたハンクはネメシスの剣の錆となった。


「勝負あり!勝者 C組、オルフェウスくん!」


 ふうー、なんとかなった。

 結局、ブランの起点?が勝負を決めたな。

次回、『ブランの寝突き』に続く

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