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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第65話 ブランの神回避、その全貌

「ブランちゃん~!!」


 フォルリオ先生が高らかにオレの勝利を宣言すると、一目散にシエルが応援席から駆け寄って、ブランを抱きしめる。


「よく頑張ったね。ボク、誇らしいよ」


「キュイ~」


 シエルはぶれないな。

 しばらく、ブランはシエルにお預けかな。


「オルフェウス、優勝おめでとう。最後、どうやって『業火奔流ごうかほんりゅう』を躱したの?」


「あ、ミューラさん、ありがとう。えっと、それが、オレにもよくわかってなくて……」


「ん?でも、ブランが回避してるって気づいてたでしょ?」


「あ、それは微かにブランの声が聞こえたからだよ。あれが無ければ、オレも負けたと思って諦めてたよ」


「そっか」


 でも、きっとフォルリオ先生はその前から気づいてたんだろうな。

 じゃないと、ブランの姿が見えないタイミングで勝負は決したと思って、ミューラさんの勝ちを宣言すると思うし。


 そんな事を考えていたらフォルリオ先生がこっちに向かって来る。

 ただ、その後ろにはブランを抱きしめて満足気な顔をしているシエルとカレンさんがいた。

 それが少しだけ気になった。


「オルフェウスくん、優勝おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「それから、ミューラさんは惜しかったですね」


「いえ、これが今のミューラとニューの実力です」


 いや、最後のあれはただの運勝ち。

 ……まあ、運も実力のうちって言うか。

 それにしても、ちょっと自分たちに厳しい気もする。


「他の皆さんには明日、お話ししますが、今回のクラス内トーナメント上位3名にはクラス対抗チーム戦に出場してもらいます」


 クラス対抗チーム戦?

 えっと、他のクラスの子たちとチーム戦をするってこと?

 そんなイベントがあるのか。


「オルフェウスくんとミューラさんは確定で出場してもらいます。3人目は準決勝で敗北したカレンさんとシエルさんの直接対決の結果で……」


 フォルリオ先生の話を途中で遮るようにシエルがとんでもない発言をする。


「あ、ボク辞退します」


「……ん?申し訳ございませんが、シエルさん?今、なんと仰いました?」


「ボク、辞退します」


「……理由をお聞かせいただいても?」


「うーん……出場したらブランちゃんの応援に全力を注げないじゃないですか。そんな中途半端はブランちゃんが可哀想です!」


「……」


 常に冷静でいて、慌てふためく様子を見せないフォルリオ先生が昨日、今日とシエルに翻弄されている。

 さすがシエル。普通の人はこんな事できないよ。


「……わかりました。それではカレンさん、3人目として出場していただけますか?」


「はい、うちは大丈夫です!」


 こうして、シエルに翻弄される形にはなったけど、クラス対抗チーム戦に出る3人が決まった。


 翌朝、ホームルームの時間にフォルリオ先生からクラス全員にその説明がされた。

 ただ、シエルの辞退に関しては、かなり歪曲され、カレンさんが出たいと主張し、譲った形と話があった。

 当のシエルはブランを愛でるのに忙しくしており、フォルリオ先生の話は何も聞いて無さそう。

 カレンさんは、納得の表情。たぶん、フォルリオ先生から事前に聞かされていたんだと思う。


「最後にオルフェウスくんには、クラス内トーナメント優勝のご褒美をお渡しします」


「キュイ!」


 ご褒美という言葉に釣られたのか、気づいたらブランがオレの机の上に座って、元気に鳴いていた。

 後ろの方から「ボクのブランちゃん、どこ……」って声が聞こえるけど、とりあえず、何も聞こえてないふりだけしとこ。


「オルフェウスくんには、燦核石さんかくせきを贈呈します」


「キュイ?」


燦核石さんかくせき?」


「キュイキュイ!」


燦核石さんかくせきはブランさんやネメシスさんが進化する時、何かしらの手助けをしてくれます。どちらかが常に肌身離さず持っているといいですよ」


 へえー、そんなアイテムがあるのか。

 でも、一つしか無いからブランとネメシスどっちかにしか持たせられないな。


「キュイ!」プイ


 あ、ブランはお気に召さなかったのね。

 赤くて、透き通っているような……上手く言い表せないけど、キレイな石だからブランは欲しがると思ったけど。


「オルフェウスくん、ミューラさん、カレンさんの三人はチーム戦におけるダブルバトルをどうするのか話し合って決めておいて下さい。クラス対抗チーム戦は来週から始まりますので」


 放課後、オレはブランを連れて、ミューラさん、カレンさんと教室に残ってクラス対抗チーム戦について話し合うことに。


「あ、そうや。うち、気になってたんやけど、ブランって最後どうやってニューの攻撃を躱したん?地面からぽこって顔だしたやん。まさか穴でも掘ったとか?」


「それミューラも気になってた。ニューに確認してもわからなかった」


 ああ、そういえば、まだブランに確認してなかったな。


「キューイ?」


 首を傾げ、話の内容を理解していないアピールをするブラン。


 この子、最近、名前を呼ばれると反応するけど、言葉の意味まではちゃんとわかってないんだよな。

 ……でも、感覚は鋭い。

 とりあえず、ネメシスを召喚して通訳してもらお。


「ネメシス、ブランに昨日のニューとの試合、最後の『業火奔流』をどうやって回避したのか聞いてもらえるかな?ブランが話を理解できてなくて……」


「承知しました」


 それからネメシスが根気よくブランに質問し、確認してくれた。

 まさか、たったこれだけの質問に10分も掛かるとは思わなかったよ。

 ちょっとブランに対する認識を改める必要があるかも。


「キューイ?キュイキュイ」


「……なるほど。なんとなく理解しました」


「キュイ!」


「主様、どうやらブランにもよくわかっていない様子で、気づいたら地面の中に埋まっていたと」


「「「……」」」


 いや、普通そうはならないでしょ。

 既にやるべき事を終えた感 出してくつろいでるけど。


「実際に見たわけではありませんので、確かな事は言えませんが、ブランの話から恐らくこうではないか、と推測はできます。それでもよろしければ、お話しますが……」


「お願い、ネメシス」


「承知しました。ニューの『業火奔流』の膨大な熱量が闘技場の地面を溶かし、そこにブランが沈んだ思われます」


 ん?ちょっと待って。

 どういうこと?


 えっと、地面が溶けます。

 それで、その後……沈みます?


「ごめん、ネメシス、地面が溶けたとこまでしか理解できない」


「地面が溶けたと言っても上層部分のみです。そこが溶けたことにより、一時的に沼のようにぬかるんだのです」


「あ、それで沈んだのか!……え、でも、もしそうなら試合中に気づきそうだけど」


「表面が一時的に溶けただけですので、視覚的に判断できなかったのかと」


 なるほど。

 確かに地面が溶けてるようには見えたけど、あれに沈むとは思わなかったしな。


「一時的にニューの『業火奔流』が地面の融点を超えて、溶かした。だけど、直ぐ空気に触れたことで冷やされたことになり、地面は元に戻った。これで合ってる?」


「はい、ミューラ様の認識で間違いないかと思われます」


 うーん?

 ニューの放った攻撃があまりの高熱で地面が溶け、そこにブランが沈む。

 ちょっと信じられないけど、理屈は通ってる気がする。

 ただ、その後、ブランが地面から出てきたのは何で?

 冷えて地面が元通りなら出て来れないんじゃ……


「それやと、ブランが顔を出せた理由がわからへんくない?」


「普通なら溶けない地面が溶けたわけです。完全に冷え切るのにも多少時間が掛かると思われます。特にブランのいた内部は空気に触れていないので」


「あ、なるほど。なんとなく理解できた」


 それならブランが理解できてないのも無理ないかな。

 うん、ブランにこの難しい説明を求めるのは無理だよね。

次回、『カナリア先輩の来訪』に続く

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