第6話 勉強会
それからスライムを倒し続け、今日のオレの収入は3,000ユルドだった。
ちなみにルナとシエルもそのくらいだった。
ちゃんと稼げたので、今日も昨日と同じ宿に泊まった。
それから数日が経過してオレたちは三人でゴブリンと戦うようになった。
ブランたちのLvも5まで上昇している上に3対1なのもあって初めてゴブリンと戦った時の苦戦が嘘のように勝てる。
そして今日からルナとシエルがオレに勉強を教えてくれる。
「座学では一般常識、算術、モンスター学の三つの試験を受けて、その合計点で結果が決まる」
「そういうわけでボクとルナが最低限の知識を叩き込むよ」
「お願いします!」
「キュイ!」
ブランさん、君は頭下げる必要はないんだよ。
あと、何でオレの腕の中にいるのかな。
さっきまでベッドでスヤスヤと寝てたでしょ。
「まずは一般常識からだね。あ、勉強の妨げになったらダメだからブランちゃんはボクが預かるね」
シュッ、サッ!
「もふもふ〜」
「キュイ〜」
シエルもブランも幸せそうでなにより。
さてと、オレは勉強に集中しますか。
「一般常識って何教えたらいいか私もわからないから気になることがあったら何でも聞いて」
「わかった」
「とりあえず、○×形式で問題を出すから答えて。モンスターを育成する人のことをブリーダーという」
○×形式の問題か。
よくあるのは細かい文言が違うか言葉足らずという引っ掛け。
この要点をしっかり押さえていたら間違える筈がない。
「○だね」
「はぁ違うわ。ブリーダーはアルカディア王立学園を卒業した人のこと。ただ単にモンスターを育成するだけなら私たちもブリーダーということになるわ」
「あ、そっか」
くっ、「何でこんな簡単な問題に間違えてるの」って顔で見られてる。
最初にルナとシエルが教えてくれたことだし、間違えたオレが悪かったな。
「次の問題。モンスターはLv10毎に進化する」
モンスターの進化か。Lv10毎だと切りがいいよね。
でも、ルナとシエルが前に教えてくれたな。
えっと、Lv10じゃなかったのだけは覚えてるんだけどな……
「×だ」
「正解。ちなみに答えは何?」
「え?」
「……」
「……Lv15!」
「Lv20よ」
「……はい」
くそ、Lv10じゃないならLv15だと思ったけど、それだと中途半端か。
焦りは禁物だな。もっと冷静に考えないと。
「次、ブリーダーにはランクが存在する」
「○」
これは問題に問題がある。
ランクが存在するかは知らないけど、もしブリーダーにランクが存在しないならこういう問題をルナが出すとは思えない。
いや、思いつく筈がない。
「正解は×」
「え、何で?」
「どこでそんな中途半端な知識を手に入れたかは知らないけど、今はブリーダーのランク制は廃止されてるのよ。もし、問題に昔はとかが入ってたら○ね」
深読みしすぎたか。もっとシンプルに考えた方が良さそうだね。
その後もルナが幾つか問題を〇×形式で出してくれたけど、悉く間違えた。
だけど、間違えたことでしっかりと正解が何かを覚えた。
これで次、同じ問題が出ても間違えることはない。
「次は算術ね。簡単な問題から5+8は?」
「13」
「12+8は?」
「20」
「足し算はできるのね。次はその逆、引き算よ。15-9は?」
「6」
「22-16は?」
「6」
「足し算と引き算は速いし、正確ね。でも、ここから一気に難しくなるわよ」
「7×4は?」
「28」
「72÷12は?」
「6」
うーん、足し算引き算が掛け算割り算に変わっただけだよね。
大して難しくなってないけど、ルナの出題ミスかな。
「……合ってる。算術は完璧そうね。あとはモンスター学だけね」
「もふも……あ、ボクのブランちゃん……」
「キュイキュイ、キュイ~」
「シエル、オルフェウスにモンスター学を教えてあげて」
「うぅ、わかったよ」
うん、ルナにブランを取り上げられてシエルはすっごく残念そうだな。
てか、ブランさん?何事も無かったかのようにちゃっかりオレの腕の中に収まってるね。
くっ、そんな可愛い顔してキュイ~と鳴いても……
よしよし、いい子いい子。ブランは可愛いね。
「キュイ!キュイキュイ~」
「ええ、おっほん、おっほん!気持ちはすっごくわかるけど、オルフェウスはモンスター学に集中!」
「はい」
「キュイ」
「モンスター学はモンスターに関する知識を問われるからしっかりと覚えてね。例えば、ブランちゃんは可愛いとか!」
それからシエルにモンスター学を叩き込まれた。
思っていたよりも簡単ですんなり覚えられた。
例えば、魔法適性のあるゴブリンの上位種がゴブリンメイジみたいな感じ。
ゲームというかファンタジーに出てくるモンスターの知識が少しでもあれば、なんとかなりそうな感じだった。
それもあってオレの問題は一般常識のみと判明した。
アルカディア王立学園の入学試験まで昼間はブランたちのLv上げ、夜は勉強という流れで過ごし、気づいたら入学試験1週間前だった。
「よーし、アルカディア王立学園のある王都アルカディアスに出発!」
ルナとシエルに聞いたら王都アルカディアスまでは馬車を使って6日ほど掛かる。
オレたちは入学試験前日のお昼頃に到着する予定でアラナ村を後にした。
そうしてオレたちは王都アルカディアスに到着した。
道中の娯楽が何も無い世界。
この6日間、ルナとシエル、それにブランがいなければやばかったかも。
「オルフェウス、ようこそ王都アルカディアスへ。ここがアルカディア王国の王都でアルカディア王立学園のある場所よ」
「キュイ~!」
すっごいな。日本から外に出たことないからかこういう街並みを見るの初めてなんだよね。
≪モンブリ≫のオープニング映像から中世のヨーロッパをイメージしてたけど、これは古今東西いろんな時代のあれやこれやが取り込まれてるまったく新しい街並みになってる。
日本にも昔ながらの和風な家と今どきの洋風の家があったけど、ここは言葉では言い表せないよ。
翌日、遂に入学試験の日がやって来た。やれることは全てやった。
あれだけ勉強して筆記試験で落ちましたはルナとシエルに合わせる顔がない。
てか、マジでシャレにならないから死ぬ気で筆記試験をクリアしないと。
筆記試験の試験会場に入る前にモンスターを学園に預けないといけない。
だけど、キュイ!キュイ!と抵抗を続けるブランを預けるのに苦労した。
会場に入って少しすると試験に関する説明があった。
カンニングは即不合格とか常識的なことから一般常識、算術、モンスター学の試験は全て同時に行い、制限時間は1時間。
三つの試験を1時間で行うのはかなり短く感じるけど、これがこの世界の常識なのだろう。
「始め!」
試験官の一言でオレを含めた全員が一斉に問題用紙を表に向けて問題文を確認する。
最初は○×問題。
Q.モンスターはLv20毎に進化する
これは○だね。
ルナが初日に出してくれた問題と似てる。
これならいけそうかな。
Q.チャンピオンチームのチーム名は「ボクさま最強」
え、何これ?チャンピオンチーム⋯⋯
そういえば、ランク制が無くなった代わりにチャンピオンと呼ばれるブリーダーのチームがあるってルナが教えてくれたっけ?
ああ、ヤバい。チーム名は聞いてない。
いや、よく考えろ。流石にこの名前は違うでしょ。
うん、これはみんな正解してね!って意味が込められたサービス問題とみた。
答えは×かな
Q.現在、最強のブリーダーと名高いのはシャーロット・グレイブ
うっ、知らない……。
でも強そうな名前だし、たぶん有名人なんだろうな。○にしておこう
Q.アルカディア王国の首都の名前はアルカディア
あ、これは×
この国の首都はアルカディアス。
最後に一文字足りないね。
Q.アルカディア王国の国旗に描かれている鳥は雀
うん、○だね。
雀は警戒心が強く、常に群れで行動している。
ルナ曰く、これは単独ではなく、チームで行動するブリーダーを示しているとか。
この世界にも雀がいるって知った時は驚いたけど、犬や猫がいるし、別におかしくはないのかなって今では思ってる。
算術の試験は足し算引き算、掛け算割り算と現代人であるオレからするとかなり簡単だった。
これは確実に満点を取れていると確信がある。
最後はモンスター学。
Q.ゴブリンジェネラルがLv80で進化するとゴブリンキングになる
えっと、これはどうだったかな。
ゴブリンキングでしょ。
ゴブリンがLv20でホブゴブリン。
ホブゴブリンがLv40でゴブリンソルジャー。
ゴブリンソルジャーがLv60でゴブリンジェネラルってことはLv80でキングかな。
……あ、違う違う!魔法スキルを鍛えてるとゴブリンジェネラルからシャーマンキングに進化することもある。
この問題は物理特化育成か魔法特化育成か触れてないから正確にはゴブリンキングかシャーマンキングに進化するが正解の筈。
なら答えは×だね。
危ない危ない。
シエルから細かい引っかけ問題が出るから注意するよう言われてたんだった。
……よし、これで全部時間内に解けたかな。
一般常識問題で少し苦戦したけど、全体では8割近く点数は取れてるんじゃないかな。
次回、『実技試験』に続く