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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第57話 シエルのリベンジ

「ブランちゃん、えらいね!ちゃんとアドバイスしてたなんて!」


「キュイ!」


 シエルの言葉に誇らしげに胸を張っているが、実際にどんなアドバイスを送ったのかは不明。

 だけど、ネメシスが感謝の言葉を口にするくらいだからきっと有用な何かだったのだろう。


「よしよし〜……もふもふ〜」


 ……ん?さっきまでブランをえらいね!ってよしよしと撫でていたけど、気づいたらもふってる!?

 さすがシエル。この後、自分の番だというのにブレない。


「それでは第二試合を始めます。シエルさんとグルドさんはフィールドへ」


「よーし、ボクの番だ!行ってくるね」


「キュイキュイ〜」


「うん、頑張ってね」


「入学試験のリベンジね。応援してるから」


 前肢を振りながらシエルに抱かれてフィールドに向かうブラン。

 ……まさか、ブランで戦うなんてしないよね?

 うん、さすがのシエルでも、そこまでは……


 大丈夫だよね?




「……シエルさん、何故ブランさんがいるのですか?私の記憶ではオルフェウスくんのモンスターだったと思いますが」


「ブランちゃんはボクの応援です!」


「応援なら応援席でお願いします」


「ブランちゃんにとっての応援席はボクの腕の中だけです!!」


「キュイ?」


「ブランちゃん、そこは"うんうん!"って力強く頷くとこだよ?」


「……キュイキュイ!!」


「そうそう、えらいねブランちゃん」


「キュイ〜」


 ……今 シエル、何も話を理解していないブランに無理やり言わせなかった?

 しかも、褒められて嬉しそうに頬を緩ませているブラン。

 なんてチョロい子なの。

 ……これからはもう少しだけブランに厳しくした方がいいかな?


「……キュイ!?」


「あれ、どうしたの?そんなに震えちゃって。寒いの?ボクが暖めてあげるからね」


「……おっほん。それでは第2試合を始めます。グルドくん、シエルさん 準備はよろしいですか?」


「はい、俺はいつでも大丈夫です」


「ブランちゃん応援の準備はいい?」


「キュイ!」


「はい!ボクも準備オッケーです!」


「……それでは、第二試合 始め!」


 シエルのことは諦めたのかブランはそのまま抱きしめられたまま、第二試合を始めた。


「いくぞ、ガオート!」


「お願いね、ウィル!」


「入学試験の時と同じでオルクじゃないのか」


「ふっふふ、もふもふが最強だって教えてあげるんだから!」


 この時、誰もがシエル独自の理論を理解するのは不可能とあきらめた。


 グルドくんは入試の時にシエルを一方的に追い詰めた実力者だ。

 間違いなく、あの時よりも更に強くなっている。

 だけど、シエルも同じ。

 あれからずっと――もふもふに精を出していた。

 ……あれ?いや、でも、うん。



◆◇◆◇



 グルドのモンスター、ガオートは身長2.5m級の筋骨隆々なオーガ。

 右腕は鋼の籠手で覆われており、右手に巨大な斧、左手にスパイク付きの盾を装備している。


「ガオート、突っ込めぇぇぇ!!」


 ガオートが地を蹴る。轟音のような足音と共に、ウィルへ一直線。

 その巨体から繰り出される突進はまるで暴走列車のようだ。


「ウィル、くるっと回って避けて〜」


 シエルの声に、ウィルはくるりと優雅に一回転。

 ふわりと体毛が風に舞い、ギリギリの間合いで斧をかわした。


「キュイィ……!」


 シエルの腕の中(特別応援席)のブランも興奮している。

 まるで、自分もあれやりたい!と無邪気にはしゃぐ子供のように。

 しかし、それ以上にグルドが驚いた。


「あの巨体であんな動きができるのか……」


「次はこっちの番だよ!ウィル、『鉄壁突進』!」


「ガオート、正面から迎え撃て!『バーサークドライブ』『ブレイキングブロウ』!!」


『バーサークドライブ』を発動した瞬間、ガオートの全身から血管が浮かび上がる。

 そして、湯気?蒸気?そのような白い靄が立ち昇った直後、眼光が赤く輝く。

 そのまま右手の斧を高々と振り上げ、『鉄壁突進』で突っ込んで来るウィルと正面からぶつかる。


 ガァァンッ!!


 轟音と共に、ウィルとガオートの正面衝突。


 巨体のガオートの斧は、ウィルの体毛にめり込む寸前で止まった。

 その体毛は一瞬だけ鋼色に染まり、衝撃を面で受け流した。


「蹴り上げろガオート!そっから『グランドスマッシュ』!」


「ウィル、『鋼毛こうもう守勢しゅせい』!」


 ウィルを蹴り上げることで宙に浮かしたガオート。

 そして、斧がウィルの体毛にめり込んだまま重力に従って思いっ切り振り下ろす。

 ウィルを地面に叩きつけると、その衝撃で地面が割れた。

 ガオートの攻撃力の高さが誰の目にも明らかだった。

 直前に防御スキルを発動させたとはいえ、ウィルも大ダメージは避けられないと思われたが、実際には2割ほどしかHPは減っていなかった。


「はっ!?嘘だろ……今のが2割……」


 これにはグルドも驚きを隠せていない。

 だが、シエルは、


「ブランちゃんの応援のおかげだよ!やっぱり、もふもふが一番だね!」


「キュイ!」


 満面の笑みのシエルと、その胸元でうなずくブラン。

 誰にも理解されない独自の理論で完結していた。


 一方、グルドの表情は険しい。


「……なら、今度は防御ごと粉砕するまでだ!ガオート、『ワイルドラッシュ』!!」


 ガオートの斧が高速で振り下ろされる。

 パワーとスピードを兼ね備えた猛攻が、我を忘れた獣のようにウィルに襲いかかる。


「ウィル、全部躱して!」


「クゥーン」


 ガオートの猛攻をまるで未来でも見えているかのような先読みで回避するウィル。

 どれだけ攻撃しても当たらないことに焦り、もしくは怒りが募ったのか、攻撃が徐々に単調になっていく。


「ウィル、今だよ。ジャンプ!」


 ガオートの斧を踏み台にして宙を舞い、ガオートの頭上へと跳躍した。


「……!? 上かっ!」


「いくよ、ウィル、『クロー・ブリッツ』!!」


 ウィルの前足が光り、鋭い爪が展開される。

 そのまま空中から一直線に急降下し、ガオートの胸元をX字に斬り裂いた。


「グオォォォッ!!」


 ガオートが膝をつく。

 そして数秒後、全身からエネルギーが霧散するように溢れ、その場にはクリスタルだけが残った。


「勝負あり。勝者、シエルさん!」


「やったね、ウィル〜!」


「クゥーン」


「キュイキュイ」


 シエルはブランをぎゅっと抱きしめたままウィルに駆け寄り、頭を撫でる。

 ブランもシエルのマネか、前肢を一生懸命 伸ばしてウィルの頭を撫でようと奮闘していた。

 結果、届かず、シエルがブランを持ち上げることでウィルの頭をぽふぽふと叩いていた。


「はは……負けたか。でも、すげーな」


 グルドが応援席に戻る途中、苦笑しながら呟いた。

次回、『ルナVSクレハ』に続く

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