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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第55話 クラス最強を決める戦い

 残された期間、ブランがいつも以上に甘えてくるので、その対応に追われる日々だった。

 さらに困ったことに、突如シエルが寮の部屋を訪ねてきては、ブランを愛で倒していくのだ。

 いつもならルナがシエルの面倒を見てくれるのに、この1週間どこにも姿を見なかった。

 シエルに聞いても「ブランちゃん~」と自分の世界に入ってるから何もわからなかった。


 あ、そうそう。

『知風ノ殿』を無事に攻略できたって報告をカナリア先輩にもした。

 そしたら、すっごく喜んでくれたよ。

 ただ、これが終わると忙しくなるからって最後、不穏な事を言われた。



 こうして、気づいたら特別授業も終わり、オレたちは教室へと向かった。

 教室に入るとどこかいつもより雰囲気の暗そうなルナがいた。

 心配になったのか、シエルの腕の中から巧みに「キュイ、キュイ」と抜け出したブランが「キュイキュイ」とルナに声を掛ける。


「……ブラン、どうしたの?シエルの腕がブランを求めて彷徨ってるから戻ってあげたら?」


「キュイ?」


「……はぁ、仕方ないか」


 そう呟くとブランを抱き抱えて、シエルの前まで来る。

 ルナがシエルにブランを渡す前に何かが風を切る音が。

 そしたら案の定、シエルの腕の中にはブランがいた。

 満足気な顔をするシエルを見て、ルナはホッと一息安堵する。


「おはよう、オルフェウス。ごめんなさい、スマホ見てなくて……。心配してくれてたのよね?ありがと」


「何事も無くてよかったよ」


「ああ、もう!ブランちゃん、勝手にボクの下からいなくなっちゃダメでしょ」


「キュイ?」


「ブランちゃん、可愛い~!!」


 隣からブランを愛でるシエルの声が聞こえてくる。

 なんだか、それもあってルナに何があったのか聞けるような雰囲気じゃなかった。

 まあ、本人が大丈夫って言ってるわけだし、大丈夫でしょ。


 それから程なくして、フォルリオ先生が教室へやって来た。


「それでは、昨日までの1ヶ月間で行われた特別授業の結果を発表します。今回、全チームとも期間内にダンジョン攻略を達成した事を確認しました。皆さん、お疲れ様でした」


 結果発表という言葉で緊張感が高まったが、"お疲れ様でした"の一言でクラスの空気が和んだ。

 だが、それも束の間の出来事だった。


「今から1週間後に急ですが、クラス内トーナメントを実施します」


 その一言で、教室内の空気が再び張り詰めた。

 誰もが、一瞬、息を呑むのがわかった。


「クラス内トーナメントとは、読んで字の如く、このクラス12人によるトーナメント戦を実施します。わかりやすく言えば、"クラス最強"を決める戦い、ということになりますね」


 クラス最強。フォルリオ先生がその言葉を口にした瞬間、張り詰めていた空気が変わった。


「クラス最強って……別に、そんなの決めなくても……」


 小さく誰かがつぶやいたが、フォルリオ先生はそれに反応することなく、淡々と話を続けた。


「ルールは簡単。1対1のバトルをトーナメント形式で行います。対戦相手はくじ引きで決定します」


 一部のクラスメイトがざわめき始める。

 やる気に満ちた目を輝かせる者。逆に不安げに顔を見合わせる者。

 シエルはというと、何も気にしていないようにブランをなでているだけ。

 むしろ「ブランちゃんが一番強いのに……」とか言ってる。


「試合は一人1日1戦、勝ち上がった者が次に進みます。4日間にわたって行う予定です。なお、勝者には……ちょっとした"特別なご褒美"もご用意しています。――詳細は後日、改めて」


 特別なご褒美という言葉にクラス内が少しざわつく。

 実際、こういう時の報酬はただの飴玉じゃ済まないと思われた。

 もふもふコンテストでもグランプリに輝くとスキル無料交換券がもらえたし。

 中には「特定スキル強化券だったらどうしよう……」という声が。


「なお、今日の放課後、組み合わせ抽選を行います。場所は教室、時間は16時。参加は任意ですが……不参加者は自動的に棄権扱いとなりますので、よろしくお願いします」


 フォルリオ先生が話を締めると同時に、チャイムが鳴る。

 朝の緊張感はすっかりトーナメント話に持っていかれ、クラス中が浮き足立った。


 そして、チャイムが鳴り終わる頃、フォルリオ先生が再び口を開いた。


「それでは、トーナメント抽選に備えて、今のうちにモンスターの状態を整えておくように。――そうですね、今日は昼休みの時間を少し延長しましょうか」


 その瞬間、教室が再びざわついた。

 シエルはもちろん「ブランちゃんのごはんタイムも延長ねっ!」と大はしゃぎ。


「トーナメント……」


 オレはなんとなくルナとシエルの方を見た。

 ふと、二人はどうするのかな?と気になった。


「ルナとシエルはどうするの?出るとは思うけど、フィアとルシウス、オルクとウィルのどっちで戦うの?」


「私は相手次第かな。そういうオルフェウスはどうなの?ブラン、あんな調子だけど」


 ルナに言われ、ブランを抱きしめているシエルの方を見た。

 すると――。


「ブランちゃんはボクの応援してくれるよね?」


「キュイ?」


「ほら、この前の模擬チーム戦の時みたいに」


「……キュイ!キュイキュイ!」


「はぅ~、それならボク優勝できる気がするよ」


 ブランは完全にシエルに手懐けられていた。

 うん、ネメシスで戦おうかな。

 カナリア先輩との特訓で取得した『斬哭冥華ざんこくめいか』が当たれば、一気に有利に進められるし。


 そうして、授業は瞬く間に終わり、遂にトーナメント表を決めるくじ引きの時間に。

 何故かはわからないけど、くじはオレから引く。


 フォルリオ先生が黒板に書いたトーナメント表では、四人だけ一回戦免除のシード枠がある。

 できれば、そこを引き当てて有利に進めたい。


「……」


 だが、現実はそう上手くいかない。

 たった三分の一の確立に見放され、一回戦から誰かしらと戦うことに。

 その後、ルナ、シエルとくじを引いていき、オレの一回戦の相手はエマさんとなった。

 そして一回戦を突破したらシード枠のダインくんと当たる。

 正直、ダインくんは模擬チーム戦の時にどんな風に戦うか見たからわかる。

 だけど、エマさんは今まであまり話したこともないし、どんな戦い方をするのか全く見当もつかない。

 ミューラさんの時みたいな開始早々って展開もありえる。

 とにかく、あらゆる可能性を視野に入れて戦う必要がある。

 ……やっぱり、ネメシスの方が向いてるかな?

 ブランはどこか子供っぽいとこあるし。

次回、『オルフェウスVSエマ』に続く

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