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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編
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第38話 特別授業開始

 ダンジョンの情報は出揃った。

 あとは期日までに第一希望から第三希望まで選択し、フォルリオ先生に報告するだけ。


「どうやって決める?正直、オレには相性の良し悪しがわからない」


「そうね……自分が調べたダンジョンなら多少はわかるんじゃない?」


「ボクはもふもふダンジョンがあれば即決だったんだけど――――」


「キュイ?」


「あっ、ブランちゃん!浮気じゃないからね!」


 浮気を疑われたと思ったのか、シエルはいつも以上にブランを愛でている。

 このまま放置すると話が進まないからルナがシエルからブランを奪い取った。

 そして何事も無かったかのようにオレの腕の中に「キュイ?」と収まる。


 よしよし、いい子だから大人しくしててね。

 今は大事なお話をしているから。


 いつも通り、心の中で願いながら撫でると静かになった。

 これで話し合いに集中できる。


 シエルはブランを取られたからシュンと落ち込んでいるように見える。

 チラ、チラとこっちを見る素振りも。

 だが、これはいつものこと。

 ここでブランを渡すと手に負えないから無視。


「えっと、話を戻すね。オレが担当したダンジョン『夜明けを知らぬ沼』は厳しいと思う。攻略には専用アイテムが必要だけど、これがどこで入手できるか調べてもわからなかった」


「えっと、専用の灯火の事ね。実際にアイテム無しでも頑張れば攻略できるとは思うけど、これなら他のダンジョンを選んだ方が良さそうね」


「うん、オレもそう思ってる」


 こうしてオレがダンジョン名が気になるという理由で調べた『夜明けを知らぬ沼』は希望しないこととなった。


「……シエル、一ついいかしら?」


「……何?」


 何か思案する様子を見せてからシエルに質問しようとするルナ。

 だが、ブランを取り上げられた事を根に持っているのかご機嫌斜めのシエル。


「シエルって確か古代文字の読めたわよね?」


「それがどうかした?」


「この『知風ノ殿』ってダンジョンはどう?」


「……むー」


「シエルが古代文字を読めるってブランが知ったら、尊敬の眼差しでシエルを見つめると思うんだけどな~」


「っ!?ボク、そのダンジョンがいい!」


 さすがルナ。シエルの扱い方に手慣れてる。

 内心「この子はほんと、ブランのことで釣れるんだから……」ってルナが思ってたら怖いな。


 ブランの名前が出た瞬間、むすーとしていたシエルの表情が一転。

 今では満面の笑みで早くダンジョンに挑戦したいと思ってそう。


「それじゃあ第一希望は『知風ノ殿』でいいかしら?」


 ルナがオレの方を見て確認してくる。


「うん、大丈夫」


 これで第一希望のダンジョンが決まった。

 あとは第二、第三希望。


 ダンジョンの資料に目を通しているとネメシスたちが纏めてくれた『朽ちた祈りの間』が気になった。

 ダンジョンに散らばっている祈祷文が何かはわからない。

 だけど、集める数や集め方次第ではいい気がした。


「ネメシス、『朽ちた祈りの間』の祈祷文って幾つ必要かや集め方とかわかったりする?」


「いえ、その情報はどこを探しても見つかりませんでした」


「そっか――ありがとう」


 肝心な部分の情報が無い。

 これだと選択肢には入らないかな。


「あ、ここどうかな?『白骨の遊歩道』」


「ああ、あの癖の無いダンジョンね。私はいいけど、オルフェウスはどう?」


「うん、オレも大丈夫」


 ルナの言う通り、『白骨の遊歩道』はギミックの無いダンジョン。

 だからそういうのが苦手なチームは積極的にこういうダンジョンを選ぶと思う。

 第二希望だと望み薄のとこあるかな。


「それじゃあ系統が近いし、第三希望は『雨声のほこら』でどう?」


 シエルのこの提案にオレとルナは特に反対する理由が無かった。

 チームの代表としてルナがフォルリオ先生から受け取っていた紙に希望を書く。

 それをルナが職員室へ持って行ってくれた。


 その直前にシエルはルナに「もういいよね?」と確認し、了承を得る事でブランをもふもふして堪能していた。

 5月に入って少し気温が上がったけど、シエルのもふもふ愛には関係ない。


 特別授業初日。

 フォルリオ先生からどのチームがどのダンジョンに挑戦するか発表された。

 このように決まった。


 オルフェウス・ルナ・シエル 『知風ノ殿』

 タキオン・グルド・リユウ 『白骨の遊歩道』

 エマ・カレン・クレハ 『朽ちた祈りの間』

 ガイド・ダイン・ミューラ 『迷い森の縁側』


「オレたちは『知風ノ殿』か。確か古代文字の読解ができないと攻略できないんだっけ?」


「情報によるとね。頼りにしてるからねシエル」


「任せてよ!ボク古代文字を読むの得意なんだ!」


 オレが元いた世界じゃ、古代文字なんて学者でも扱えるかどうかってレベルだったのに……すごいな、シエル。

 改めてオレの常識はこの世界の常識じゃないと思い知った。


「それでは特別授業について説明します」


 あ、そういえば、詳しい説明はまだだった。


「今日から始まる特別授業ですが、期日は今月中!今月中に必ず指定ダンジョンを攻略して下さい」


 今月中か。今日が5月5日月曜日。今日を入れてあと25日で攻略か。

 でも、これだとギリギリだから少し余裕を持ってあと20日以内に攻略と思った方がいいかな。


「期日までダンジョンに挑むもよし、図書館で調べ物をするもよし、使い方は自由です。ただし――――寮の門限だけは守るように!私からは以上です。何か質問がある方はいますか?」


 フォルリオ先生が質問がある人がいるか確認するもどこからも手が挙がらない。

 誰も何も質問が無いかと思われた時、クレハさんが恐る恐る手を挙げた。


「……はい」


「クレハさん、どうぞ」


「えっと、この特別授業期間中は出席の必要はありますか?」


「いえ、ありません。他に何かありますか?」


 言われてみるとそうだよな。

 まあ、自由に活動していいって言ってるんだから、当然か。


「はい」


「ミューラさん、どうぞ」


「指定ダンジョンの攻略を終える前に他のダンジョンに挑戦しても大丈夫?」


「もちろん、構いません。予想に反して指定ダンジョンとの相性が悪い為、他のダンジョンでLv上げをするなど全てが自由です」


 なるほど。ホントに自由だな。

 ここまで自由だと期日までに攻略できなかった時の事が気になるな。


「他に質問がある方はいますか?無ければ、現時点を持って特別授業を始めさせ――――」


「あ、すみません。一ついいですか?」


「リユウくん、どうぞ」


「もし、期日までに指定ダンジョンを攻略できなかったらどうなりますか?」


「今年1年の成績に《《大きく》》響くだけです」


 誰もが気になっていたであろう事をリユウくんが聞いてくれた。

 それに対するフォルリオ先生の回答を聞いて、この場の空気が凍った。


 その後、他に何も質問が出なかったので、特別授業が始まった。

 とりあえず、オレたちは『知風ノ殿』について知ってる事が少ないので、情報集めをすることにした。

 早々にダンジョン攻略に取りかかる組と比べると出遅れるけど、今 情報収集をしないと後々に響く気がした。

 それはオレだけじゃなく、ルナとシエルもだった。


「キュイキュイ!」


 ああ、ブランもだよね。忘れてないよ。

次回、『知風ノ殿』に続く

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