表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/120

第2話 名前は

 えっと、名前、名前。ヤバい、どうすれば……

 オレ落ち着くんだ。少なくともルナとシエルの雰囲気からしてオレの知り合いという線は無い。だから適当な名前を名乗っても問題は無いよね。

 いや、ダメだ。もし、この先オレの知り合いだと名乗る奴と出会ったらマズイ。

 初対面のチームメイトに嘘の名前を名乗ったことになって二度と信頼してもらえなくなる。

 ……よし、決めた。これでいくしかないか。


「えっと、実はオレ、自分の名前がわかんなくて……」


「はあ、どういうこと?」


 なんかルナに呆れられてる気がする。いや、ここは気にしちゃダメだ。

 今考えた設定を貫き通さないと。


「いや、実を言うとクリスタルを受け取る直前くらいから記憶が曖昧で」


「もしかしてぼさっと突っ立てた理由って」


「そうなんだよ。気づいたらここにいて何が何だかわけわかんなくて今に至ってます」


「そっか。でも、それだと名前どうしようか?あ、ボクが決めてもいい?」


「私は任せるわ。二人の好きにして」


 え、あれ?なんか思ってたよりもあっさり受け入れられた。

 この設定を考えたオレが言うのもあれだけど、普通信じるかな?

 オレなら絶対に信じないと断言できる。

 もしかして、この二人ヤバい人?

 うーん、でもそういう雰囲気じゃないよね。

 上手く言葉にはできないけど。


「えっと、オレが言うのもあれだけどさ、信じてくれるの?」


「もちろんだよ。ああ、そっか。君は知らないよね……。ボク、特異体質でさ……君が噓をついてるかどうかわかるんだよ」


 噓をついてるかどうかわかるか。え、それってさ……


「すごくない!」


「え?」


「だって嘘ついてるかわかるんでしょ!人に騙される心配無いじゃんか」


 信じられない。そう言いたげな雰囲気で目を大きく見開き、オレを見るシエル。


「クスッ、そんな風に言ってくれたの君が二人目だよ」


「そう、なの?」


「うん。あ、君の名前だけど、ボクが決めていい?」


「うん、お願いしてもいいかな」


「そうだな、オルフェウスなんてどう?かっこよくない?」


 オルフェウスか。普通にかっこいいね。

 それにシエルみたいな可愛い子に名前を付けてもらえるのは役得すぎる!


「うん、それにしよう。ありがとう、シエル」


「どういたしまして」


「今日からオレの名前はオルフェウス。モンスターはこの角兎。よろしく」


「キュイ!」


「はあぁ、可愛い!」


「キュイ~キュイキュイ」


 シエルは角兎にメロメロだな。オレに抱かれていた角兎を奪ってもふもふしてる。

 ゴブリンが嫉妬しなきゃいいけど……ていうか角兎も嬉しそう。


「シエル、楽しんでるとこ悪いけど、これからどうするか決めない?入学試験まであまり時間がない」


「あ、そうだった。とりあえず、Lv上げだよね。そうなるとダンジョンに挑戦するのが一番かな」


「そうは言っても私たちのモンスターとLvで攻略できるダンジョンがこの辺りにあると思う?」


「うっ、確かに。うーん、オルフェウスはどう思う?」


 うん、さっぱり話についていけない。

 とりあえず、今わかっているのは来月にアルカディア王立学園への入学試験があってオレはこの二人とチームを組んで受けないといけない。

 あとシエルとルナの話的にこの1カ月でモンスターのLv上げをする必要がある。

 この二つだけかな。


「えっと悪いんだけど、さっぱりわからない。そもそも何でアルカディア王立学園だっけ?そこの入学試験を来月に受けるの?」


 オレが質問するとルナが頭を抱えてうなだれた。


「そうだった。あなた記憶があれだったわね」


「あはは、思ってたよりも重症かも。えっとまずはアルカディア王立学園について教えるね」


「お願いします」


「ボクたちは今さっきモンスターを召喚し、仲間にしたけど、まだブリーダーとは名乗れないの。ブリーダーと名乗れるのはアルカディア王立学園を卒業した人だけ。ここまではいい?」


「えっと、そのブリーダーってモンスターを育成する人のことで合ってる?」


「合ってるわよ。私たちはそのブリーダーになる為に今日ここでモンスターを召喚したの」


 なるほど、なんとなく掴めてきた。

 モンスターを召喚し、アルカディア王立学園の入学試験を受けて合格する。それから無事に卒業できたらブリーダーになれるわけか。

 要するにブリーダーという資格を手にするにはアルカディア王立学園を卒業しないといけないわけだ。


「ボクたちはブリーダーになりたい。オルフェウスもきっとそう思ってここに来た筈だよ。だからこの一ヶ月で入学試験に受かるようモンスターのLv上げをするの」


「それと同時進行でオルフェウスは勉強も。今のままだと間違いなく、座学で落ちる」


 あと一ヶ月でモンスターのLv上げをしつつ勉強をする必要がある。

 ん?それって……


「めっちゃ大変じゃない?」


「そう、だから今こうしてこれからの予定を話し合ってるの」


「なるほど」


 これ完全にオレが二人の足手まといになってる気がする。

 くっ、ゲームの世界のキャラに転生するってさあ、知識だけは持ってるのがテンプレでしょ!何でオレは知識ゼロで放り込まれてるのさ!


「それでボク思うんだけど、しばらくここを拠点にモンスターのLv上げをしない?」


「オルフェウスの勉強はどうするの?」


「それは一旦後。まずはこの子たちのLv上げ」


「うーん……そうね。わかったわ。それでいきましょ。オルフェウスはそれでいい?」


「うん。どうしたらいいかわからんし、任せる。あ、それとマジでわかんないことだらけだからいろいろとアドバイスをくれると助かります!」


「キュイ!」


 普通なら可愛い女の子に頭を下げるとかプライドが許さないんだろうけど、オレはそんな無駄なもの持ち合わせてない。

 相手が誰であろうとオレの為になるならいくらでも頭くらい下げる。

 あと、角兎さん。君は頭下げなくていいんだよ。てか、器用だな。


「頭を上げてちょうだい。それ寧ろこっちからお願いしたいくらいよ。入学試験の合否はチームで決まる。これからは協力し合っていかないといけないから」


「あ、それ気になってたんだ。そのチームで合否が決まるってどういうこと?このチームってオレが知らないだけでめっちゃ重要なの?」


「ブリーダーは個人じゃなくチームで動くのが基本なのよ。だからブリーダーを育成する学園の入学試験の合否はチームで決まるの。要はチームワークの欠片もない個人プレーに拘る輩を学園はいらないってこと」


 えぇ、今日知り合った人とチームを組んで1ヶ月後の入学試験を受けるっておかしくない?

 だって知り合って1ヶ月でチームワークって無理あるでしょ。


「そもそも何で個人じゃなくてチームで行動するの?」


「モンスター6体が一番戦闘が安定する。でも一人じゃ指示が回らないから、三人がベストってわけ」


「人が増えると連携が取りづらくなるからね。ボクにはボクの考えや戦い方。ルナにはルナの、オルフェウスにはオルフェウスで何かしらあるでしょ?人が多いと意見は纏まらないしね。三人が一番バランスが良いってことだね」


 へえ、なるほど。こうして説明してもらうと確かにって思えるな。

 《モンブリ》ってソロ推奨のゲームだったけど、これはリアルならではの問題だね。

 だったら尚更、チームワークが大切になりそう。

 足引っ張らないように頑張らないと。


「ボクたちもまだだけど、モンスターには名前を付けてあげるといいよ。それからステータスの確認もした方がいいかな」


「なるほど、ありがとうルナ、シエル」


 名前か。何がいいかな。そういえばこの角兎って男の子か女の子どっちだ?


「キュイ?」


 可愛いから女の子かな。

 うーん、あ、ステータス見たらわかるかも。


 名前  Lv1

 種族:角兎 ♀

 HP:50

 物理攻撃力:5

 物理防御力:4

 魔法攻撃力:0

 魔法防御力:1

 素早さ:8

 SP:0


 <スキル☆>

『体当たりLv1』『つつくLv1』


 えっと、これは女の子か。

 ってことは可愛い名前の方がいいよな。

 白い毛並みだし、シロとか。いや、流石に安直か。

 シロを英語にしてホワイトは可愛くないか。

 シロ、シロ、シロ……よし、決めた。


「ブランでどうだ?」


「キュイ!!」


 気に入ったか。よしよし、いい子いい子。

 今日からおまえの名前はブランだ。


「キュイ〜」

次回、『初戦闘』に続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ