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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編
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第14話 週7交渉

 怒ったブランをなだめるのに苦労するなんてことは無く、なでなでしたらキュイ~とご機嫌になった。

 それから少ししてフォルリオ先生が教室に入って来た。


「それではホームルームを始めます。誰かは言いませんが、昨日今日で早速2体目のモンスターを仲間にした生徒がいます」


 あ、それってオレのことだよね。

 フォルリオ先生が来る前にネメシスはルームに入ってくれた。

 だからオレがネメシスを連れて教室に来たってこと知らないよね。

 もうクラスのみんなオレのことだって知ってるからフォルリオ先生の気遣いが無駄になっちゃったな。


「こういう話を聞くと焦る気持ちがあるかもしれませんが、その必要はありません。各自、自分たちのペースで仲間にしたいと心から思えるモンスターを探して下さい。それから今日の授業ですが、最初にブリーダー基礎学を行います。これはブリーダーとして知らなければならない基礎知識を培う授業となります」


 ブリーダーとしての基礎知識か。

 まだこの世界における一般常識すら怪しいけど、大丈夫かな。

 いや、わからないことはこれから覚えていけばいい。

 みんなよりも覚えることたくさんあるけど、そこは時間を掛けて頑張るしかない。


「ブリーダー基礎学の授業が始まるまでまだ時間がありますので、それまで各自自由に過ごして構いません。私からは以上です」


 ということで授業が始まるまで自由時間。

 何して過ごそうか考える間も無く、シエルがやって来た。

 その目的は案の定、ブランだった。


「オルフェウス、ブランちゃんとお泊まり会したいんだけど、いい?週7で」


「え、ああ、ブランがよければオレはいい……ん?週7?」


「そう!週にたったの7日間だよ!」


 あれ?おかしいな。

 この世界って1ヶ月が30日、1年が12ヶ月で360日。

 1年の日数は元いた世界に比べると5日間少ないけど、1週間は7日間と何も変わらない筈。

 つまり、週7ってことは毎日で合ってるよね?

 オレの認識が間違ってるのかな。

 チラッとルナを見ると頭を抱えていた。

 うん、どうやらそういうことみたい。


「キュイ?」


 そしてオレの膝の上にシエルの言葉の意味を理解できていない子が。


「ねえ、どうブランちゃん!」


「キューイ?」


「はう!ブランちゃんが可愛すぎて可愛死かわいしする……」


 変なことを口にしつつ、胸を押さえながら膝から崩れ落ちるシエル。

 しかも謎に息を切らせてる。

 すっごいはあはあしてるけど、これ大丈夫かな。

 ……幸せそうな顔してるし、大丈夫か。


「ブラン、シエルの話だけど、理解できてる?」


「キュイキュイ」


 オレの質問に対して首を横に振るブラン。

 つまり、何も理解できていない。


「えっと、シエルはブランに毎日お泊まりに来ない?って提案をしてるんだと思うよ」


「キュイキュイ?」


 えっと、誰か通訳……


「オルフェウス、ブランはお泊まりが何かを聞いています」


「キュイキュイ!」


「え、あ、ありがとうルナ、フィア」


「どういたしまして」


 ルナが機転が利かせてフィアをいつの間にかルームから召喚してくれていた。

 おかげでブランが何を言ったのか理解できたよ。

 ていうかブラン、お泊まりの意味を知らないからあのリアクションだったのね。


「ほら、入学式の前日の夜から次の日の朝までシエルと一緒に過ごしたでしょ?あれの事をお泊まりって言うの」


「キュイキュイ、キュイ?」


 あれ?これってまだ理解できてない感じかな。

 うーん、これでも伝わらないとなるとどう説明すべきか……


「ブラン、その認識で何も間違ってないと思いますよ」


「キュイキュイ?」


「はい。毎日お泊まりに来ない?というシエルのお誘いです」


「キュイキュイ!」


「シエル、毎日はダメと言っています」


「うっ、ブランちゃん手強い」


 いや、さすがに毎日お泊まりはブランも断るよ。

 正直、断ってくれてちょっとだけ安心したけどさ。

 もし、ノリノリで毎日お泊まりに行くようならブランに嫌われてるのか疑うとこだったよ。


 シエルも引きそうに無いし、授業が始まるまで時間もあまり無い。

 なるべき早めにお互いの妥協点を見つけないと。


「ブラン、念の為に確認するけど、シエルとお泊まりはしたい?」


「キュイキュイ」


 首を縦に振るブラン。つまり、お泊まりには行きたいと。

 でも、毎日はちょっと。そんな感じかな。

 それならお泊まりの回数を減らせばいいんじゃ。


「ブランちゃんがそれなら仕方ないね」


 シエルもブランの気持ちを汲み取って毎日お泊まりは諦めてくれたかな。


「この手は使いたく無かったけど」


「ん?」


「キュイ?」


「ボクと毎日お泊まりするなら毎日、ブラッシングしてあげるよ!」


 え、いや、それでブランの気持ちが揺れ動くと思ってるの?

 いくらなんでも無理があるよ。

 ほら、ブランだって……


「キュイ~!……キュイ!?キュイキュイ」プイプイ


 今、一瞬だけど、すっごいブランの目が輝いていたような。

 さすがに気のせいだよね。うん、そう思いたいな。


「シエル、お泊まりは行きたいけど、毎日はダメと言っています」


「うっ、ブランちゃん手強いね。それならこれでどう!今なら鏡見放題!」


「キュイ~!……キュイ!?キュイキュイ」プイプイ


「ううっ、女の子なのに鏡見放題で頷かないなんて」


「キュイ、キュイキュイ」


「ブラシと鏡はオルフェウスに買ってもらうから大丈夫と言っています」


「え、ブラシはともかく、鏡も!?オルフェウスにそんなお金があったなんて。くっ、これは完全にボクの調査不足だ……」


 えっと、ブラン?いつブラシと鏡を買うなんて話したかな?

 なんか今のシエルの口ぶり的に鏡ってかなり高級品ぽいけど。

 オレに高級品を買うお金なんて無いよ。

 これまで貯めたお金は学園の入学金とかで大半消えてるからね。

 もうほとんど残ってないんだよ。

 わかってるのかな、この子は。


「キュイ?」


 あ、うん、わかってるよ。

 今すぐは無理かもだけど、ちゃんと買ってあげるからね。

 ブランは聞き分けのいい子だから待てるよね。


「キュイ!」


 よしよし、なでなで、いい子いい子。


「はぁ、シエル、毎日は諦めて週1、2回で妥協したら?」


 ルナ、いいこと言う。そう、そこ!

 ブランはシエルとのお泊まりしたいみたいだし、最初から週1、2回で提案してくれたらこんな面倒なことにならなかったのに。


「うん、そうする……じゃあ週5でどう?」


「「……」」


 すごいしょんぼりして、妥協した感あるけど、ルナの提案はどこいったの?

 もしかして、お泊まりの回数を毎日じゃなくて週に1、2回減らしたらっていう提案に聞こえたのかな。

 いや、どう頑張ってもそうは聞こえないと思うけどな。


「キュイ!」


「週に2回までと言っています」


 ブラン、前肢の片方をキュイと持ち上げて指の数で数字を表現しようと努力してるのは見てわかるけど、5本ある指が全部立ったままだよ。

 フィアの通訳が無かったら伝わらないし、誤解を招きかねないから下ろそうね。


「ううっ、もうそれでいいよ。その代わり、これからは定期的にじゃなくて毎日ブランちゃんをもふもふさせて!」


「キュイ」


「あぁ、もふもふ~幸せ~」


 こうしてシエルとブランの間で行われたお泊まり交渉は週2回ということで決着した。

次回、『ブリーダー基礎学』に続く

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