第114話 2対1と1対1
「ルシウス、ウィルに『クラッシュ・エッジ』!フィア、オルクに『ソニック・クロスブレーカー』!」
「ウィル、ルシウスに『クロー・ブリッツ』!オルクはフィアに変更!」
真っ直ぐ突っ込んでくるウィルをルシウスが、空中から重力を利用して斧を振り下ろそうとしているオルクにはフィアがそれぞれ狙いを定める。
瞬時にオルクがルシウスに『ルイン・ドライバー』を決めるよりも先にフィアの『ソニック・クロスブレーカー』が届くと判断したシエルは、狙いを変更する。
オルクは、シエルの指示に応えるべく、空中で無理矢理 体を捻り、横腹を突き刺そうとするフィアの剣に斧を叩きつけた。
しかし、足場の不安定な空中だったので、フィアの勢いと止めることはできなかったが、剣先の軌道を下に逸らすことには成功した。
結果、フィアの剣は横腹を逸れ、オルクの左足を貫いた。
オルク、フィア共に空中で体勢を崩し、そのまま地上に落ちていく。
その傍でウィルとルシウスが激突した。
ウィルの鉤爪とルシウスの剣が火花を散らし、せめぎあう。
その一方で空いている手の鉤爪でルシウスの脇腹を狙うも、メイスを上から叩き付けられる。
それと同時に剣で鉤爪を受け流され、ウィルはバランスを崩し、脇腹を狙った一撃は空を切った。
「フィア、ウィルに向かって『ソニックスラッシュ』!」
オルクとの空中衝突で今まだ地上に落下している最中だが、関係なしにルナは指示を出す。
すると、フィアは空中で可能な限り、体勢を立て直した後に『ソニックスラッシュ』を発動する。
直後、スキルによる加速を利用してウィル目がけて剣を振り下ろす。
「オルク、フィアに斧を投げて!」
「ゴブ!」
「え?……ルシウス、弾いて」
「ウィル、逆らわず、転がって」
「クゥーン」
ウィルが体勢を完全に整えるよりも早くフィアの剣が届く。
そう判断したシエルは、背を向けているフィアに向かってオルクに斧を投げさせた。
しかし、それは即座にルシウスがフィアの背後へジャンプし、メイスで弾き飛ばした。
この攻防にウィルは我関せずとくるっと前転をして、『ソニックスラッシュ』を回避した。
そして、地に落ちたオルクは即座に斧を回収して、ルシウス、フィアと向き合う。
斧を構え直したオルク、ウィルと、ルシウス、フィアの距離はそれぞれ10メートルほど。
互いに視線をぶつけ合い、しばし膠着した時間が流れる。
「……いい判断だったわね、シエル」
「ふふーん。でしょ?」
「でも、一手遅かったわね」
「ん?」
「フィア、ウィルに『ソニックスラスト』『チャージスラッシュ』!」
この膠着した状態、一番最初に動いたのは、フィアだった。
まだクールタイムに入っていなかった『ソニックスラスト』による高速突きを利用して、一気にウィルとの間合いを詰める。
「ウィル、『牙穿』!オルクはルシウスを牽制。『アックスクラッシュ』『パワーブレイク』!」
それに対してウィルは『牙穿』でフィアの剣に噛みつくことで止めた。
オルクはルシウスがウィルに向かわないよう牽制しに動く。
「ルシウス、オルクは無視してウィルの側面に回り込んで『骨砕き』『ハンマークラッシュ』!」
しかし、ルシウスは向かってくるオルクを無視して、フィアと相対しているウィルへ向かう。
オルクはウィルから最も遠い場所にいた為、どれだけ走ってもルシウスには追いつかなかった。
フィアの剣を咥え込んで、押さえているウィルの横に回り込んだルシウスが連続で攻撃を叩き込む。
それにより、ウィルのHPは0となったが、そのタイミングでオルクがフィアの背を捉えた。
最初こそ、シエルの指示通りにルシウスを狙っていたオルクだったが、状況が状況だった故に自らの意思で狙いをフィアに変えていた。
「ゴーブ!!」
ギリギリまでウィルが咥えた剣を離さなかったこともあり、オルクの接近に気づいてはいたが、フィアは反応できなかった。
ウィルが消え、剣が解放されたことで即座に振り返ろうとした。
しかし、それを許さないオルクの猛攻が襲いかかる。
ただ、フィアはすぐ近くにルシウスがいたこともあり、無理にオルクをどうこうしようとしていなかったのもあるが、この攻防はオルクが一枚上手だった。
常に自分とルシウスの間にフィアがいるように立ち回ることで、フィアをルシウスに対する物理的壁として使った。
そうして、通常攻撃を交えたオルクの猛攻でフィアのHPも削り切られた。
残されたルシウスがフィアのHPが0になり、消えるのと同時に足払いをする。
フィアが消えるのに乗じて、攻撃されると予想して斧を体の前に構えて防御の構えを取っていたオルクは予想外の一手に体が宙に舞った。
「ルシウス、『ソードクラッシュ』『ぶん回し斬り』『クラッシュ・エッジ』」
そこをすかさず、使えるスキルを全て駆使して、オルクを攻め立てる。
それに加えて、ルナの指示が上手かった。
『ソードクラッシュ』で宙を舞っているオルクに剣を振り下ろし、地面に直撃した後、『ぶん回し斬り』で横に薙ぎ払った。
そして、オルクが起き上がる前に『クラッシュ・エッジ』ですれ違い様にオルクを斬り、HPが0になった。
◆◇◆◇
「はぅ……ボクの癒し」
シュッ!サッ!
「ブランちゃん〜!!もふもふ〜」
「……キュイ〜」
すごい戦いだった。
ルナとシエルで全然違う戦略がぶつかって、お互いの実力が拮抗して、最後どっちが勝ってもおかしくなかった。
ルナは基本的に2対1の状況を作って、シエルは1体1で戦えるように事を運んでいたように見えた。
それにオルクとルシウスがそれぞれ指示が無くても、自分で考えて行動した結果、勝敗が、戦局が変わった。
オレもクラス対抗チーム戦で、ブランがネメシスの頭を踏み台にするっていう奇行に走ったりして助けられたことあったけど、あれとは違う。
もう一度、あれやってと言われても絶対にできない。
ていうか、そんな指示出したくないし、ブランにもさせないけど。
でも、オルクとルシウスはもう一回やってと言われたら、状況次第では似たようなことができると思う。
他にもいろいろと。
オレの場合、ブランがはちゃめちゃに動く気がするからネメシスがそこまで自由に動けない。
今後、そこをどうにかしないとダブルバトルは厳しいかな。
次回、『丸くなったブラン』に続く




