第111話 双角獣ボロクス
ボス部屋の中に入ると、奥には静かにねじれた二本の角が特徴の巨大猪が待ち構えていた。
HPバーには双角獣ボロクスとあり、情報通りだった。
「ブラン、少しの間、ここで大人しくしててね」
「キュイ?」
「なでなでしてあげるよ〜」
「キュイ!」
ブランはたぶん作戦を理解していないと思うから、最初は大人しく待機しててもらう。
少しでも作戦の成功率を上げて、こっちに有利な状況で戦いを進めたい。
シュッ!サッ!
「ブランちゃんはボクが責任持って預かるね」
「キュイキュイ〜」
さてと、オレは戦いに集中するか。
「ネメシス、『飛閃』!」
「フィア、『ソニックスラッシュ』!ルシウス、『ソードクラッシュ』!」
「オルク、『スタンアックス』!ウィル、『鉄壁突進』!……ああ、ブランちゃん、可愛い〜」
ブラン以外の全員が一斉にボロクスへ攻撃する。
それを見て、自分だけ仲間外れと思ったのか、ブランはシエルの腕から抜け出し、トテトテと前線に向かって歩き出そうとした。
だが、数歩歩みを進めた所でシエルに捕まり、なでなで、もふもふされている。
最初こそ抵抗して、抜け出そうとしたブランだったけど、シエルの方が一枚上手だった。
あれやこれやと巧みにブランを手玉に取っている。
攻撃は正直、全て外れたけど、問題ない。
大事なのは、ネメシスが遠距離攻撃を行ったということだけ。
これをしっかりとボロクスに認識してもらう必要がある。
そうすれば、自然と遠距離攻撃持ちや支援型モンスターを狙う傾向にあるボロクスはネメシスを狙って、突っ込んで来る。
「グゥオォォォオオ……ッ!!」
野獣の怒声が混じったような咆哮が響くと同時にネメシスに向かって、突進する。
「ネメシス、『斬哭冥華』!」
普段なら『返刃ノ構』でカウンターを狙うとこだけど、ボロクスに☆☆☆以上のスキルを使われると失敗して、大ダメージを受けることになる。
ダンジョンボス戦で早々にそれは避けたいとこだから、ネメシス最強のスキル、『斬哭冥華』で正面から迎え撃つ。
「今よフィア!『ウインド・セヴァランス』!ルシウスは、『ソウルブレイク』!」
ネメシスに向かって一直線に突進しているボロクス。
自然と距離を詰め、高速攻撃を仕掛けていたフィアは背後に居座る形となった。
オルク、ウィル、ルシウスはガン無視される形で横を通り抜けられる。
それを利用し、背後からフィアとルシウスが遠距離攻撃を炸裂させる。
「グゥアァァァアア……ッ!!」
しかし、雄叫びを上げながら変わらずネメシスに向かって突っ込んで行く。
「オルク、『一之穿』!ウィル、『鉄穿撃』!」
だが、フィアとルシウスの攻撃で一瞬 動きが止まった。
その隙に追いついたオルクとウィルが左右から挟撃した。
そこをすかさず、間合いを詰めたネメシスが『斬哭冥華』を叩き込み、すぐに距離を取る。
「シエル、ブランを解放して」
「……ブランちゃん、出番だよ」
「……キュイ!」
なんか妙な間がシエルとブランにあった気がするけど、気のせいかな?
うん、そう思うことにしよう。
ネメシスが『斬哭冥華』でデバフと状態異常を付与したらブランも参戦する。
ここまで作戦通りに進んでいる。
ブランがトテトテと歩いていき、ネメシスと合流する。
そこでネメシスと何かしらコミュニケーションを取る。
その間、ボロクスはフィアとルシウスに狙いを定め、攻撃をしていた。
それを完全に囮としてオルクとウィルがヒットアンドアウェイで攻撃を繰り返している。
ネメシスとブランが話し終わったのを確認して指示を出す。
「ネメシス、『葬翼』!ブラン、『ジェット・ブレイクスルー』!」
ネメシスの目に見えない不可視の斬撃がボロクスを襲う。
それと同時にブランの攻撃が右脇腹を直撃し、吹き飛ばした。
ブランの存在が頭に入っていなかったのか、完全に不意を突かれていた。
そして、ボロクスが飛ばされた先には、オルクが待ち構えていた。
「オルク、『ルイン・ドライバー』!」
その場で大きくジャンプしたオルクが重力に身を任せて、斧を大きく振りかぶった後に振り下ろす。
「グゥオォォォオオ……ッ!!」
地面に叩きつけられ、地面に倒れ込む。
「今だ!ブラン、『ソニックホーンブレイカー』『ホーンラッシュバースト』!ネメシス『クロススラッシュ』『ダークスラッシュ』!」
「フィア、『ソニック・クロスブレーカー』『ソニックスラッシュ』『ソニックスラスト』!ルシウス、『クラッシュ・エッジ』『ぶん回し斬り』『骨砕き』『ハンマークラッシュ』!」
「オルク、『スマッシュブレイク』『アックスハンマー』『アックスクラッシュ』『パワーブレイク』!ウィル、『クロー・ブリッツ』『大地叩き』『牙穿』『裂爪乱舞』!」
このチャンスを逃さず、一気に攻め込む。
離れた場所にいたブランとネメシスは攻撃参加が遅れる。
だけど、至近距離にいたオルクやすぐ側にいたウィルがその場から逃さないよう連続で攻撃を叩き込む。
少しして、そこにフィアとルシウス、ブラン、ネメシスも合流する。
——ドグァアアアンッ!!
轟音と共にボロクスの体が大きく跳ね、地面に崩れ落ち、ボロクスのHPバーが0になった。
それを確認することなく、一目散にこっちに走って向かって来る子が。
「キュイキュイー!!」
今回は、オレじゃなくシエルに向かって飛び込んだ。
よっぽどシエルの元から抜けるのが名残惜しかったんだろうな。
「……今回は宝箱無しか」
「そんな高頻度で出現するものじゃないから。出たら運が良かったって思うとこね」
「そうだよね」
前回、『紅鬼の岩屋』を攻略した際に出てきたから、今回もってどこかで思ってたけど、さすがにそんな都合よくいかないか。
転移魔法陣でダンジョンの外に出て、手に入れたクリスタルを換金してからルナと分かれた。
シエルはブランを抱っこしたまま、寮のオレの部屋に来て、ブランお泊まりセットを持って、女子寮の自分の部屋に帰った。
ちゃっかり、ブラン専用のミニ布団も持って行った辺り、なんかシエルだな〜ってなった。
翌朝、起きると横でブランが寝ていない。
最近、お泊まりに行く頻度が減っていたのもあって、なんか久しぶりというか新鮮。
いつもなら、こっから朝食を食べに行くのに布団から出たがらないブランとの戦いが勃発するとこだけど、今日は平和だ。
それに一人で食堂に行くのもなんか懐かしい感じがするな。
ブランにご飯を食べさせるとかもなく、一人で静かにご飯。
半年以上ずっとまず最初にブランに「キュイキュイ」とご飯を強請られて、食べさせて、モグモグしてる間に自分の分を食べるを繰り返してたからな。
……なんかブランがいないだけで、かなり早くご飯を食べ終わったな。
まあ、どうせ教室に行けば会えるわけだし。
部屋に戻って、行く準備を整えるか。
その後、準備を整えて、教室へ向かった。
いつもより、早い時間帯に登校したけど、既に何人か教室に来ていた。
その中にシエルもいて、自分の席でブランをもふもふして、堪能していた。
オレが教室に入るとすぐにルナがやって来た。
「おはよう、オルフェウス」
「おはよう、ルナ」
いつもはもう少し遅い時間帯に登校するのに、今日は10分以上早い。
珍しいこともあるんだな。
いや、シエルがブランを連れて、早い時間帯に登校してるからかな?
いつもルナってシエルが何かとんでもないことやらかしてないか、心配そうに見守ってるし。
最近、これを見ないと一日が始まらない気がしていた。
次回、『クラス内チーム戦に向けて』に続く




