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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編
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第11話 VSリヴィングゾンビ

 退路が断たれ、先に進むしか道が無いオレたちの前に巨大な扉が立ちはだかっていた。

 如何にもこの扉の先にボスモンスターがいるという雰囲気を醸し出している。

 つい先程まで泣きじゃくっていたブランも気づいたら臨戦態勢に入ってキュイィと扉を威嚇している。

 何か怨念めいたものを感じるけど、これはオレの気のせいだと思う。

 だっていつもみたいによしよしって撫でるとキュイ〜って幸せそうな顔に一転するし。


「『亡者の墓場』に隠しエリアが存在することはたぶん誰も知らなかったと思う。当然だけど、この先に待ち受けているボスモンスターが何かもわからない。みんな覚悟はいい?」


「ゴブ!」


「うん、オレは大丈夫」


「キュイ!」


「私も大丈夫よ」


 コクと首を縦に振り、言葉を発することなく自身の意志を伝えるフィア。


 その後、意を決してルナとフィアが先陣を切る形で扉を開け、中に入る。

 オレたちはその後に続く。

 そこにはかなり開けた円形の空間があり、壁際に等間隔で設置された青い炎の松明が部屋全体を明るく照らしている。

 その中央には二本の剣を持ち、佇む人の姿が。

 名前はリヴィングゾンビ。

 うーん、どういう意味だろう……


「キュイキュイー!」


 シュッ!!


 ぴょんとオレの腕の中から元気に飛び出すブランだが、ジャンプによる滞空時間が長く、格好の的となった。

 リヴィングゾンビが放った斬撃が着地と同時にブランに炸裂する。


「キュイ……」


 と思ったけど、ブランの様子からギリギリ間合いの外だったみたい。

 尻もちをついて目を何回もぱちぱちしてほおけている。

 まるでびっくりした……と言わんばかりに。

 そんなブランなどお構いなしにフィアとオルクはリヴィングゾンビに攻撃を仕掛ける。


「フィア、『ソニックスラッシュ』!」


「オルク、『アックスハンマー』!」


 それぞれ対極の攻撃。

 フィアは素早さに長けた『ソニックスラッシュ』、オルクは一撃の攻撃力に長けた『アックスハンマー』。

 一見するとバラバラの攻撃だけど、『ソニックスラッシュ』による素早さのブーストが上手い具合に攻撃のタイミングを合わせている。

 それにより、完璧と思えるタイミングでリヴィングゾンビを左右から挟撃することに成功した。

 オルクの攻撃の方が先に来ると判断し、そちらに意識がいっているリヴィングゾンビではフィアの攻撃を防ぐのは不可能。

 オレは少なくてもそう思った。


 まさか右と左にそれぞれ一振りずつ逆手で持っている剣でフィアとオルクの攻撃を同時に受け流すとは予想だにしなかった。

 普通、あの一瞬で両方の動きを見切って受け流すとは思わないでしょ……


 確実に攻撃が決まると思っていたフィアはこれにより、体勢が前のめりになり、オルクもまた体勢を崩す。

 そして剣を逆手から持ち替え、スキルを発動したことで刀身が黒く染まった剣をフィアに向けて振り下ろす。


「キュイ!!」


 ドカッ!!


 ギリギリのタイミングでブランが『ジェットアタック』で攻撃することでリヴィングゾンビの攻撃の軌道はフィアから逸れる。

 オレの指示が無いにも関わらず、あの状況で即座に攻撃に転じるとは……

 さっきのはホントにびっくりしただけだったのかな。


「ちょっと硬すぎない?」


「うわぁ、長期戦になりそう……」


 そう、ブランの『ジェットアタック』が直撃したにも関わらず、HPは1割程度しか減っていない。


「リヴィングゾンビの攻撃は基本的に回避の方向で。攻撃は確実に決める。無理はしない。これを徹底する。二人ともいい?」


「「うん」」


 ルナの言う通り、無理はダメ。

 あれだけ防御力が高いモンスターだ。きっと攻撃力も高いに違いない。

 でも、どんなに強力な攻撃も当たらなければ意味は無いというしね。

 たぶん、大丈夫。

 問題はこちらの攻撃を二つ同時に受け流すあの技術というか防御だけど、ブランのおかげで活路は見えた。


 オレはルナとシエルに作戦を共有し、了承を得た事で実行に移す。


「ブラン、リヴィングゾンビを撹乱して!」


「キュイ!」


 斬撃を飛ばせるから遠距離攻撃への警戒も必要だけど、あれはスキルによる攻撃の筈。

 つまり、クールタイムが明けるまで使えない。

 他にも遠距離攻撃を可能とするスキルを持っている可能性もあるから警戒は怠らない。

 その上でリヴィングゾンビの周りで動き続けることで自然と視線をブランへ誘導する。


 ブランから一撃もらっているからか警戒心が強く見える。

 逆にフィアとオルクへの警戒が薄い。

 これなら作戦関係無しに攻撃を決めれるかも。

 ルナとシエルはアイコンタクトだけでオレの考えを理解してくれた。


「フィア、『チャージスラッシュ』!」


 先ずはフィアが仕掛ける。

 最初みたいに2体同時に仕掛けたりはしない。

 リヴィングゾンビにブランだけでなく、オルクからの攻撃もあると突きつけ、情報量を増やす。

 決められた行動パターンで動くモンスターには意味無いが、独自の思考回路を持ち、考えて行動するモンスターにはこれが極めて有効。


 フィアの攻撃を再び受け流そうと試みているのか、左手の剣を逆手に持ち替える。


「今だブラン!右斜め後ろに回り込んで『ジェットペック』!」


 フィアの攻撃を左手の剣で受け流そうとすればブランの攻撃は防げない。


 リヴィングゾンビは右足を軸にして体の向きを変え、フィアを右斜め前、ブランを左斜め後ろに捉える。

 それと同時に右手の剣を逆手に持ち替え、フィアの攻撃を受け流される。

 そしてブランの攻撃は何かしらのスキルを発動し、逆手で剣を持ったまま振り上げて相殺された。


 これでもまだオレの認識は甘かった。

 そう思わされた。

 だけど、この状況はオレがルナとシエルに共有した作戦の理想に近い。

 リヴィングゾンビが二本の剣を使って攻撃を防いだ直後に意識の外からの攻撃すれば、さっきのブランみたいに攻撃が決まる。


 リヴィングゾンビはフィアとブランの攻撃を防ぐ為に体の向きを変えたことで背をオルクへ見せる形になっていた。


「オルク、『スタンアックス』『スラッシュ』!」


 背後からオルクの攻撃が直撃したことでリヴィングゾンビは前のめりに倒れる。

 追撃のチャンス!


「ブラン、『体当たり』『つつく』!」


「フィア、『スラッシュ』!」


 よし!予想以上に上手くいった。


 立ち上がると直ぐにオルクへ斬撃を飛ばすが、これは常に警戒しているので、余裕を持って回避できた。

 でも、まだリヴィングゾンビのHPはまだ半分も削れていない。

 あと最低でも七、八回は今みたいな攻撃をしないとHPを削り切れない。

 そう考えると全然余裕は無い。


〖ブランが『ダブルアタック』を取得しました〗


「「「あ!」」」


 ブランが新しいスキルを取得したと急に天の声が聞こえてきたから驚いてつい声が出ちゃった。

 ただ、それはオレだけじゃなくてルナとシエルもだった。

 オレはブランが新たに取得したスキルがどんな感じか名前からどういうスキルかはなんとなく想像できたので、隙があれば試すことに。


 戦局は先ほどまでとは一転して防戦一方になっていた。

 フィアが3体の中では一番防御力とHPが高いので、タンクとしてリヴィングゾンビの攻撃を捌いているが、ヒーラーがいないので、ジリ貧。

 しかし、防戦一方ということはリヴィングゾンビの意識が防御より攻撃に向いているので、カウンターさえ決められたらこの状況は一気に覆る可能性が高い。


「……こうなったら一か八かね。フィア、『ソニックスラスト』!」


 高速移動から斬撃の『ソニックスラッシュ』とは違い、勢いそのままに繰り出された高速の突き技。

 これにより、僅かな時間ではあるが、リヴィングゾンビの防御がガラ空きとなる。

 そこを虎視眈々と隙を窺っていたオルクが仕掛ける。


「オルク、『スマッシュブレイク』!」


 体勢を立て直す間も無く、オルクによる追撃を受けたリヴィングゾンビはその場で膝を突き、身体が硬直しているかのように動きを止める。

 オレとブランはこれを見逃さなかった。


「ブラン、『ダブルアタック』!」


「キュイ、キュイ!」


 ジャンプしながら空中で左回転しつつ前肢と後ろ肢で器用に一回ずつ蹴り飛ばす。

 思いのほか威力が高く、今の攻撃でリヴィングゾンビのHPを削り切る。

 あれだけ苦戦したのが嘘みたい。でも、それだけブランたちが成長したってことか。

次回、『2体目のモンスター』に続く

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