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《モンブリ》~進化のたびに広がる、オレとモンスターの世界~  作者: 夕幕
第1章 アルカディア王立学園 1年生編

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第107話 アルカディア王国史

 学園祭が終わると1学期同様に授業が始まった。

 それに気温が下がってきた。

 夏はミニ布団を邪魔と言わんばかりにどこかへ追いやっていたブランも、今では「キュイキュイ」と自分でしっかりと掛けている。

 まあ、寝相が悪いのは変わらないから、夜中にミニ布団をどこかにやっちゃってオレの布団に紛れ込んで来ることは多々あるけど。

 朝なんて、今までは朝食に早く行こって急かされてたけど、今は真逆で布団から出てこない。

 今も朝食に行くって言ってるけど、布団に齧り付いている。


「キュイーー!」


「ブラン、いい加減行くよ!」


「キュイキュイ!」


 こうなったブランはテコでも動かない。

 だから、毎回布団にくるめて、わしゃわしゃする。

 これをすると毛並みが乱れるのを嫌って、すぐに出てきてくれる。


「はいはーい。朝食を食べに行くよ」


「キュイ……」


「ブラッシングは後でシエルにお願いしたら?快くやってくれるよ」


「キュイ」


 いつも通り、ブラシの入った"ブランちゃんの!"と書かれた箱を押して、こっちに持ってくる。

 だから、オレもいつもと同じでブラシは預かるけど、ブラッシングはシエルにお願いする。

 毎朝の恒例行事が終わって、大人しくなったブランを連れて、食堂に向かった。

 そこで、いつも通りシエルと会い、挨拶を交わす前にブランをブラシが手元から消えていた。


「おはよう、ブランちゃん、オルフェウス」


「キュイ!」


「おはよう、シエル」


 鼻歌混じりにブラッシングをして、朝食を食べ終えたシエルはそのままブランを連れて部屋へ戻って行った。

 いつものことだから、オレも今となっては何も気にしないことにした。

 どうせ、教室に行けばいるってわかってるし。


 オレも朝食を食べ終えた後、部屋に戻った。

 そこで、行く準備を整え、教室へ向かう。


「キュイキュイ〜」


「もふもふ〜」


 教室に入ると案の定、シエルがブランをもふもふしていた。

 最近では、積極的にブランにもふられに言ってるブラン。

 理由はもちろん、寒さを紛らわす為だとか。


 そうこうしていると、フォルリオ先生が教室に入って来て、授業が始まる。

 そして、ブランがオレの手元に戻ってきた。


「それでは、アルカディア王国史の授業を始めます。今日は、歴史の中でもモンスターを悪用した事件についてお話しします」


 アルカディア王国史。

 この国の歴史について学ぶ授業だけど、今まで界渡りの英雄、"エニグマ"といった言葉は出ていない。

 英雄の話は王族、貴族にしか伝わってないって話だったから授業で話があがらないのも納得がいく。

 だけど、"エニグマ"だけはわからない。

 もしかして、今日の授業で何かわかるかもしれない。


「今から150年ほど前に起きた事件です。当時、王都近郊の研究施設が襲撃され、多くの研究員が命を落としました」


 襲撃……

 それって意図して研究施設を攻撃したってことだよね。

 モンスターの攻撃が当たっても人間は傷一つ負わないけど、建物とかは倒壊する。

 それに巻き込まれたら当たり前だけど、死ぬ。

 だから、モンスターに建物とかを攻撃させるのは絶対にやってはいけない御法度。


「この事件は『黒翼災厄こくよくさいやく』と呼ばれています。王国史において、最も多くの命が失われた事件です」


 教室の空気がいつになく重い。

 いつも膝か机の上で寝ているブランだけど、今は珍しく起きている。

 さすがのブランもこの重い空気が漂っている中では、寝ずに静かにしている。


「犯人とされているのは、かつて王立学園を首席で卒業した天才研究者でした。名はクロウ・ヴァルディア。モンスターと人との融合、いわゆる『進化融合理論』を提唱し、その研究を禁じられていたにもかかわらず、密かに続けていたとされています」


 クロウ・ヴァルディア……

 ヴァルディアって後ろに名前があるってことは、貴族もしくは王族ってこと?

 こういう事件って実績はあるけど、認めてもらえなかった平民が起こすってイメージがあった。

 なんか意外かも。


「事件当日、彼が操った融合体モンスターによって、施設は壊滅。生存者はわずかに三名。逃げ延びた研究員の一人が、最後に残された記録をこう証言しています」


 フォルリオ先生は、一枚の資料を配布する。

 それには、こう書かれていた。



 黒い翼を持つモンスターが現れた。

 絶望をばらまく化け物。

 ……それはもはや、モンスターではなかった。

 彼自身だった——クロウ・ヴァルディアが、自らの身体を捧げた結果だった。



「この事件以降、『進化融合理論』は王国法により永久禁忌とされました。記録も多くが破棄され、真相は闇に包まれたままです」


 モンスターと融合する……?

 そんなことが本当にできるの?

 いや、それ以前に何でそんなことをしようと思ったのかな?


「この事件には、もう一つの異常な点があります。クロウ・ヴァルディアの遺体が見つかっていないということです。融合体モンスターもどこへ姿を消したのか不明です」


 それって、もしかしてまだ生きてる可能性も……

 いや、流石に150年も経ってるならそれは無いか。


 この事件って"エニグマ"は関係してたのかな?

 わからないことが多いから何とも言えないな。


「今日のアルカディア王国史はここまでとします」


 授業が終わっても、教室の空気はどこか冷たく張り詰めたままだった。


 「……まさか、融合体モンスターなんて存在したなんて」


 後ろの席でルナがぽつりと呟く。

 ブランはいつの間にか膝の上で丸くなっていたけど、耳だけはぴくぴくと動いている。

 話は気になるけど、お眠なのかな。


 「それだけ危険ってことだよね。法律で禁じられるくらいだし。……あ、そういえば、ヴァルディア家ってその後どうなったのかな?」


「一家取り潰しになったって聞いたことあるわ」


「……そうなんだ」


 身内が起こした事件で巻き添えをくらうなんて。

 全く無関係の人もいただろうに。

次回、『騒樹の密林』に続く

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