第104話 集結
1年生は後方部隊だけど、その中でも前衛部隊と後衛部隊に分かれることになった。
今までなかったことだけど、この編成ではチームの垣根を越える。
だから、同じチームのメンバーでも、前衛部隊と後衛部隊に分かれることがある。
オレたちは、近接戦を主体としているモンスターが多いのもあって、三人揃って前衛部隊入りとなった。
それから数が多いと連携がより取りづらくなるから、召喚できるモンスターは一度に1体までと決められた。
オレの場合、ブランがルームに入らないから自然とネメシスを召喚するという選択肢は消えた。
ただ、召喚しなかったモンスターに出番が無いわけじゃない。
先に召喚して戦っていたモンスターが倒れたら、クリスタルを回収し、即座に別のモンスターを召喚する。
今さっき初めて知ったけど、ルームの機能を使えば、遠く離れた場所にクリスタルがあっても自分のモンスターなら回収できるみたい。
だから、間違えて他の人のモンスターのクリスタルを回収するってことは起こらない。
緊張が張り詰めたまま、ついにその瞬間が訪れた。
重々しい音を立てて、巨大な扉が開かれ、前衛部隊から順にボス部屋の中へ入っていく。
オレたちが入る頃には、既に戦闘が始まっていた。
黒紫の大樹のような獣、イグゼリオは背中から枝状の触手が複数伸ばし、空中にいるモンスターを次々に叩き落としていく。
一部のモンスターはそれを悉く回避して、空中から一方的に攻撃を叩き込んでいる。
地上の様子は人集りで見えないけど、決して優勢に事を進められているって感じはしなかった。
イグゼリオの攻略推奨累計Lv50だよね?
ブリーダーなら、それを優に越えてるんじゃ……
全然HPが減ってない。
防御力が異常に高いとかかな?
「序盤は順当に様子見だね」
「あ、そうなん、だ……ん?え、何でカナリア先輩がここにいるんですか!?」
「最初はやることないからね。それに今回フィロネアはサポートに専念するから前にいてもやれることないし。立ち位置としては、全体を見渡せるからここがベスト」
そうなんだ……
まあ、アルカナさんも最初にそこら辺は寛容で、動いていいって言ってたしな。
……?っていうか、今のこれが様子見?
「カナリア先輩、様子見ってどういうことですか?」
「主力はまだ戦ってないからね。今は経験を積ませる目的で2、3年生がメインで戦ってるの。あと、イグゼリオが幻影を出すのを待ってるの」
「幻影?」
「そう。あ、出るよ」
カナリア先輩の声と同時に、イグゼリオの影がぐにゃりと上へ伸び広が上がった。
そして、影からもう1体のイグゼリオが姿を現す。
この瞬間、空中組は地上にいる本体と思われるイグゼリオではなく、空中にいる分身体に攻撃を集中させる。
「待って!そっちじゃない!」
前列の誰かが叫んだ。
幻影はダメージを受けることなく、攻撃が全てすり抜けていく。
それが幻影を挟み、反対側にいたモンスターに直撃する。
それなのに、幻影へ攻撃の手を緩めない。
「フィロネア、出番だよ。『エモーションブリンク』『フェリス・シャイン』」
もふもふコンテストの時みたいにフィロネアが徐々にその数を増やしていき、次々に光り輝いていく。
すると、今まで幻影を攻撃していた空中組の攻撃が地上へ再び飛んでいく。
そして、オレたちのがスーと開き、イグゼリオ本体が初めて視界に入った。
え、これどういう状況?
「1年生!道は作った。向上心のある者は果敢に前へ!」
「キュイキュイー!!」
直後、アルカナさんの声がボス部屋全体に響き渡り、ブランが先陣を切って、イグゼリオ本体に向かって突き進む。
それを見て、後を追うように続々とモンスターが雪崩こむ。
「フィロネアのスキルだと地上組の幻惑までは解除できない。でも、時間経過で解除できる。それまで空中からの援護ありの状態で1年生が経験を積む場として毎年設けてるの」
「え、いや、でも、これだけ距離が離れると指示が通らないんじゃ」
「あ、それは大丈夫。どれだけ声が小さくても、モンスターには伝わるから」
あ、そっか。
言われてみると、確かにって思える。
モンスターへの指示が大きい人、小さい人といるけど、普通に伝わってたからな。
「よし、ブラン、『ジェット・ブレイクスルー』!」
元々、素早さのステータスが高いブランが、スキルを使って更にブーストさせる。
今までの相手はこれに対応できなかったけど、イグゼリオ本体は違った。
空中からの攻撃に晒されながら、容易くブランの突進を回避する。
そして、背中の触手の内一本がブランへ襲いかかる。
「フィア、『ソニック・クロスブレーカー』『ウインド・セヴァランス』!」
「オルク、ブランちゃんを回収して!」
だが、フィアがタイミングをずらした高速突きとゼロ距離魔法による二重攻撃で、触手をブランから逸らす。
しかし、他の触手がブランとフィアを襲う。
「ニュー、真上から『熾烈気拳』『紅蓮脚撃』」
「ミューラさん!?」
上空から背中に勢いよく、ニューが落ちてきて、背中から伸びている触手が全て燃え上がる。
「シンファング、『幻影喰刃』」
二足歩行で黒い鱗を持つ小型の竜が複数に分かれ、幻影が交差してイグゼリオ本体を切り裂く。
「え、ツバキさん!?」
「ヴァルザ、『ヘルブランド』『カース・ブロウ』」
赤黒い鎧をまとって、背に破れたような黒翼を持っている騎士が漆黒の炎を纏った剣を振り下ろす。
直後、剣が黒く脈打ち始め、まるで生き物ようにうねり、衝撃波でイグゼリオ本体を弾き飛ばす。
「ザイルくん!?」
さすがに偶然じゃないよね?
今、どう考えてもブランを助けてくれた。
「オルフェウス、無闇矢鱈と突っ込まないで!」
「ブランちゃん、大丈夫!?」
「今のは、ミューラたちがフォローしなきゃ危なかった」
「結果良ければ、全て良しじゃない?」
「オルフェウス、今度は敵じゃなくて味方だな」
ルナ、シエル、ミューラさん、ツバキさん、ザイルくん。
同じチームのメンバー、クラス内トーナメントやクラス対抗チーム戦で戦った相手。
敵として戦った時は手強かったツバキさんやザイルくんが今は味方にいる。
それにカナリア先輩も。
ヤバい。すごすぎる。
次回、『住んでる世界が違う』に続く




