第100話 紅炎鬼帝グラドザル
あれから何度もツインレッドオーガと戦った。
最初みたいに狭い場所での戦闘じゃなく、開けた場所だったので、容易に背後を取ることができた。
それに、そこからの組み立て方にも幅を持たせることができた。
今はスキルのクールタイムが開けるのを待つ小休憩中。
ここでは、いつもの光景が繰り広げられていた。
「ブランちゃん、いい子はそっちに行ったらダメだよ」
「キュイ……」
トテトテと歩いて溶岩の川に近づこうとする子がいる。
甘いものを食べさせないという言葉に最初こそ屈したが、今ではそんなの忘れたと言いたげな顔で好奇心に身を任せていた。
だけど、シエルに毎回連れ戻されている。
その度に不満気に頬を「キュイ〜」と膨らませているけど、シエルによって見事に可愛がられている。
それを放置してオレとルナはこの後の事を話し合う。
「オルフェウス、この先にこのまま進む感じでいいよね?」
「うん、オレはそれでいいと思う」
今、オレたちはボス部屋の前にいる。
このまま先に進むと第二層のエリアボスじゃなくて、このダンジョンのボスに挑戦することになる。
『紅鬼の岩屋』は第二層しかないダンジョン。
だから、第二層の奥にはエリアボスがおらず、ダンジョンボスがいるだけ。
ここのダンジョンボスは、紅炎鬼帝グラドザル。
二本の巨大な斧を背負っていて、HPが半分を切ると斧が両手剣に変化するらしい。
だけど、どう変化するのかはわからない。
何かしらのスキルで斧が合体して両手剣になると個人的には予想してる。
「ブラン、我慢できる子には後でご褒美あげるよ」
「キュイ!?キュイキュイ!」
耳をふにゃっとさせ、しょんぼりしながらシエルにもふられていたブランだったけど、オレの一言に元気を取り戻す。
今では、耳がピン!と真っ直ぐ伸びていて、目線もボス部屋の方に向いている。
ブランがやる気を出したことで、ネメシスとウィルを先頭にボス部屋の中に入る。
ここの事前情報には無かったけど、ダンジョンボスによっては入ると同時に奇襲されることもあるし、念には念をで。
ボス部屋の中は、広大な円形闘技場のようで中央に巨大な溶岩の泉がある。
その奥には、全身が黒鉄のような皮膚に覆われ、肩や腕に赤熱した溶岩のようなヒビ割れが走っているオーガが待ち受けていた。
オレたちが入ると背中から二本の斧を抜き、構える。
ズドーン!!バシャーン!!
その場で前方に大きくジャンプして、中央にある溶岩の泉の中へ着地する。
その衝撃で、溶岩の雨がボス部屋全体に降り注ぐ。
「みんな躱して!」
「キュイ〜!」
いち早くルナが指示を出したことで、ブラン以外は上を見ながら余裕を持って回避行動を取る。
しかし、ブランだけは目を輝かせて、その場で溶岩の雨が来るのを待っていた。
「ちょっ、ブラン!」
「……キュ、キュイ!?」
耳をペタッと折って、何も聞こえないアピールをしていたブランだけど、寸前の所でネメシスに回収された。
今、ネメシスの手の中で盛大に暴れてるけど、直ぐに大人しくなった。
きっと、ネメシスが何か上手いこと言い聞かせたんだろ。
「フィア、『ウインドカッター』『ウインドボール』!」
「ネメシス、ブランを放して『飛閃』!」
グラドザルは溶岩の泉の中にいる。
接近しての物理攻撃を試みようとすると、その中に入らないといけない。
ただでさえ、ヒーラーがいなくて回復ができないのに、こっちからダメージを負いに行くわけにはいかない。
だから、今はフィアとネメシスに遠距離から攻撃するしかできない。
それで、ヘイトを買ってこっちに来てくれると助かる。
フィアとネメシスの攻撃がグラドザルの顔に直撃した。
直後、グラドザルの視線がこっちを向く。
ドロォォ……ッ!!バッシャアアアン!!
一歩、足を外に出すと、溶岩が纏わりつき、溶岩を豪快に弾き飛ばす。
「今だよ、オルク、『ルイン・ドライバー』!ウィル、『クロー・ブリッツ』!」
「ブラン、『ジェットブレイクスルー』!」
「フィア、『ウインド・セヴァランス』!」
左右に分かれて、オルクとウィルがグラドザルを挟撃する。
それに気を取られた瞬間、ブランが正面から超高速の一撃を決める。
体勢が後方にやや傾いたところにフィアの攻撃が正面から再び決まり、背中から溶岩の泉に倒れ込む。
それを確認したオルクとウィルは、溶岩に触れないよう接近し、直前でジャンプし、グラドザルのお腹の上に乗り、それぞれの攻撃が炸裂した。
その後、直ぐに退き、距離を取った。
「グラアァアオォオオオーーーッ!!!」
それを怒り狂ったグラドザルが一直線に駆け抜けて来る。
「ネメシス、『返刃ノ構え』!」
オルクやウィルと入れ替わるようにグラドザルの前にネメシスが立つ。
二本の斧がネメシス目掛けて振り下ろされるが、寸前の所で姿が消え、グラドザルの背を斬り裂く。
「『斬哭冥華』『葬翼』!」
流れるようにネメシスの連続攻撃が決まり、グラドザルのHPが半分を下回る。
ここで情報通りなら、二本の斧が両手剣になる。
グラドザルは斧を両腕で振り上げ、そのまま地面に叩きつける。
ゴガァァアアンッ!!
爆音と共に斧の刃が砕け、柄がへし折れた。
「え、砕いた……!?」
この行動の意味がオレには理解できなかった。
それは、ルナとシエルも同じだったと思う。
何かしらのスキルを使って、二本の斧を両手剣にするとばかり思っていた。
だけど、それは破壊ではなかった。
砕けた刃と柄の破片が宙に浮かび、赤黒い光の糸に導かれるように回転しながら組み上がっていく。
キィィイン……キィィィィ……ガチン!!
二本分の刃と柄が合わさり、一振りの巨大な両手剣が出現した。
「うっそ……」
そんなことある?
普通、自分の武器を砕くなんてしないでしょ。
両手で剣を振り上げると、先ほどまでとは比べものにならない速さでネメシスへと振り下ろす。
「ネメシス、『二刀・受け流し』!」
グラドザルのスキルを使っていないと思われる一撃。
ネメシスなら、今まで通り受け流してくれると思ったけど、そう上手くいかなかった。
受け流すことができず、そのまま力で押し込められつつある。
「ブラン、『ソニックホーンブレイカー』!」
「キュイ!」
「フィア、『ソニック・クロスブレーカー』!」
そこをブランをフィアが脇腹をつく形でグラドザルの体勢を崩すことで、僅かな隙間が生まれ、そこからネメシスが抜け出す。
「ブラン、『ホーンラッシュバースト』!ネメシス、『クロススラッシュ』!」
「フィア、『チャージスラッシュ』!ルシウス、」
「オルク、『一之穿』!ウィル、『鉄穿撃』!」
ネメシスと入れ替わる形で後退していたオルクとウィルも前衛に合流して、一斉攻撃を仕掛ける。
その後、立て直したグラドザルから反撃をくらうが、『鋼毛の守勢』を使ったウィルが盾となり、攻撃を受け止めた。
そこを形を潜めていたルシウスが『ソウルブレイク』でグラドザルの視界の外から斬撃を飛ばし、HPを削り切った。
次回、『お化け屋敷』に続く




